2025年の製造品輸入(CIFベース)変化率は世界平均で+1.305%、前年比では-48.72%と大幅減。スリナム、ブータン、パプアニューギニアなど小規模経済圏の一部では高い成長率を示すが、これは一時的なインフラ投資や外資依存に起因するケースが多い。過去の傾向から製造品輸入は景気動向、為替、産業構造の変化に敏感であり、今後はデジタル設備や環境関連の需要が増える一方、保護主義や内製化圧力が変化率を抑制する可能性もある。
世界経済のデータとグラフ
製造品輸入(変化率)、国別今年の予想
2025年 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | |
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名称 | 世界 | スリナム | ブータン | パプアニューギニア | ギニア | モザンビーク | ジブチ | ニジェール | エジプト | マリ | ブルンジ |
最新値[%] | 1.305 | 76.14 | 44.18 | 34.91 | 18.78 | 18.45 | 16.72 | 16.27 | 16.21 | 14.05 | 13.65 |
前年比[%] | -48.72 | +229.2 | -347.8 | -309.7 | -63.4 | -331.7 | +373 | +97.42 | +105.2 | +1086 | -749.1 |
製造品輸入(変化率)の推移


詳細なデータとグラフ
製造品輸入(変化率)の現状と今後
「製造品輸入(変化率)」とは、前年と比べて、ある国が輸入した製造品(工業製品や機械、電気製品、輸送機器など)の金額がどれほど増減したかを示す経済指標である。IMFの統計では、CIFベース(保険料・運賃込み)で計上され、グローバルな供給網、為替変動、設備投資、インフラ整備の進展などの影響を強く受ける。
2025年の製造品輸入変化率の世界的な状況
2025年の世界全体の製造品輸入の変化率は+1.305%。この数字は輸入の拡大傾向が続いてはいるが、前年比では-48.72%と急減速しており、明確に「反動減」局面に入っていることが読み取れる。
高い変化率を示す国の例:
国名 | 変化率(2025年) | 前年比の増減 |
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スリナム | +76.14% | +229.2% |
ブータン | +44.18% | -347.8% |
パプアニューギニア | +34.91% | -309.7% |
ギニア | +18.78% | -63.4% |
モザンビーク | +18.45% | -331.7% |
ジブチ | +16.72% | +373% |
ニジェール | +16.27% | +97.42% |
エジプト | +16.21% | +105.2% |
マリ | +14.05% | +1086% |
ブルンジ | +13.65% | -749.1% |
これらの国々に共通するのは:
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経済規模が小さく、輸入総額が変動しやすい
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1時的な大型インフラ・機械投資の影響を受けやすい
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外貨・援助依存型であるため、外的条件で数字が激変
過去の製造品輸入変化率の推移と背景
1980〜2000年代前半
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グローバル化の進展とともに製造品貿易は拡大傾向
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WTO加盟国増加やアジアの台頭により、輸入も急増
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1方で90年代後半のアジア通貨危機、2001年のドットコムバブル崩壊は輸入急減をもたらす
2008年リーマンショック以降
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世界中で製造品輸入は1時的に激減
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各国で金融緩和と輸出依存型経済への転換が進む中、2010年代中頃には回復基調へ
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中国の1帯1路政策などが重機や建設設備の輸入を押し上げた国も多い
2020年代(コロナ以降)
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2020年:グローバルなサプライチェーン寸断で製造品輸入は大きく落ち込む
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2021〜22年:V字回復で1部の国では+30〜50%の変化率を記録
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2024年:回復の1巡と金利上昇による抑制的効果
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2025年:変化率は落ち着きつつも、まだ小国を中心に局所的な変動が見られる
高変化率国の事情と分析
スリナム、ブータン、パプアニューギニアなどの高成長は、構造的な輸入増とは言い難く、以下のような1時的・外部依存型要因が多い。
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インフラ建設や工場導入による大型機器の輸入
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国際機関や外国からの無償援助、円借款による調達
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天然資源開発による産業用設備の1括輸入
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前年度の低水準からの反発増(ベース効果)
例えばマリの+1086%などは、前年度にほぼゼロに近い状態からの急増と考えられ、統計上のブレが大きいと見なすべきである。
変化率低下の意味と背景
世界全体の変化率が前年よりほぼ半減(-48.72%)しているのは、以下の要因が複合している:
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金利の上昇による設備投資の抑制
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在庫調整の進展(特に半導体や電子部品)
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製造品の内製化志向(中国、インド、米国など)
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為替の不安定さが輸入コストに影響
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世界経済の減速(IMF見通しでは成長率鈍化)
これは必ずしも「不景気」を意味するのではなく、過熱した輸入の正常化、あるいは内製回帰の進行と見ることもできる。
今後の製造品輸入変化率の展望
短期的(2025〜2026):
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世界的な金融緩和が進めば、製造業向け設備輸入が再び上向く可能性
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1方で、ウクライナ情勢や台湾問題など地政学リスクが続けば、輸送コストや保険料が上昇し、実質的な輸入制限となる可能性あり
中長期的(2030年頃まで):
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グリーン経済へのシフトで、再生可能エネルギー関連機器の輸入増加
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デジタルインフラ投資(クラウド、5G、AI機器)による高付加価値品の輸入増
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内製化・経済安全保障志向の高まりにより、製造品輸入は「選別化」される可能性(重要品目は国内生産へ)
まとめ
製造品輸入の変化率は、世界経済の構造変化、地政学、金融政策、技術革新、そして経済安全保障の影響を総合的に受ける指標である。2025年は成長の減速が明確に見られるが、それは単なる需要の減少ではなく、供給構造と貿易構造の再編が進んでいる兆候でもある。
スリナムやブータンのような高変動国のデータは特異値として注意深く扱い、大局的には「持続可能な、安定的な輸入拡大」こそが経済成長の鍵であるといえる。政策立案や企業戦略においても、輸入依存リスクの把握と適切な分散投資が今後ますます求められていくだろう。
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