2025年3月の家計調査によると、二人以上世帯の加工肉支出の全国平均は1,466円。山形市が最も高く1,978円、高知市が最も低く1,021円。東日本の都市で支出が高く、西日本では低い傾向がみられる。増減率も地域差が大きく、消費スタイルや物価、世代構成の違いが影響している。今後は健康志向や価格変動、高齢化などが支出動向に影響を与えると見られ、地域特性を踏まえた食品政策の必要性が高まっている。
加工肉の家計調査結果
加工肉の多い都市
2025年3月 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | |
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名称 | 平均 | 山形市 | 青森市 | 新潟市 | 富山市 | 福井市 | 秋田市 | 川崎市 | 横浜市 | 札幌市 | 千葉市 |
最新値[円] | 1466 | 1978 | 1836 | 1799 | 1665 | 1649 | 1640 | 1635 | 1631 | 1609 | 1601 |
前年月同比[%] | -0.552 | -0.503 | +4.141 | +7.339 | +2.714 | +1.665 | +11.26 | +11.22 | -5.504 | -7.688 | +11.49 |
加工肉の少ない都市
2025年3月 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | |
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名称 | 平均 | 高知市 | 鹿児島市 | 堺市 | 岡山市 | 佐賀市 | 高松市 | 金沢市 | 和歌山市 | 徳島市 | 前橋市 |
最新値[円] | 1466 | 1021 | 1150 | 1169 | 1191 | 1231 | 1233 | 1239 | 1256 | 1273 | 1293 |
前年月同比[%] | -0.552 | -14.42 | +3.697 | -21.75 | +4.199 | -2.146 | +6.661 | -20.93 | -4.122 | -5.212 | -7.179 |
これまでの加工肉の推移


詳細なデータとグラフ
加工肉の肉類現状と今後
2025年3月時点の家計調査によれば、二人以上世帯における加工肉の平均支出は月額1,466円。これはハム、ソーセージ、ベーコン、ウィンナーなどの冷蔵保存可能な肉製品を対象としている。
都市別に見ると、山形市(1,978円)や青森市(1,836円)、新潟市(1,799円)など、主に東日本・日本海側の都市が上位を占めている。一方、高知市(1,021円)や鹿児島市(1,150円)など、四国・九州の都市圏では支出が少なく、地域による大きな開きが確認できる。
加工肉消費の特徴とその背景
加工肉は「手軽さ」「保存性」「安価さ」から、共働き世帯や子育て世帯を中心に高い需要がある。一方で、食塩や添加物への健康不安から、意識の高い家庭では購入を控える傾向も見られる。
これらの背景には以下の要素がある:
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調理の簡便性:弁当需要の高い地域では消費量が多くなる。
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生活習慣の違い:伝統的な和食中心の地域では、加工肉の存在感はやや小さい。
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気候要因:寒冷地では保存性の高さが重視され、加工肉が定番食品になりやすい。
そのため、青森・山形・新潟などの寒冷地で支出が高い傾向は、単に嗜好ではなく、地理的な必然性も影響していると考えられる。
支出増減率にみる都市ごとの変化と問題点
前年同期比では、千葉市(+11.49%)や秋田市(+11.26%)、川崎市(+11.22%)などが大きく伸びた一方で、堺市(-21.75%)や金沢市(-20.93%)など、急激に減少した都市もある。
これらの背景には以下の要因が影響していると見られる:
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物価上昇と節約志向:食品全体の価格高騰により、やや割高な加工肉を敬遠する動き。
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地元企業の販促や供給体制:地元スーパーやメーカーのキャンペーンによって、支出が一時的に増減する。
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世代交代と食習慣の変化:高齢世帯比率が増える地域では、加工肉のような脂質・塩分の多い食品が避けられる傾向にある。
とくに堺市や金沢市の急減は注目すべきであり、今後の消費構造の変化を示唆するものとして重要である。
世代間の違いと支出スタイル
加工肉の需要は、子育て世帯や中高年層と後期高齢者層で大きく異なる。
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子育て世帯・中高年層:弁当・朝食用途に加工肉を多用。節約と手間軽減を優先し、まとめ買いする傾向も強い。
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高齢者世帯:高血圧や糖尿病を背景に、食塩量を抑えた調理を志向するため、加工肉の頻度は減少。代替として豆腐や魚が重視されることも。
また、一人暮らし高齢者が多い都市では消費量が減る傾向があり、家族単位での食卓を囲む文化がある地域ほど加工肉の支出は高くなると推測できる。
今後の加工肉支出の予測と政策的課題
今後、加工肉支出は以下の2極化シナリオに分かれて進む可能性がある。
●シナリオA:健康志向による減少
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WHOの加工肉と発がんリスクに関する報告以降、健康志向の強まりが支出を押し下げる。
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地方都市では高齢化が進み、消費が抑制される傾向に。
●シナリオB:簡便食品としての需要維持
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忙しい共働き世帯や子育て世代では引き続き需要が根強い。
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コンビニや冷凍食品市場との融合で新商品が増え、支出が維持・回復する可能性もある。
●政策的なポイント
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地方自治体や学校給食での減塩対応加工肉の導入促進
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高齢者へのたんぱく質摂取支援における「健康加工肉」の推進
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加工肉業界に対する価格転嫁対策や流通支援
まとめ:地域文化と生活構造を映す「加工肉支出」
加工肉の支出傾向は、単なる「肉」の話ではない。地域の食文化、気候、家族構成、健康意識など、多様な要素を反映した生活の縮図である。今後の加工肉支出は、健康と効率の間で揺れる日本の家庭像を映し出す鏡として、さらに重要な分析対象となるだろう。
また、こうした地域間差を踏まえた商品開発や地域マーケティング、そして公共政策の設計が求められる時代になっている。
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