2025年5月の中部・北越の家賃相場は平均4,029円。名古屋や静岡が高水準を維持する一方、富山や岐阜、長野では上昇傾向が見られ、地方都市間での差が拡大。再開発や交通整備が進む都市が堅調に推移し、停滞する都市との差が鮮明になっている。
1カ月1坪当り都市別の家賃相場
都市 | 最新値[円] | 前年同月比[%] | |
---|---|---|---|
平均 | 4026 | -0.619 | |
1 | 名古屋 | 5194 | -0.821 |
2 | 静岡 | 4617 | |
3 | 甲府 | 4189 | +0.988 |
4 | 松本 | 4186 | +0.12 |
5 | 長岡 | 4173 | -0.996 |
6 | 新潟 | 3953 | -0.177 |
7 | 福井 | 3903 | -0.838 |
8 | 富山 | 3890 | +0.908 |
9 | 長野 | 3886 | +0.232 |
10 | 岐阜 | 3815 | +0.289 |
11 | 金沢 | 3786 | +0.987 |
12 | 浜松 | 3682 | -0.217 |
13 | 富士 | 3675 | +0.273 |
14 | 豊橋 | 3415 |

詳細なデータとグラフ
中部・北越の家賃現状と今後
中部・北越地方は、日本の内陸から日本海沿岸に広がる広域圏で、名古屋のような大都市から、歴史ある地方都市まで多様な都市が存在します。2025年5月時点の平均家賃は1坪あたり4,029円と、全国平均よりやや低水準。地域の人口動態、都市開発、交通利便性が家賃に大きく影響しています。ここでは都市ごとの推移と傾向を見ていきます。
名古屋市 ― 中部経済圏の中心にして伸び悩む拠点
名古屋市(5,197円)は、中部地方で最も高い家賃水準を維持していますが、前年比-0.764%とやや明確な減少傾向にあります。かつてはトヨタ関連を中心とした雇用吸収力と都市圏人口の増加に支えられていましたが、近年は郊外移転や再開発エリアの供給増で家賃が調整局面にあるとみられます。大都市圏でありながら地価・家賃が安定しやすい名古屋特有の性質が出ているといえるでしょう。
静岡市 ― 安定感のある地方中核都市
静岡市(4,615円)は、中部では名古屋に次ぐ高水準ながら、前年比-0.0433%とほぼ横ばい。東西の鉄道・道路交通網に支えられた中核都市で、住宅市場は供給過多でも不足でもない「均衡状態」と言えます。災害リスクの低さや、温暖な気候など居住面での安定性が評価され、今後も急激な変動は少ないと見られます。
松本市 ― 地域魅力に支えられた堅調推移
松本市(4,186円)は、北アルプスの玄関口として自然と都市機能が両立する地方都市。前年比+0.0717%とわずかに上昇しており、観光や移住需要が下支えしていると推測されます。教育・医療施設が整い、かつての中心商業地から定住志向の高まりへと変化するなかで、住宅需要は安定しています。
長岡市・甲府市 ― 地方都市の明暗
長岡市(4,172円)と甲府市(4,172円)は同じ家賃水準ながら、長岡は前年比-1.231%と明確な下落、甲府は+0.579%と堅調です。長岡は新潟市との距離や高齢化の影響で居住需要が減少傾向。1方で甲府は東京圏からの移住者の受け皿としての役割を徐々に拡大しており、温暖で交通の便も良いことから、定住ニーズが支えになっています。
新潟市 ― 地方中枢都市の慎重な回復
新潟市(3,979円)は北越の中核でありながら、家賃水準は全国平均よりもやや低め。前年比+0.227%と微増であり、過去の減少傾向から緩やかな回復軌道にあると見られます。都市部での再開発や若年層の回帰がわずかに進んでいるものの、人口減少トレンドが全体の家賃水準を抑える要因となっています。
福井市・富山市 ― 対照的な動き
福井市(3,902円)は前年比-0.964%と下落傾向。1方で富山市(3,880円)は+1.305%と最も高い伸び率を記録しています。福井では都市再生の動きが鈍く、地元就職志向の若年層も地価・家賃の伸びを支えるほどではないのが実情。富山はLRT整備など交通インフラの進展やコンパクトシティ構想が都市の魅力を押し上げている要因と考えられます。
長野市・岐阜市 ― 郊外志向と生活のしやすさが鍵
長野市(3,889円)は前年比+0.413%と回復傾向。自然環境と都市機能の両立により、リモートワークとの親和性が評価されています。岐阜市(3,850円)も+0.812%と堅調な伸びで、名古屋圏のベッドタウンとしての役割が安定しています。両市とも「都市としての機能性」よりも「暮らしやすさ」を前面に出した都市戦略が奏功しているといえます。
総括 ― 地方都市の2極化と新たな住宅ニーズ
中部・北越の家賃動向から見えるのは、人口減少や都市縮小が進む中で、回復力のある地方都市と停滞する都市の2極化です。都市整備や交通インフラに積極的な都市は家賃も上昇傾向にあり、1方で旧市街中心の都市では需要減に伴い家賃が低下傾向。今後は「暮らしの質」や「多拠点生活」といった価値観の変化が地方都市の家賃を左右する時代となっていくでしょう。
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