日本の旅費支出において「ネット以外の決済」は、2025年4月時点で平均4.692万円と減少傾向にありつつも、東海など一部地域では急増しています。利用世帯割合は平均2.418%と低く、前年同月比では7.057%の減少。キャッシュレス化やオンライン予約の普及が背景にあり、今後は高齢層や観光地現地での消費促進による役割が問われます。地域差を踏まえた施策が重要です。
家計調査結果
旅費(ネット以外の決済)の相場
旅費(ネット以外の決済)支出の世帯割合
旅費(ネット以外の決済)の推移


詳細なデータとグラフ
旅費(ネット以外の決済)の旅行関係費現状と今後
「旅費(ネット以外の決済)」とは、オンラインではなく、店頭や窓口、旅行代理店などで現金やカード決済により支払われる旅行関連の出費を指します。かつては旅行費用の大部分を占めていたこのカテゴリですが、近年はデジタル化の進行により相対的な存在感が薄れつつあります。それでも、ネットを使わない層や現地予約・突発的な出費では依然として重要な位置を占めています。本稿では、その支出の推移や地域差、今後の見通しを考察します。
全体動向と平均値の変化
2025年4月現在、全国平均の月間支出は4.692万円。これはネット決済の6.124万円より低く、オンライン予約が主流となった現代の旅行スタイルを反映しています。前年同月比で+8.419%の増加が見られ、支出額そのものはやや回復傾向にあるものの、利用世帯割合の減少(-7.057%)が示すように、旅行者数自体が増えているわけではありません。むしろ、1部世帯の高額支出が平均値を押し上げていると考えられます。
地域別の支出差と注目ポイント
ネット以外の旅費支出における地域差は顕著です。特に注目されるのは以下の地域です:
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東海(8.72万円):前年同月比で+120.8%と爆発的な増加。これは、地方の現地予約需要や高額な個人旅行の増加、団体旅行の復活などが影響した可能性があります。
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中都市(5.705万円)・9州・沖縄(5.346万円)・中国地方(5.251万円):全国平均(4.887万円)を上回る水準。交通インフラの制限やネット利用環境の差から、対面予約が根強い地域といえるでしょう。
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近畿(4.064万円)・東北(4.347万円):低水準で推移し、近畿は前年比-15.18%と大きく減少。ネット移行が早かった都市圏では対面型旅行手配が衰退傾向です。
利用世帯割合の低下とその背景
支出額に対して、ネット以外で旅費を支出した世帯の割合は平均2.418%と低水準です。特に、
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4国(1.15%)、小都市A(1.83%)では著しく低く、4国では前年比-55.94%と壊滅的な落ち込み。
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対照的に、中都市(2.58%)や東北(2.57%)ではやや高い水準が保たれています。
この差は、観光客の決済スタイルの違いや、地域ごとのネット接続率、現地旅行代理店の数、旅行文化の違いなど複合的な要因が影響しています。また、若年層を中心とした「スマホ予約・即決型」旅行スタイルの広がりが、旧来型の支払い方法を押し出している現実があります。
課題と問題点
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キャッシュレス化・デジタル化との乖離 ネット以外の決済は、手続きや時間がかかる場合が多く、特に若い世代や外国人旅行客からは敬遠されがちです。
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高齢者・非デジタル層のニーズとのギャップ 1方で、高齢層やネット利用が不得手な人々にとっては、対面型の予約・支払い方法は依然として安心感があり、必要不可欠な手段です。
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観光地における現地消費支援の弱さ 地方の観光地では、宿泊施設や交通手段の現地支払いが残っているものの、利便性の観点からネット予約に淘汰されつつあります。
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1部地域での突出による偏り 東海のように突出した数値を示す地域がある1方、他の多くの地域では低迷しており、全国的に均衡の取れた観光経済にはなっていません。
今後の展望と期待される取り組み
ネット以外の旅費支出は縮小傾向にありますが、以下のような役割と可能性が期待されています:
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高齢者や非デジタル層のアクセス保証 公共機関や旅行代理店によるアナログ支援体制の維持は、インクルーシブな観光振興には不可欠です。
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地方観光地の現地支出活性化 現地での追加支出(飲食、移動、レジャー)を促す仕組みとして、ネット決済では完結しない旅費が今後も1定の役割を果たす可能性があります。
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デジタル・アナログ融合の施策 たとえば、「現地で使える割引券付きネット予約」など、ネットと現地決済を連携させた仕組みの導入が有効でしょう。
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観光政策における多様な決済スタイルの併用 政府や自治体の観光促進策も、ネット依存に偏らず、対面予約層も取り込む柔軟性が求められます。
おわりに:縮小する中でも価値ある支出形態
「旅費(ネット以外の決済)」は、全体として縮小傾向にありますが、決して不要になるわけではありません。むしろ、旅行者層の多様化に伴い、ネットでは拾いきれないニーズを担う存在として見直される必要があります。特に、デジタルに馴染まない層や、地域密着型の観光支出との親和性を活かし、多様な旅のスタイルを支える手段として持続的な役割を果たしていくことでしょう。
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