「他の光熱」支出の地域差と傾向:勤労世帯に見る都市間格差の実態

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家計調査によれば、勤労世帯の「他の光熱」支出は地域間で大きな差があり、特に寒冷地で高額となっています。全国平均は1817円に対し、青森市は12020円、鹿児島市は167円と開きが大きく、寒冷地の暖房に起因する固形燃料や灯油使用が主因です。世代や都市構造、ライフスタイルの違いも影響し、将来的には高齢化と省エネ技術の普及により格差の変化が予測されます。

他の光熱の家計調査結果

他の光熱の多い都市

2025年3月 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
名称 全国 青森市 札幌市 秋田市 富山市 新潟市 長野市 福島市 金沢市 福井市 盛岡市
最新値[円] 1817 12020 9431 6150 4376 4077 3630 3257 2775 2620 2518
前年月同比[%] +8.672 -7.324 +29.56 -3.195 -10.57 +211 -18.96 +5.268 +50.73 +13.27 -55.09

他の光熱の少ない都市

2025年3月 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
名称 全国 鹿児島市 大阪市 長崎市 静岡市 名古屋市 北九州市 高知市 堺市 大分市 川崎市
最新値[円] 1817 167 172 221 248 254 255 296 315 336 350
前年月同比[%] +8.672 -51.59 +29.32 +0.913 -61.13 -38.5 -75.62 -34.22 +99.37 -30 -36.59

 

これまでの他の光熱の推移

他の光熱の推移
最新のデータ

 

詳細なデータとグラフ

 

他の光熱の現状と今後

「他の光熱」とは、電気・ガス・水道以外のエネルギー支出を指し、主に灯油・薪・炭・ペレット燃料などが該当します。とりわけ寒冷地では、冬季における暖房用途で灯油や薪ストーブが使われるため、この支出項目は季節的・地域的な偏りが極めて大きいのが特徴です。


長期的な推移 ― 2000年からの変遷

2000年代初頭は、灯油や薪を用いた暖房が広く残っており、特に北海道や東北地方では「他の光熱」の支出が高水準で推移していました。その後、都市ガスや電気暖房の普及、省エネ住宅の進展などにより一部地域では減少傾向を見せましたが、寒冷地では依然として高止まりしています。

例として、2025年3月時点での全国平均が1817円であるのに対し、青森市は12020円、札幌市は9431円と突出しています。これは都市ガス供給の不便さ、灯油ストーブへの依存度の高さを反映しています。


都市間の違い ― 寒冷地と温暖地の格差

都市別データでは、寒冷地での「他の光熱」支出が圧倒的に高く、特に青森市・札幌市・秋田市は毎月5000円以上の差があります。これは住宅の断熱性能、エネルギーインフラ、地域気候、さらには暖房機器の文化的選択(エアコンvsストーブ)にも関係しています。

一方、鹿児島市や大阪市など温暖な都市では、暖房の必要性が少なく、支出は100~300円台と極めて少額です。


世代間の特徴と消費スタイル

高齢世帯では伝統的な灯油ストーブを使い続ける傾向があり、そのため「他の光熱」支出が高めになっています。一方、若年世帯ではエアコン暖房への切り替えやスマート家電の導入、省エネ意識の高まりなどから、「他の光熱」を使わない世帯も増加傾向です。

また、マンション暮らしの若年世帯では灯油や薪の使用自体が物理的に難しいことも大きな要因となっています。


問題点 ― エネルギーインフラの地域格差

「他の光熱」支出の高さは、単に気候だけでなく、インフラ未整備選択肢の少なさが影響しています。特に中山間地域では、都市ガスの供給がなく、灯油を頼るしかないという現実があります。加えて、灯油価格の高騰や流通の不安定さが家計を直撃することもあります。

また、温暖化対策の観点からも固形燃料の使用は批判的に見られ始めており、政策的な誘導が求められています。


将来予測と政策的課題

今後、「他の光熱」は以下のような要素で変化が予測されます:

  • 高齢化社会の進行:灯油需要は根強く残る可能性がある

  • エネルギー転換の進展:再エネ・電化の促進により支出の絶対額は低下する可能性

  • 都市間格差の是正政策:寒冷地向けの補助金や省エネ住宅支援策が鍵

また、技術革新によるスマート暖房断熱改修の拡充により、特に灯油や薪の需要は減少していくことが予測されます。


まとめ:エネルギー支出から見える地域社会の課題

「他の光熱」の支出は、単なる家計の問題にとどまらず、インフラ整備、気候適応、世帯構造、文化的背景と密接に絡み合っています。寒冷地における「生きるための支出」としての光熱費は、都市部との公平性の視点からも改めて議論されるべきです。

今後は、支出格差の是正だけでなく、低炭素型の暖房への移行支援高齢世帯への配慮が必要不可欠となっていくでしょう。

 

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