宿泊・飲食サービス業の平均給与は13.53万円で依然として低水準だが、前年比4.4%の上昇と改善傾向も見られる。男女間や正規・非正規間での賃金格差が大きく、人手不足や離職率の高さが課題。今後はDXや最低賃金上昇を契機に構造改革が進む可能性がある。
男女別の給料の推移
最近の給料データ
合計 | 一般労働者 | 男性計 | 女性計 | パートタイム労働者 | |
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最新 | 2025年1月 | 2025年1月 | 2025年1月 | 2025年1月 | 2025年1月 |
最大期 | 2024年12月 | 2024年12月 | 2024年12月 | 2024年12月 | 2024年12月 |
最新値[万円] | 13.53 | 32.85 | 17.41 | 10.97 | 8.091 |
最大値[万円] | 17.91 | 52.01 | 24.84 | 13.31 | 8.509 |
前年同月比[%] | 4.416 | 6.546 | 2.827 | 6.439 | 3.876 |
宿泊・飲食サービス業の給料の推移


詳細なデータとグラフ
日本の全産業の労働者数の特徴
宿泊・飲食サービス業は観光立国を目指す日本経済において重要な役割を果たしています。一方で、低賃金・不安定雇用・人手不足といった慢性的な課題を抱えています。本稿では、2025年1月の最新統計をもとに業界の給与構造を分析し、課題と展望を考察します。
給与水準の全体傾向と背景
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最新平均給与(全体):13.53万円(前年比 +4.416%)
宿泊・飲食業全体の給与は他産業と比較して非常に低い水準にとどまっています。平均給与13.53万円はフルタイム収入としては生活が難しいレベルであり、業界の慢性的な低賃金体質が浮き彫りです。ただし前年比では4.4%の増加が見られ、回復基調にあることも確かです。これはインバウンド回復や最低賃金の上昇が寄与しているとみられます。
雇用形態別の給与と課題
一般労働者(正規雇用)
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平均給与:32.85万円(前年比 +6.546%)
一般労働者の給与水準は業界全体に比べて高いものの、他業界の正規労働者と比較すると決して高くありません。長時間労働や休日の少なさが常態化しており、改善が求められています。今回の6.5%増加は、管理職や専門職に対する処遇改善が反映された結果とも言えます。
パートタイム労働者
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平均給与:8.091万円(前年比 +3.876%)
非正規雇用者の大半を占めるパートタイム労働者の給与水準は依然として低く、生活維持が困難な層も多いです。特に高齢者や学生、主婦層が多くを占めており、働ける時間に制限があるため、労働時間の柔軟性や最低賃金の地域差が収入に直結します。
男女別の給料と構造的課題
男性労働者
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平均給与:17.41万円(前年比 +2.827%)
男性労働者の給与も全体水準と比較して低く、昇進機会が限られている中小企業や店舗単位で働くことが多いため、賃金が頭打ちになる傾向があります。
女性労働者
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平均給与:10.97万円(前年比 +6.439%)
女性の多くはパートタイムやアルバイトとして働いており、依然として正規雇用比率が低く、結果として賃金格差が広がっています。男女間で6万円以上の賃金差があり、家庭内ケア負担との両立や正社員転換の難しさが原因です。前年比での増加率は高めであるものの、基礎値が低いため実質的な生活改善にはつながりにくいのが現状です。
現在の課題と業界構造の問題点
慢性的な人手不足
長時間労働・不規則シフト・低賃金といった悪循環により、若年層や経験者が定着せず、人手不足が常態化しています。外国人労働者の受け入れも行われていますが、言語や待遇面の壁が大きく、即効性に欠ける状況です。
離職率の高さと業界の魅力低下
過重労働に比して賃金が見合わないという構造が、離職の主因です。またコロナ禍で一度離れた人材が戻らず、他業種へ移ったまま定着してしまったケースも多く、労働力回復は進んでいません。
今後の展望と期待される変化
最低賃金の継続的な引き上げ
近年、全国的な最低賃金の引き上げが続いており、宿泊・飲食業にも直接影響を与えています。特に非正規雇用者の収入底上げが期待され、現場での待遇改善が進む可能性があります。
DX化と業務効率の向上
注文のセルフ化やロボットによる配膳など、IT技術の導入によって人手不足を補いながら、労働負荷を減らす動きが拡大しています。業務効率の向上によって、生産性を改善し、給与還元ができる体制が整う可能性もあります。
働きやすい職場環境づくり
シフトの柔軟化、育児・介護と両立できる制度、正規転換制度など、就業継続を支える取り組みが進めば、労働者の定着とやりがい向上につながります。これにより、長期的には賃金の安定や男女格差の縮小も期待されます。
まとめ
宿泊・飲食サービス業は依然として低賃金構造が根強いものの、コロナ後の回復と最低賃金上昇により、賃金は緩やかに改善傾向にあります。男女格差・雇用形態格差の是正、業務の効率化といった構造改革を通じて、持続可能な働き方の実現が求められています。
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