北海道・東北地方では、寒冷な気候や供給体制の影響でプロパンガス代が全国平均より高く、地域間にも大きな格差が存在しています。特に函館や旭川では月額1万円を超え、山形との差は年間で4万円以上に。背景にはインフラ整備の遅れや価格の不透明性があります。今後は料金の見える化や再エネとの併用により、価格是正と生活負担の軽減が期待されます。
小売物価統計
1カ月のプロパンガス代の高い都市
2025年3月 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
名称 | 平均 | 函館 | 旭川 | 青森 | 札幌 | 八戸 | 福島 | 秋田 | 盛岡 | 郡山 | 仙台 |
最新値[円] | 10130 | 11640 | 11280 | 11060 | 10710 | 10670 | 10340 | 10230 | 9553 | 9192 | 8946 |
平均比[%] | 100 | 114.8 | 111.3 | 109.2 | 105.7 | 105.3 | 102 | 101 | 94.27 | 90.71 | 88.28 |
前年月同比[%] | 2.168 | 0 | 1.713 | 3.597 | 0.79 | -3.96 | 0.00967 | 0.788 | 2.754 | 1.738 | 22.67 |
1カ月のプロパンガス代の低い都市
2025年3月 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
名称 | 平均 | 山形 | 仙台 | 郡山 | 盛岡 | 秋田 | 福島 | 八戸 | 札幌 | 青森 | 旭川 |
最新値[円] | 10130 | 7843 | 8946 | 9192 | 9553 | 10230 | 10340 | 10670 | 10710 | 11060 | 11280 |
平均比[%] | 100 | 77.4 | 88.28 | 90.71 | 94.27 | 101 | 102 | 105.3 | 105.7 | 109.2 | 111.3 |
前年月同比[%] | 2.168 | 0 | 22.67 | 1.738 | 2.754 | 0.788 | 0.00967 | -3.96 | 0.79 | 3.597 | 1.713 |
これまでのプロパンガス代の推移


詳細なデータとグラフ
プロパンガス代の現状と今後
日本のエネルギー事情において、プロパンガスは都市ガス供給が行き届かない地域を支える重要なエネルギー源です。特に、寒冷地である北海道・東北地方では、暖房や給湯など生活に不可欠な用途に用いられ、使用量も多くなります。そのため、プロパンガス料金の変動や地域格差は、住民の生活に大きな影響を及ぼしています。
現在のプロパンガス代と地域ごとの格差
2025年3月時点での全国平均の1カ月当たりプロパンガス代は10,130円です。これを基準に、北海道・東北各地の金額と比率を見ると、以下のような大きな格差が見られます。
高い地域(全国平均超過)
地域 | 月額 | 全国平均比 |
---|---|---|
函館 | 11,640円 | 114.8% |
旭川 | 11,280円 | 111.3% |
青森 | 11,060円 | 109.2% |
札幌 | 10,710円 | 105.7% |
八戸 | 10,670円 | 105.3% |
福島 | 10,340円 | 102.0% |
秋田 | 10,230円 | 101.0% |
安い地域(全国平均以下)
地域 | 月額 | 全国平均比 |
---|---|---|
盛岡 | 9,553円 | 94.27% |
郡山 | 9,192円 | 90.71% |
仙台 | 8,946円 | 88.28% |
山形 | 7,843円 | 77.4% |
このように、最も高い函館と最も安い山形では、月額で3,800円近い差が生じており、年間に換算すると約45,600円の差となります。
これまでの価格動向(2010年〜2025年)
2010年代前半:原油高騰と円安の影響
2011年の東日本大震災以降、エネルギー供給体制が見直され、輸入依存度が増したことでプロパンガス価格は上昇しました。特に円安が進行した2012年以降は、輸入コストが直接反映されました。
2015年〜2019年:原油価格安定による一時的な低下
一方、2015年から2018年ごろは、世界的な原油供給過多により価格がやや落ち着き、プロパンガス料金も若干下がる傾向を見せました。
2020年以降:コロナ禍・地政学リスクによる再上昇
2020年以降、COVID-19による物流の混乱、2022年以降のロシア・ウクライナ戦争によるエネルギー供給不安などを背景に、再び上昇トレンドへと転じています。
地域格差の要因
北海道・東北地域内でも料金格差が大きく、その要因は以下のように整理できます。
気候と使用量
特に函館・旭川・青森などの寒冷地では、冬季に暖房用途での使用量が多く、基本料金に加えて従量部分が増加します。
供給インフラと業者の数
都市ガス供給が難しい地域ではプロパンガスが主流ですが、業者間の競争がない地域では価格が高止まりしやすい傾向があります。
配送・保守コスト
積雪や山間部など地理的な要因により、配送・保守の人件費やコストが増加し、それが価格に転嫁されることがあります。
消費者側の課題と制度的問題
プロパンガスには、以下のような制度的・構造的課題が存在しています:
-
価格の不透明さ:業者ごとに料金体系が異なり、契約時に十分な情報提供がなされないこともある。
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長期契約・解約金問題:設備貸与などの名目で高額な解約料が発生し、乗り換えが困難。
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料金交渉の難しさ:個人契約であるがゆえに交渉力が弱く、価格の是正が進みにくい。
今後の期待と対策
ガス料金の透明化と比較サイトの普及
政府や自治体による「ガス料金比較サイト」や「料金見える化ツール」の整備により、不透明だった料金体系の可視化が進んでいます。
スマートメーターの導入
使用量の自動計測が可能になることで、省エネ意識の向上や不正請求の抑止が期待されます。
再生可能エネルギーの併用
太陽光発電・蓄電池・エコキュートなどとの組み合わせにより、プロパンガスへの依存度を下げる家庭も増加しています。
災害時の備えとしての価値
都市ガスが災害で途絶える可能性がある中で、個別供給型のプロパンガスは復旧の早さが評価されており、地域防災との連携も期待されます。
まとめ
北海道・東北地方のプロパンガス料金は、全国平均に対して高い水準にありますが、その背景には寒冷地特有の気候や供給インフラ、制度的課題が複雑に絡んでいます。今後は、価格の透明化、設備投資、再エネとの併用などを通じて、地域格差の是正と生活負担の軽減が求められます。
プロパンガスは「生活の足元を支えるエネルギー」として、より公正かつ持続可能な制度設計が必要です。
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