いわし価格が全国平均96.1円に上昇、西日本で顕著な高騰傾向

食料品



2025年3月時点でのいわし100gの全国平均価格は96.1円と、過去からの上昇傾向が続いている。特に佐世保や熊本、高知などで高価格が目立つ一方、東大阪や奈良では依然として低価格が維持されている。全体として西日本で価格上昇が顕著で、地域差も拡大している。背景には、燃料費や物流費の高騰、水揚げ量の変動、地域ごとの流通事情の違いがあり、価格上昇の構造的要因が浮き彫りとなっている。

食料品の都市別小売価格

いわしの高い都市

2025年3月 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
名称 平均 佐世保 熊本 高知 金沢 今治 伊丹 長野 府中 旭川 和歌山
最新値[円] 96.1 135 133 126 126 125 124 123 122 118 115
平均比[%] 100 140.5 138.4 131.1 131.1 130.1 129 128 126.9 122.8 119.7
前年月同比[%] 9.082 33.66 38.54 38.46 12.5 5.042 36.26 46.43 0.826 18 23.66

いわしの低い都市

2025年3月 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
名称 平均 東大阪 奈良 大阪 浜松 大津 松阪 前橋 枚方 福山
最新値[円] 96.1 58 59 65 70 70 71 74 75 75 75
平均比[%] 100 60.35 61.39 67.64 72.84 72.84 73.88 77 78.04 78.04 78.04
前年月同比[%] 9.082 0 5.357 -4.412 -1.408 -12.5 10.94 7.246 1.351 8.696 -5.063

 

これまでの魚の推移

いわしの小売り価格
最新のデータ

 

詳細なデータとグラフ

 

いわしの現状と今後

いわしは日本人の食生活において古くから親しまれてきた青魚であり、栄養価が高く価格も比較的安価であることから、庶民の食卓に欠かせない存在であった。しかし、近年は価格の変動が大きく、地域ごとに顕著な格差が見られるようになっている。本稿では、2010年1月から2025年3月までの小売価格データをもとに、いわしの価格動向、都市別の特徴、そして最近の価格高騰の背景について詳細に考察する。

いわし価格の長期的な動向

2010年以降、日本のいわし100gあたりの小売価格はゆるやかに上昇傾向をたどってきた。特に2020年以降は新型コロナウイルスの影響による物流の混乱、漁業資源の減少、原油価格の高騰などが重なり、価格の上昇に拍車をかけている。2025年3月の最新データでは全国平均が96.1円と、2010年代前半の60円台と比較して大幅な上昇を示している。

都市別価格の特徴と格差

いわしの価格には都市ごとに顕著な差があり、最も高い地域では135円(佐世保)、最も安い地域では58円(東大阪)と、その差は2倍以上に広がっている。

高価格地域の特徴

佐世保(135円)、熊本(133円)、高知(金沢と並び126円)など九州や四国の一部地域では、流通コストや漁獲量の減少、都市規模による需要の集中などが要因となっている。また、長野(123円)など内陸部の都市も輸送コストの影響で価格が高めに設定される傾向がある。

低価格地域の特徴

東大阪(58円)、奈良(59円)、大阪(65円)など関西圏では、流通網が整備されており、大量消費地であることから価格競争が起きやすく、比較的安価で提供されている。また、卸売市場の活発さや大手スーパーの進出が影響している可能性もある。

前年同期比から見る最近の価格高騰の傾向

2025年3月時点の前年同期比を見ると、特に低価格地域における値上がり率が顕著である。福山、枚方、前橋などでは78.04%もの上昇が見られ、他にも奈良や大阪で60%以上の増加が確認された。これは、これまで安価であった地域においてもコスト上昇の波が押し寄せていることを示している。

一方で、価格が高い都市では値上がり率が比較的緩やかであり、府中(0.826%)や今治(5.042%)など、すでに高水準に達していた地域では価格が安定している傾向も見られる。

価格上昇の要因

いわし価格の高騰には複数の要因が複合的に作用している。

漁獲量の減少

海水温の上昇や海洋環境の変化により、いわしの漁獲量は年々減少傾向にある。特に北海道沖や三陸沖における不漁が全国的な供給減につながっている。

燃料費・物流費の上昇

原油価格の高騰により、漁船の運航コストおよびトラック輸送の物流費が上昇し、最終的な小売価格にも影響を与えている。

為替の影響と輸入魚の高騰

円安の影響で輸入魚の価格も上昇し、国内産いわしへの需要が増大している。そのため、供給と需要のバランスが崩れ、価格が押し上げられている。

今後の展望と課題

今後も気候変動や国際情勢に伴うコスト上昇が続くと予想され、いわし価格の安定は難しいと見られる。価格高騰が消費者の購入行動に与える影響や、魚離れを加速させる懸念もある。加えて、地方都市における価格格差が拡大すれば、地域間の食料アクセスの公平性も課題となる。

そのため、水産資源の持続的な管理、流通の効率化、燃料補助など多角的な対策が求められる。

まとめ

いわしの小売価格は、長期的な視点で見ると着実に上昇しており、地域によって価格水準や増加率に大きな差があることがわかる。近年の価格高騰は、単に需給バランスの変化だけでなく、漁業資源の変化、物流コスト、為替動向など、さまざまな経済的・環境的要因が絡み合って生じている。今後は消費者、漁業関係者、行政の三者による協働が必要となるだろう。

 

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