南北アメリカの就業者数と雇用動向：国別変化と今後の課題を解説

南北アメリカでは、アメリカが2025年に1.638億人の就業者数で圧倒的首位を維持。カナダも増加傾向（+0.941%）だが、プエルトリコは減少（-1.899%）と地域格差が顕著。これまでの傾向として、北米は安定成長を続ける一方、中南米は構造的失業や非正規雇用が課題。今後は技術革新と労働市場改革による対応が必要不可欠である。

就業者数は単に労働力人口の1部ではなく、経済成長・産業構造・社会政策の結果を表す指標である。本稿では、IMF推計による2025年の南北アメリカの就業者数データを基に、これまでの推移・問題点・将来の展望を解説する。

アメリカ——絶対的な労働市場の規模

2025年のアメリカの就業者数は約1.638億人で、前年比+0.833%の増加。これは世界的に見ても非常に大規模な雇用市場であり、多様な産業（IT、金融、製造、サービス、農業）を支える強固な基盤を持つ。移民の受け入れ、労働力の柔軟性、テクノロジー導入による生産性の向上が、長期的にこの成長を支えてきた。

カナダ——堅実な増加と移民労働の役割

カナダは2025年に約2090万人の就業者数を記録し、前年比+0.941%の増加。成長率はアメリカを上回っており、これは近年の積極的な移民政策と労働市場3加率の向上によるものだ。特にテクノロジー、グリーンエネルギー、医療分野での雇用拡大が進んでいる。

プエルトリコ——減少傾向の背景にある構造問題

プエルトリコは109万人の就業者数で前年比-1.899%の減少。人口流出、若年層の本土アメリカへの移動、自然災害や債務危機による経済の疲弊が長期的な雇用低迷の背景にある。構造的な改善がなければ、さらに労働力が縮小するリスクがある。

これまでの就業者数の推移と地域ごとの差異

1980年代以降、アメリカとカナダでは労働市場が持続的に拡大してきた。1方、中南米ではインフォーマルセクター（非正規雇用や無登録労働）が依然として高い割合を占め、就業者数の増減が経済成長に必ずしも直結しない問題がある。

女性・高齢者・移民の労働3加率

北米諸国では女性と高齢者の労働3加率が着実に上昇している。特にカナダでは柔軟な働き方の普及が後押しとなっている。移民労働も不可欠な要素であり、今後の労働力補填の鍵を握る。1方で、南米の1部ではジェンダーギャップや育児環境の未整備が就業率を制限している。

産業構造と雇用の質の違い

アメリカではサービス業（特に医療・教育・IT）での雇用創出が著しく、付加価値の高い職種が拡大している。カナダも自然資源に依存しながらも知識集約型の産業への移行が進行中。1方、中南米では依然として農業や鉱業など1次産業の比重が高く、雇用の質に課題が残る。

パンデミック後の労働市場の変化

COVID-19以降、アメリカ・カナダではテレワークとデジタル化が加速し、労働市場の構造改革が進んだ。これにより高スキル職への需要が増す1方、非熟練労働者の就業機会が縮小するリスクも表面化している。中南米ではロックダウンや医療崩壊による深刻な雇用喪失が記録されたが、現在は回復基調にある。

将来の展望と政策課題

今後、南北アメリカの労働市場には以下の課題が浮上する：

• 労働力不足の補填（特に高齢化に直面する北米）

• 教育・職業訓練の再設計（デジタル・グリーン技術への対応）

• インフォーマルセクターの縮小

• 労働3加率の格差是正（ジェンダー・移民・地域間）

これらに対応するためには、持続可能で包括的な労働政策が不可欠となる。

第10結論——「量」と「質」の両立をめざして

南北アメリカでは、国によって労働市場の規模と成長率に明確な差がある。アメリカやカナダでは就業者数の安定成長が続いている1方で、プエルトリコのように減少に直面する地域もある。今後は「労働の質の向上」と「社会的包摂」が、就業者数の単なる拡大以上に重要なテーマとなる。