医療・福祉業界の平均給与は27.63万円と全産業平均を下回り、特に女性やパート労働者の賃金水準が低い。人材不足や過重労働が深刻で、処遇改善や制度改革が急務。ICT活用や均等待遇の推進により、今後は働きやすい職場づくりが求められている。
男女別の給料の推移
最近の給料データ
合計 | 男性計 | 一般労働者 | 女性計 | パートタイム労働者 | |
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最新 | 2025年1月 | 2025年1月 | 2025年1月 | 2025年1月 | 2025年1月 |
最大期 | 2024年12月 | 2014年12月 | 2024年12月 | 2024年12月 | 2024年12月 |
最新値[万円] | 27.63 | 37.15 | 34.81 | 24.58 | 13.03 |
最大値[万円] | 52.41 | 71.51 | 70.22 | 47.39 | 16.89 |
前年同月比[%] | 2.118 | 0.5597 | 1.147 | 3.151 | 6.511 |
医療・福祉の給料の推移


詳細なデータとグラフ
日本の全産業の労働者数の特徴
医療・福祉は高齢化社会において需要が増加する重要産業です。しかし、労働環境の厳しさや人材不足といった課題が深刻で、賃金水準やその推移は、社会全体の安心と安全に直結するテーマでもあります。本稿では、最新統計(2025年1月)をもとに、その現状と課題、将来像を読み解きます。
給与水準の全体傾向と背景
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平均給与(全体):27.63万円(前年比 +2.118%)
医療・福祉業界の給与は全産業平均を下回る水準にとどまっています。慢性的な人材不足を背景に、国の処遇改善策も講じられていますが、大きな改善には至っていません。特に福祉職(介護職・保育職)では過酷な労働に対し十分な報酬が得られないとの声が根強く、離職率の高さも問題視されています。
雇用形態別の給料とその問題点
一般労働者(正規雇用)
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平均給与:34.81万円(前年比 +1.147%)
医師や看護師、介護福祉士といった正規職員の給与は一定の水準にありますが、専門性や責任の重さに比べると不十分という声が多く、過労や精神的負担の蓄積が社会問題となっています。また、夜勤・交替勤務など特殊勤務手当が上乗せされている場合も多く、実際の働き方は非常にハードです。
パートタイム労働者
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平均給与:13.03万円(前年比 +6.511%)
パートタイム労働者の賃金上昇率は大きく、待遇改善の努力が一部で見られます。とはいえ、依然として低賃金であり、生活の安定には至らないケースも多く、家庭と両立して働く女性の多さがこの給与水準に表れています。労働時間や役割に見合った報酬制度の再構築が求められます。
男女別の給料と課題
男性労働者
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平均給与:37.15万円(前年比 +0.5597%)
医療・福祉業界の男性労働者の給与は全体よりも高く、主に医師や施設管理職、技師系職種に多く分布しています。ただし、男性の割合は業界全体で見ると低く、今後の人材確保のためには、男女問わず働きやすい職場づくりが不可欠です。
女性労働者
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平均給与:24.58万円(前年比 +3.151%)
女性の給与は男性より12万円以上低く、依然として大きな格差があります。女性は介護・看護・保育など感情労働を伴う職種に多く従事しており、その業務の過重さに比して報酬が少ない傾向があります。また、昇進機会の不平等や家庭との両立支援の不足も課題です。
現在の課題と構造的要因
人材不足と離職率の高さ
医療・福祉業界では人材不足が慢性化しており、特に介護分野では重労働と低賃金が離職の主因とされています。夜勤や休日出勤が避けられない業種でありながら、報酬がそれに見合っていない状況です。
賃金とモチベーションの乖離
人々の命や生活を支える重要な仕事であるにもかかわらず、賃金水準が低いために、職務の尊さと報酬との間に大きなギャップが存在しています。これは働く人々のモチベーションや職業誇りの低下にもつながりかねません。
今後の展望と政策的対応の期待
処遇改善加算と制度改革
介護職などでは、処遇改善加算が支給されており、一定の賃上げが進んでいます。今後も政府による財政支援を背景とした処遇改善制度の拡充がカギとなります。また、職種間・施設間の格差是正も課題です。
女性やパート職の処遇見直し
パートタイム労働者の賃金が前年比6.5%と大きく上昇している点は注目に値します。今後はさらに均等待遇原則が進み、「同一労働同一賃金」の実効性向上により、非正規雇用の処遇改善が期待されます。
働きやすい環境づくり
ICT化による記録業務の効率化や、夜勤負担の分散、育児・介護支援制度の充実などにより、働く人が長く安心して従事できる環境整備が必要です。これにより、定着率の向上と人材流出の防止が図れるでしょう。
まとめ
医療・福祉業界の賃金は全体的に低水準で推移しており、特に女性・パート職において深刻な課題が残ります。需要が高まる中、報酬制度と労働環境の両面からの改革が急務です。将来的には制度支援と社会的評価の向上により、魅力ある産業へと変わる可能性があります。
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