さやえんどう収穫量の推移と県別動向、課題と今後の展望

果菜類



日本のさやえんどう収穫量は減少傾向にあり、2023年は前年比-13.47%の16.7kt。主産地の鹿児島が35%以上の減少で全体を大きく下押し。一方、愛知や熊本は微増を維持。労働力不足や輸入品との競合が課題。今後は施設栽培やブランド化による対策が重要となる。

野菜収穫量のデータとグラフ

さやえんどう収穫量の最大と最新

全国 鹿児島 愛知 熊本 福島 広島 和歌山 静岡
最新 2023年 2023年 2023年 2023年 2023年 2023年 2023年 2023年
最大期 1979年 1979年 1979年 1973年 1979年 1979年 1988年 1979年
最新値[kt] 16.7 3.2 1.54 1.04 0.965 0.63 0.598 0.541
最大値[kt] 73.6 17.4 5.67 1.65 5.44 2.4 10.4 1.87
前年比[%] -13.47 -35.74 3.356 0.9709 -8.962 -0.7874 -15.06 -3.393
全体比[%] 100 19.16 9.222 6.228 5.778 3.772 3.581 3.24

 

これまでの推移

さやえんどうの収穫量
最新の割合

 

詳細なデータとグラフ

 

さやえんどうについての推移と展望

さやえんどう(絹さや)は、日本で古くから親しまれてきた春の代表的な野菜であり、料理の彩りとしても重宝される食材です。しかしながら、近年の農業を取り巻く環境の変化により、その生産量は年々減少傾向にあります。本稿では1973年から2023年までの動向をもとに、現在の課題と今後の見通しを解説します。


全国的な生産量の推移と現況

2023年のさやえんどうの全国収穫量は16.7ktで、前年比-13.47%と大幅な減少を記録しました。この落ち込みは、天候不順や高温・多雨などの気象要因に加え、収益性の低下や労働力不足による作付け縮小など、複数の要因が重なった結果と考えられます。1970年代にはより広く栽培されていたものの、年々輸入品や他作物との競合により減退しています。


主要生産県の現状と特徴

  • 鹿児島県(3.2kt、全国比19.16%) 日本最大のさやえんどう産地。冬季でも温暖な気候を活かし、早出し出荷で市場をリードしてきました。しかし2023年は前年比-35.74%と極めて大きな減少が見られ、天候や人手不足の影響が顕著です。

  • 愛知県(1.54kt、9.222%) 温暖な気候と園芸技術の高さで安定した供給体制を維持しており、前年比+3.356%と全国的な減少傾向の中で健闘。施設栽培の活用が奏功しています。

  • 熊本県(1.04kt、6.228%) 前年比+0.9709%とほぼ横ばいで推移。九州地域として気候に恵まれ、比較的安定した生産が行われています。

  • 福島県(0.965kt、5.778%) 冷涼な気候を活かした栽培が行われているが、前年比-8.962%と減少傾向にあり、天候要因の影響を強く受けた可能性があります。

  • 広島県(0.63kt、3.772%)和歌山県(0.598kt、3.581%)静岡県(0.541kt、3.24%) これらの県はそれぞれ中小規模でありながらも、地域ごとの需要に応える形で特色ある栽培が行われています。広島は微減、和歌山は-15.06%と大きな落ち込み、静岡も-3.393%と減少が続いています。


さやえんどう生産の課題

  • 労働集約性と高齢化 収穫は手作業で行われ、非常に手間がかかるため、高齢化の進む農業現場では作付け放棄の一因となっています。

  • 収益性の低さ 単価が高くないことに加え、天候リスクが大きく、市場価格の変動にも左右されやすいため、経営的に安定しにくい作物です。

  • 輸入品との競合 さやえんどうは中国などからの輸入も多く、特に加工・業務用市場では国産品のシェアが縮小しています。


今後の展望と対応策

  • 鹿児島・愛知の再建支援 トップ産地の鹿児島での大幅な減少は全国供給に影響を与えるため、天候リスクに対応したハウス化や品種改良が求められます。愛知のような安定生産モデルを他県へ展開することも期待されます。

  • 施設栽培・スマート農業 ICTや温室環境制御の導入により、労働負荷を軽減しつつ収穫量を安定化する取り組みが進められるべきです。

  • ブランド化・直販強化 地域独自のブランド戦略や、農協や個人による直販強化を通じて収益性向上を図ることが可能です。


まとめ

日本のさやえんどう生産は近年厳しい状況が続いており、2023年の全国収穫量は16.7ktで前年比13%以上の減少となりました。鹿児島の大幅な落ち込みが特に大きく、全体傾向を左右しています。一方で愛知や熊本では生産維持が図られており、今後は省力化・技術化と地域特性を活かした高付加価値化によって、持続可能な生産体制の確立が求められます。

 

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