2025年3月時点での家計調査によると、自動車等関係費の全国平均は月3.535万円。富山市や鳥取市では異常な高騰が見られる一方、横浜市や福岡市では低水準が続いている。地方と都市部、世代間での依存度の差、またEVシフトやガソリン価格、保険料などが費用に影響している。今後は高齢化や環境政策により利用構造の変化が予想される。
自動車等関係費の家計調査結果
自動車等関係費の多い都市
2025年3月 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | |
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名称 | 全国 | 富山市 | 鳥取市 | 千葉市 | 津市 | 名古屋市 | 甲府市 | 岡山市 | 岐阜市 | 金沢市 | 北九州市 |
最新値[万円] | 3.535 | 21.69 | 18.5 | 10.32 | 10.02 | 8.257 | 8.089 | 7.705 | 7.454 | 6.927 | 6.868 |
前年月同比[%] | +5.083 | +509.9 | +565.1 | +656.4 | +39.96 | +56.81 | +281.8 | +436.9 | +154 | +170.2 | +385.2 |
自動車等関係費の少ない都市
2025年3月 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | |
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名称 | 全国 | 横浜市 | 福岡市 | さいたま市 | 神戸市 | 札幌市 | 相模原市 | 宮崎市 | 京都市 | 那覇市 | 和歌山市 |
最新値[万円] | 3.535 | 1.025 | 1.141 | 1.214 | 1.321 | 1.424 | 1.461 | 1.591 | 1.661 | 1.692 | 1.73 |
前年月同比[%] | +5.083 | -37.84 | +1.224 | -24.56 | +21.53 | -2.905 | -2.267 | -76.56 | +6.405 | -2.044 | -44.85 |
これまでの自動車等関係費の推移


詳細なデータとグラフ
自動車等関係費の現状と今後
「自動車等関係費」とは、自動車の購入費、修理費、自動車保険料、車検費用、自動車税などを含む広範な費用項目を指します。交通費の中でも支出規模が大きく、地域や生活環境、世帯のライフステージによって大きく異なる傾向があります。
これまでの全国的な動向(2008〜2025年)
全国平均は3.535万円とされていますが、2008年からの動向を見ると、リーマンショック直後に一時的に支出が抑制された後、2010年代には緩やかな回復基調となり、2020年以降はコロナ禍の影響で一部地域で買い替え需要が発生。一方で、ガソリン高や部品価格の上昇、任意保険の値上げなどが関係費の押し上げ要因となりました。
都市間格差とその要因
高額都市の特徴
富山市(21.69万円)、鳥取市(18.5万円)、千葉市(10.32万円)などは突出しています。これらの都市は以下のような要因が重なっています。
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地方都市での自家用車依存:鉄道やバスなどの公共交通が脆弱なため、通勤・通学・買い物に車が不可欠。
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高齢世帯の増加による保険料上昇:高齢ドライバーの割合が高く、保険料が割高に。
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EVやHVの導入増加に伴う初期投資や保守費:環境意識の高まりで先行投資を行う世帯が多い。
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地元産業に自動車関連企業が多く、購買意欲が高い傾向
低額都市の特徴
横浜市(1.025万円)、福岡市(1.141万円)、さいたま市、神戸市などは支出が少なめです。
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都市インフラの充実:電車やバス網の発達で車が不要な生活が可能。
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シェアリング経済の浸透:カーシェア、レンタカーなどを利用する若年層が多い。
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若年単身者の割合が高い:自動車を保有しないライフスタイルが一般化。
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駐車場代や税負担の高さから車所有を避ける傾向
世代間の特徴
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団塊世代〜70代以上:車の所有が前提のライフスタイル。維持費はかかるが手放さない。
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30〜50代:子育てや通勤で車を活用。特に地方在住者は必須の移動手段。
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20代以下:車離れが顕著。都市部ではほとんど保有せず、カーシェアなどで代替。
このように、世代によって「車の意味」が変化しており、それが関係費にも表れています。
急増都市に共通する問題点
前年同期比で+500%を超える異常な上昇率を示す都市(富山市、鳥取市、千葉市など)では、以下のような現象が考えられます。
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過年度の異常値(前年が極端に低かった)との比較効果
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EV購入費の一括支出反映
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制度変更による補助金前倒し購入
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インフレ影響による部品や保険料の高騰
実質的な「家計への負担の増加」を意味するケースもあれば、「一時的な高騰」のケースもあるため、経年の安定性を見る必要があります。
今後の推移と課題
予測
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地方部では今後も高止まり傾向:高齢者の自家用車依存は続く見込み。
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都市部では低水準を維持:公共交通依存+若年層の車離れ継続。
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ガソリン・電気料金次第で変動:燃料費や電気代が影響を与える。
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車のサブスクリプション普及:所有から利用への転換が進行すれば、関係費も変動する。
課題
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高齢者の運転リスクと保険料の相関
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都市部と地方部のモビリティ格差拡大
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環境対策(EVシフト)と家計負担の両立
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自治体による交通政策の格差とその影響
政策提言と家計対策
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地方自治体による交通インフラ整備の必要性
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高齢者向け移動支援サービスの拡充
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カーシェア・サブスク制度の地方展開促進
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EV購入時の支援金制度の再設計
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自動車保険の見直し・ポイント還元制度の導入
おわりに
自動車等関係費は、単なる「支出」の問題ではなく、地域社会の構造や移動の自由度、世代間の価値観の違いを反映する複雑な項目です。今後は、環境と生活の両立を目指した柔軟な交通政策と、家計負担の最適化が同時に求められるでしょう。
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