2025年のIMF予測によると、アジアで一人当たりGDP(米ドル)が最も高いのはシンガポール(9.293万USD)で、マカオやカタール、イスラエル、香港が続く。日本は3.396万USDで韓国・台湾と同水準。一人当たりGDPは生活水準や経済効率を示す重要指標であり、高所得国では伸び悩みや格差拡大の課題が顕在化。成長率ではイスラエルやマカオ、日本が堅調。一方で韓国は前年割れ。今後は人口構造・産業高度化・国際競争力が各国の順位を左右すると予測される。
一人当たりGDP(米ドル)、今年の予想ランキング
名称 | 最新値[万USD] | 前年比[%] | |
---|---|---|---|
1 | シンガポール | 9.293 | +2.49 |
2 | マカオ | 7.631 | +4.674 |
3 | カタール | 7.165 | +0.0975 |
4 | イスラエル | 5.776 | +6.585 |
5 | 香港 | 5.603 | +3.695 |
6 | アラブ首長国連邦 | 4.95 | +1.368 |
7 | ブルネイ | 3.497 | +2.718 |
8 | 韓国 | 3.464 | -4.116 |
9 | 台湾 | 3.443 | +2.958 |
10 | 日本 | 3.396 | +4.485 |
11 | サウジアラビア | 3.01 | -2.106 |
12 | クウェート | 2.995 | -5.341 |
13 | バーレーン | 2.886 | -0.615 |
14 | オマーン | 1.897 | -5.449 |
15 | モルディブ | 1.821 | +4.808 |
16 | トルコ | 1.671 | +8.055 |
17 | 中国 | 1.369 | +2.814 |
18 | マレーシア | 1.314 | +4.818 |
19 | タイ | 0.777 | +3.671 |
20 | モンゴル | 0.72 | +8.22 |
21 | イラク | 0.567 | -9.271 |
22 | インドネシア | 0.503 | +1.375 |
23 | ヨルダン | 0.49 | +4.48 |
24 | ベトナム | 0.481 | +5.955 |
25 | フィリピン | 0.435 | +6.638 |
26 | ブータン | 0.43 | +9.949 |
27 | イラン | 0.39 | -15.88 |
28 | インド | 0.288 | +6.161 |
29 | カンボジア | 0.287 | +4.18 |
30 | バングラデシュ | 0.269 | +2.55 |
31 | ラオス | 0.21 | +1.442 |
32 | 東ティモール | 0.149 | +3.672 |
33 | ネパール | 0.146 | +4.929 |
34 | ミャンマー | 0.118 | +5.667 |
35 | イエメン | 0.0417 | -11.5 |

現地通貨(LCU)での一人当たりGDP
名称 | 最新値[億LCU] | 前年比[%] | |
---|---|---|---|
1 | イラン | 33 | +42.36 |
2 | ベトナム | 1.228 | +8.019 |
3 | インドネシア | 0.831 | +5.745 |
4 | 韓国 | 0.505 | +2.51 |
5 | ラオス | 0.482 | +8.199 |
6 | モンゴル | 0.256 | +13.45 |
7 | カンボジア | 0.118 | +4.463 |
8 | イラク | 0.0737 | -9.271 |
9 | 日本 | 0.0507 | +2.969 |
10 | ミャンマー | 0.031 | +8.024 |
11 | 台湾 | 0.0113 | +4.777 |
12 | イエメン | 0.00986 | +15.25 |
13 | トルコ | 0.00698 | +37.57 |
14 | マカオ | 0.0061 | +4.111 |
15 | パキスタン | 0.0048 | +7.223 |
16 | 香港 | 0.00435 | +3.165 |
17 | ブータン | 0.00363 | +10.51 |
18 | バングラデシュ | 0.0033 | +13.41 |
19 | モルディブ | 0.00281 | +4.808 |
20 | タイ | 0.00271 | +2.335 |
21 | カタール | 0.00261 | +0.0975 |
22 | インド | 0.00251 | +9.273 |
23 | フィリピン | 0.00249 | +6.638 |
24 | イスラエル | 0.00212 | +5.566 |
25 | ネパール | 0.00199 | +7.874 |
26 | アラブ首長国連邦 | 0.00182 | +1.368 |
27 | シンガポール | 0.00124 | +2.725 |
28 | サウジアラビア | 0.00113 | -2.106 |
29 | 中国 | 0.000995 | +3.89 |
30 | マレーシア | 0.000609 | +5.5 |
31 | ブルネイ | 0.000468 | +2.969 |
32 | バーレーン | 0.000109 | -0.615 |
33 | クウェート | 9.19E-5 | -5.341 |
34 | オマーン | 7.29E-5 | -5.449 |
35 | ヨルダン | 3.48E-5 | +4.48 |
36 | 東ティモール | 1.49E-5 | +3.672 |

詳細なデータとグラフ
一人当たりGDP(米ドル)の現状と今後
1人当たりGDP(Gross Domestic Product per capita)は、国内総生産を人口で割った値であり、国民1人あたりがどれだけの経済価値を生み出しているか、あるいは恩恵を受けているかを示す指標です。
特徴:
-
生活水準の指標として用いられるが、実際の所得分配とは異なる。
-
経済規模の大きさよりも「経済効率」や「豊かさの目安」を測るのに有効。
-
高くても格差が大きければ社会的問題を含むことがある。
1人当たりGDPのアジア地域における歴史的推移
1980年代~2000年代前半:日本の独走
戦後復興と高度経済成長を背景に、日本は長年にわたってアジア最高の1人当たりGDPを維持していた。
2000年代後半~現在:都市国家・産油国の台頭
グローバル金融センター(シンガポール、香港)や観光・カジノ産業の集中(マカオ)、石油資源(カタール、UAE)によって、人口が比較的少ない都市国家・産油国が急浮上。
韓国・台湾の追い上げ、日本は横ばい
製造業・ITで成長した韓国や台湾は、日本に並ぶ水準に到達。1方、日本は人口減・低成長が足かせとなり、1人当たりGDPの国際順位が低下傾向にある。
2025年予測に見るアジアの上位国の状況
シンガポール:9.293万USD(+2.49%)
極めて高い水準。金融、物流、製薬など高付加価値産業が集中。人口規模が小さく、効率性重視の政策で常に上位。
マカオ:7.631万USD(+4.674%)
観光・カジノ経済が回復。COVID-19で大打撃を受けたが、急速に復調。人口が少ないため、経済活動の小さな変動でも大きく反映される。
カタール:7.165万USD(+0.0975%)
石油・天然ガスに依存。高い水準は維持しているが成長は鈍化。エネルギー価格の変動が大きな影響を及ぼす。
イスラエル:5.776万USD(+6.585%)
スタートアップ国家。ハイテク産業や医療技術が牽引。人的資本の質が非常に高く、中東の中では異彩を放つ存在。
香港:5.603万USD(+3.695%)
依然として金融とサービス産業が強いが、中国との統合進展により政治・経済の自由度に懸念も。
アラブ首長国連邦(UAE):4.95万USD(+1.368%)
石油・観光・金融の複合構造。経済多角化が進行中で、将来的にはポストオイル社会を目指している。
ブルネイ:3.497万USD(+2.718%)
石油依存国家で人口が少ないため1人当たりGDPは高い。成長率はやや鈍化傾向。
韓国:3.464万USD(-4.116%)
前年割れはウォン安や輸出不振、内需の低迷が影響。少子高齢化も進行し、今後の成長は産業転換次第。
台湾:3.443万USD(+2.958%)
半導体などハイテク分野が牽引。地政学リスクを抱えながらも堅調な成長を維持。
日本:3.396万USD(+4.485%)
久々の好調な伸び。円安効果と株高が1部影響。ただし実質所得の向上が伴わなければ「実感なき成長」に留まる可能性。
1人当たりGDPから見える課題
格差の存在と構造的な分配問題
高い1人当たりGDPでも、所得格差や資産格差が拡大している国も多い(例:香港、シンガポール)。1部の産業や層に集中している富の分配問題が浮き彫りに。
人口動態の影響
人口減少国(日本、韓国、台湾)では1人当たりGDPの「分母が減ること」によって1時的に数値が上昇する場合もあり、必ずしも豊かさの向上を意味しない。
資源依存と多角化の難しさ
ブルネイやカタールなど、資源依存国は高水準を維持しているが、価格変動に弱く、将来への不安定要素を抱える。
今後の展望と1人当たりGDPの変化要因
成長の牽引力は「付加価値」と「人口構成」
・若年層人口が多く、生産年齢人口の割合が高い国は成長余地が大きい(例:イスラエル)。・産業の高付加価値化が持続的な成長には不可欠(例:台湾、韓国)。
日本の課題と可能性
・労働生産性向上と女性・高齢者の労働3加が鍵。・スタートアップ支援やデジタル投資が1人当たりGDP改善のカギとなる。・観光・資産運用など、内需サービス産業の強化が望まれる。
中長期的に順位の逆転もあり得る
・韓国と日本の位置関係は今後数年で逆転する可能性があり、台湾も肉薄。・マカオや香港は政治的安定性と外部依存度の高さがリスク要因。
まとめ:数値の背後にある「質」の成長を見極めよ
1人当たりGDP(米ドル)は、国民生活の豊かさを測る上で重要な指標だが、その背後には人口構造、産業構造、格差、為替など多くの要素が絡んでいます。表面的な数値の増減だけでなく、「なぜ伸びたか」「持続可能なのか」「分配は適正か」といった観点で捉える必要があります。
アジアの経済構造は、都市国家・資源国家・工業国家と多様であり、今後も多極的な成長が続く見込みです。各国が1人当たりGDPを単なる数値以上の「豊かさの質」に結びつけられるかが、アジア経済の本当の成熟を占う鍵となるでしょう。
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