魚肉練製品の家計支出と地域差:二人以上世帯の最新傾向と今後の展望

食料



2008年から2025年3月までの家計調査によると、魚肉練製品の全国平均支出は732.9円。長崎市や鳥取市では1000円超と高水準で、奈良市や富山市も上位に。対して那覇市や大分市、水戸市などでは支出が少なく、地域差が顕著。世代交代や食生活の変化、価格上昇や健康志向の影響が見られ、今後は高齢層のニーズと若年層の離脱という二極化が進む可能性がある。

魚肉練製品の家計調査結果

魚肉練製品の多い都市

2025年3月 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
名称 平均 長崎市 鳥取市 奈良市 富山市 高松市 徳島市 津市 佐賀市 仙台市 松山市
最新値[円] 732.9 1124 1057 969 965 941 893 874 872 867 826
前年月同比[%] +1.718 +22.98 +32.13 +35.9 +25.65 -2.183 -4.185 +25.39 +27.11 +2.361 -3.279

魚肉練製品の少ない都市

2025年3月 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
名称 平均 那覇市 大分市 水戸市 秋田市 盛岡市 北九州市 浜松市 前橋市 金沢市 新潟市
最新値[円] 732.9 485 586 591 593 610 614 617 634 640 641
前年月同比[%] +1.718 -8.835 -4.405 -7.8 +5.516 -10.29 -17.47 -38.55 +14.03 -14.67 -10.72

 

これまでの魚肉練製品の推移

魚肉練製品の推移
最新のデータ

 

詳細なデータとグラフ

 

魚肉練製品の魚介類現状と今後

魚肉練製品とは、魚のすり身を主原料とし、加熱や揚げを経て加工される食品群で、代表的なものにかまぼこ、ちくわ、はんぺん、さつま揚げなどがある。日本の伝統的な食卓や弁当、おでんなどに多用され、長らく安価で栄養価もある家庭の味として親しまれてきた。しかし近年は、原料の価格高騰や嗜好の変化により、消費の二極化が進行している。


2008年以降の魚肉練製品支出の動向と背景

2008年からの家計調査データによれば、魚肉練製品の支出額は緩やかに推移していたが、2020年前後のコロナ禍を境に変化が見られた。内食需要の高まりで一時的に需要が回復したものの、原材料価格やエネルギーコストの上昇による製品価格の上昇が続き、近年は価格に敏感な若年世代の消費離れが進行している。一方で、調理不要で保存性も高いという特性から、高齢者世帯を中心に一定の需要を維持している。


地域別に見る消費傾向の差──西高東低と郷土料理の影響

2025年3月時点のデータでは、1世帯当たりの支出が高い都市は、長崎市(1124円)、鳥取市(1057円)、奈良市(969円)などであり、特に西日本に集中している。これらの地域では、さつま揚げや揚げかまぼこなど地元の伝統的な練製品文化が根強く、地域ごとに多様な料理法が存在していることが背景にある。

一方で、支出の少ない都市には那覇市(485円)、大分市(586円)、水戸市(591円)などがあり、特に沖縄地方では魚肉練製品の食文化自体が薄く、別の食材文化が主流であることがうかがえる。また、浜松市や北九州市なども支出減が顕著で、従来の練製品文化が衰退しつつある都市のひとつといえる。


世代間での意識差──高齢者と若年層の距離

練製品の消費は高齢層を中心に支えられている。おでんや煮物といった調理に練製品を使う文化が生活に根付いているためだ。一方、若年層は加工食品に対して「添加物が多い」「健康に悪い」というイメージを抱きやすく、代替として鶏肉や豆製品などを選ぶ傾向にある。また、共働き家庭の増加で調理時間が短縮されるなかで、味付け済の惣菜類への需要はあるものの、あえて練製品を選ばないケースも多い。


価格上昇と品質のせめぎ合い

2020年代に入り、魚肉練製品の原材料であるスケソウダラなどの輸入価格が高騰。加えて、燃料費・人件費の上昇が製造コストに転嫁され、価格が上がった。高価格化により「手軽で安い食品」という印象が薄れ、量を減らす「実質値上げ」に不満を感じる消費者も増加している。一方、品質重視型として「高級かまぼこ」など付加価値のある商品も登場し、贈答用や観光需要に対応している。


今後の推移予測と課題

二極化の深化

今後も、消費の二極化が進むと予測される。一つは、高齢者層による安定した日常消費。もう一つは若者層からの距離であり、魚肉練製品を積極的に選ばない家庭が増加することによる縮小リスクである。

地域再発見とブランド化の可能性

練製品は地域性が強い食品でもあり、各地の特色ある練製品(長崎の「ハトシ」、富山の「昆布巻きかまぼこ」など)をブランド化し、観光やふるさと納税を通じて新しい価値を提供できる余地がある。

健康志向対応とイメージ転換

現代の健康志向に対応するには、減塩・無添加商品や、魚由来のたんぱく質を前面に押し出した商品が鍵になる。また、SNSなどを活用して、若年層に向けたレシピや時短メニューとの親和性を訴求することで、新たな需要創出も可能だ。


結語:魚肉練製品の未来は「守り」と「攻め」の両立にあり

練製品は長らく日本の庶民の味として親しまれてきたが、今後は高齢者層に支えられる「守り」の消費と、若者層へのイメージ転換を目指す「攻め」のマーケティングの両立が重要になる。価格と品質、地域性と全国展開のバランスを取りながら、魚肉練製品は新しい価値へと進化する時期に差し掛かっている。

 

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