中国・四国地方のJR以外普通運賃は平均428.1円と全国平均を大きく上回り、高知では500円、広島では335円と都市間格差が大きい。広島では前年同期比52.27%の急騰があり、制度改定が背景にあるとみられる。人口減や投資負担が価格上昇の主因であり、持続可能な公共交通の再設計が求められている。
自動車・交通の都市別小売価格
中国・四国価格の高い都市
2025年3月 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | |
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名称 | 平均 | 高知 | 松山 | 松江 | 鳥取 | 高松 | 岡山 | 山口 | 広島 |
最新値[円] | 428.1 | 500 | 470 | 460 | 430 | 430 | 430 | 370 | 335 |
平均比[%] | 100 | 116.8 | 109.8 | 107.4 | 100.4 | 100.4 | 100.4 | 86.42 | 78.25 |
前年月同比[%] | 5.71 | 4.167 | 2.174 | 9.524 | 0 | 0 | 0 | 0 | 52.27 |
中国・四国価格の低い都市
2025年3月 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | |
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名称 | 平均 | 広島 | 山口 | 岡山 | 高松 | 鳥取 | 松江 | 松山 | 高知 |
最新値[円] | 428.1 | 335 | 370 | 430 | 430 | 430 | 460 | 470 | 500 |
平均比[%] | 100 | 78.25 | 86.42 | 100.4 | 100.4 | 100.4 | 107.4 | 109.8 | 116.8 |
前年月同比[%] | 5.71 | 52.27 | 0 | 0 | 0 | 0 | 9.524 | 2.174 | 4.167 |
これまでの鉄道運賃の推移


詳細なデータとグラフ
中国・四国の現状と今後
中国・四国地方は、都市間距離が長く、山間部や離島を抱える広域エリアです。そのため、JR以外の私鉄・第三セクターの役割が地域交通維持において重要です。しかし、人口減少や高齢化が進行する中で、交通インフラの維持が困難化しつつあります。とくに普通運賃の水準は生活コストに直結するため、価格変動の影響は大きく、地域住民の負担感も増しています。
最新データと地域別価格水準
2025年3月時点の中国・四国地方におけるJR以外普通運賃の平均は428.1円で、全国平均(352.6円)より約21%高い水準です。これは、人口密度の低さや路線の維持コストの高さが背景にあります。
運賃の高い順:
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高知:500円(+4.167%)
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松山:470円(+2.174%)
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松江:460円(+9.524%)
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鳥取:430円(増加率記載なし)
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高松:430円(同上)
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岡山:430円(同上)
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山口:370円(増加率未記載)
-
広島:335円(+52.27%)
運賃の低い順:
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広島:335円
-
山口:370円
-
岡山・高松・鳥取:430円
-
松江:460円
-
松山:470円
-
高知:500円
都市間で165円の差があり、これは移動1回あたりで見れば大きな開きです。
都市別の特徴と運賃水準の背景
高知(500円):
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中国・四国で最も高い水準。
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四国山地に囲まれた地理により、鉄道整備や維持費が高コスト。
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利用者が少ないため、単価で運営を支える構造。
松山(470円):
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四国最大都市のひとつだが、地方私鉄(伊予鉄道)依存度が高い。
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路面電車など観光路線もあるが、定期利用が減少し、運賃への転嫁が進行中。
松江(460円):
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増加率9.524%は、今回で2番目の高水準。
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第三セクター「一畑電車」など、インフラ老朽化と投資負担の反映が背景。
岡山・高松・鳥取(430円):
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いずれも県庁所在地だが、複数路線の維持と、利用者の限界が共通課題。
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特に高松ではバスとの競合もあり、鉄道事業者は苦戦。
山口(370円):
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中国地方では比較的安価。
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利用者は限られるが、距離が短めの路線中心で、運賃抑制が可能。
広島(335円):
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最も低価格である一方、前年同期比52.27%という急激な上昇が特徴。
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路面電車(広島電鉄)やバスのIC統合などで価格体系の改定が実施された可能性がある。
価格上昇の要因分析
インフラ更新と投資の必要性:
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地域鉄道は老朽化が進み、車両更新やホームバリアフリー化に巨額の投資が必要。
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経営体力の弱い事業者ほど、運賃に直接転嫁せざるを得ない。
エネルギー・資材高騰:
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車両運用にかかる電力・燃料・部品価格が全国的に上昇。
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路線距離が長い地域では、その影響がより大きい。
定期利用者減少:
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コロナ禍以降のテレワーク定着により、定期収入が激減。
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利用者数が戻らない中、片道運賃への依存が進行。
公的補助の減少と自立経営への転換:
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地方財政の逼迫で補助金が減少傾向。
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運賃の見直しによる収益確保が求められる状況。
広島の特異な運賃急騰の背景
広島は、2024年度から2025年にかけて前年同期比で52.27%という極端な上昇を見せています。考えられる要因は以下の通りです。
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路面電車(広島電鉄)の再編成や料金統一
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IC乗車券の導入や運賃体系のフラット化による見かけ上の値上げ
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補助金打ち切りによる収支改善策の一環としての料金見直し
このようなケースは、都市の経営判断によって急速に料金が変動するリスクを示しています。
今後の課題と政策的展望
公共交通の持続可能性の確保:
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利用者が少なくなっても、生活路線としての維持は不可欠。
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民間企業だけに委ねず、地方自治体と国の連携による支援体制の構築が求められる。
地域特性に応じた柔軟な運賃制度:
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フラット料金や上限設定、IC連携など、利用者負担を平準化する工夫が必要。
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同時に、学生・高齢者向けの割引制度を維持・拡充すべき。
移動権の保障と都市間格差是正:
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高知と広島では運賃に165円の開きがあり、移動するだけで負担感に差が出る。
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公共交通はインフラとして「等しく利用できる権利」が保障されるべきという視点が必要。
まとめ
中国・四国のJR以外普通運賃は、全国平均よりも高めの水準で推移しており、とくに高知・松山・松江といった都市で顕著な高さを示します。一方、広島では全国でも注目される大幅な価格上昇が起きており、制度変更や経営戦略が背景にあると考えられます。今後は、利用者減と投資負担の板挟みの中で、交通インフラの持続可能性と公平性の両立が問われます。
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