自転車購入費の都市間格差と世代別傾向──家計調査から見る今後の動き

交通費



家計調査によると、2025年3月時点での全国平均の自転車購入費は603円と低水準ながらも、高松市や名古屋市など一部都市では高額となっています。一方、佐賀市や北九州市などでは購入ゼロが記録されています。本稿では、2008年以降の動向、都市間や世代間の特徴、環境要因と政策の影響を踏まえ、自転車需要の今後の推移について詳述します。

自転車購入の家計調査結果

自転車購入の多い都市

2025年3月 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
名称 全国 高松市 名古屋市 松山市 松江市 堺市 東京都区部 水戸市 千葉市 鳥取市 高知市
最新値[円] 603 5425 2979 2717 2380 2023 1660 1573 1556 1542 1523
前年月同比[%] -0.331 +225.6 +49.15 +223.7

自転車購入の少ない都市

2025年3月 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
名称 全国 京都市 佐賀市 前橋市 北九州市 和歌山市 大分市 奈良市 富山市 山口市 山形市
最新値[円] 603 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0
前年月同比[%] -0.331 -100 -100 -100 -100 -100 -100

 

これまでの自転車購入の推移

自転車購入の推移
最新のデータ

 

詳細なデータとグラフ

 

自転車購入の現状と今後

自転車購入に関する家計調査データを2008年から追ってみると、全国的に見ると一貫して低水準が続いています。特に都市部では、シェアサイクルの普及や電動自転車の高額化によって「購入」そのものの頻度が下がってきました。一方、地方や政令市では一定の年ごとの波があり、子育て世帯の多い都市で上昇する傾向も見られました。

2025年時点の最新動向と都市別格差

2025年3月時点での自転車購入費の全国平均は603円と低水準ながらも、

  • 高松市:5425円(+225.6%)

  • 名古屋市:2979円

  • 松山市:2717円

  • 東京都区部:1660円(+49.15%)といったように、上位都市では大きく突出しています。これはおそらく、地域の交通インフラ(例:公共交通の脆弱さ)や、自転車に依存する通勤・通学のスタイル、あるいは地域特有のキャンペーン(助成金など)により需要が喚起されたことが影響していると推測されます。

一方、佐賀市・前橋市・北九州市・和歌山市・富山市・山形市では前年同期からの購入実績がゼロ(-100%)という極端な数字が出ています。これは一時的なサンプル不足、または過去に自転車の更新需要が集中して発生した反動減と考えられます。

世代間の特徴と購買傾向

若年層ではスポーツバイクや電動アシスト付き自転車への関心が高く、価格も高額になる傾向にありますが、実際には購入頻度は低く、レンタルや中古市場に依存しているケースが目立ちます。

中高年層では健康志向から自転車利用が見直される一方で、購入には慎重な姿勢が続いています。また、高齢者層は安全性の問題から自転車自体を控える傾向が強まっています。

自転車需要に影響を与える要因

  • 都市構造の違い:公共交通の充実度、道路インフラ、坂の有無などが自転車依存度に大きく影響

  • 環境政策・助成制度:自転車購入補助やシェアサイクル導入による需要の分散

  • コロナ禍の影響:感染リスク回避のための自転車通勤ブーム(2020〜2021年)も一時的な購入増に寄与

今後の予測と課題

今後の自転車購入費の動向としては、以下のような展望が考えられます:

  • 地方都市での再伸長:公共交通に代わる移動手段としての自転車需要が引き続き強い

  • 都市部では横ばい〜減少:購入よりも「利用」(シェア)にシフト

  • 電動自転車の普及拡大:高額なため購入回数は減るが、1回あたりの支出は増加

  • 中古市場の拡大と修理需要の増加:物価上昇の影響で新品購入が控えられる可能性

また、気候変動による異常気象や、高齢化社会における安全性問題なども、自転車の利用・購入に一定の制限をもたらすでしょう。


まとめ

自転車購入費は全国平均では低迷しているものの、都市ごとに大きな差が生じています。地方都市では自転車が生活に直結する「必需品」としての側面を持ち、購入頻度が高い傾向にあります。一方、大都市では購入よりも利便性重視の「サービス」利用が主流に移行しています。今後は都市の交通政策、環境意識、世代交代の影響を受けながら、購入形態や価格帯にも変化が生じることが予測されます。

 

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