二人以上世帯の電気代は気候や生活スタイルにより地域差が大きく、寒冷地では電気暖房需要により高額傾向。近年は燃料価格高騰などで全国的に上昇傾向にあり、今後も省エネ設備導入や支援制度による対応が求められる。
電気代の家計調査結果
電気代の多い都市
2025年3月 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | |
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名称 | 全国 | 山形市 | 富山市 | 金沢市 | 福井市 | 鳥取市 | 松江市 | 福島市 | 山口市 | 広島市 | 青森市 |
最新値[万円] | 1.656 | 2.702 | 2.672 | 2.275 | 2.197 | 2.154 | 2.121 | 2.072 | 1.982 | 1.964 | 1.929 |
前年月同比[%] | +20.17 | +49.43 | +30.19 | +30.96 | +5.799 | +32.94 | +2.049 | +6.789 | +28.61 | +26.94 | +24.68 |
電気代の少ない都市
2025年3月 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | |
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名称 | 全国 | 那覇市 | 宮崎市 | 津市 | 大分市 | 北九州市 | さいたま市 | 長崎市 | 神戸市 | 熊本市 | 名古屋市 |
最新値[万円] | 1.656 | 1.028 | 1.198 | 1.245 | 1.289 | 1.339 | 1.339 | 1.359 | 1.363 | 1.377 | 1.38 |
前年月同比[%] | +20.17 | +25.49 | +39.31 | +19.86 | +11.29 | +31.22 | -15.89 | +57.7 | +27.16 | +35.14 | +17.21 |
これまでの電気代の推移


詳細なデータとグラフ
電気代の現状と今後
2008年から2025年までの家計調査データを通じて、日本の二人以上世帯の電気代は、燃料費調整制度や再エネ賦課金、為替レート変動などの影響を受けて変動を繰り返してきました。2025年3月時点の全国平均は1万6,560円であり、これは十数年前に比べ明らかに上昇傾向にあります。
特に、ロシア・ウクライナ戦争や円安によってLNG(液化天然ガス)などの燃料輸入価格が高騰した2022年以降は、電気料金の全国的な値上げが続き、消費者負担が急激に増しています。
都市間における電気代の格差とその背景
地域別の電気代を比較すると、最も高額な山形市(27,020円)と、最も低額な那覇市(10,280円)では月額で約1.7倍もの差が出ています。これには複数の要因が関係しています。
寒冷地の高騰理由:
山形市、富山市、金沢市、福井市、鳥取市など日本海側の都市に共通するのは、寒冷な気候と電気暖房の使用頻度の高さです。特に近年では、灯油やガスより安全で操作しやすいエアコンやパネルヒーターを使う家庭が増えた結果、冬季の電気使用量が膨らんでいます。また、積雪による日照不足で太陽光発電の恩恵を受けにくい点も、電力依存の強さに繋がっています。
温暖地の電気代の低さ:
那覇市、宮崎市、大分市など南部の都市では、冬の暖房需要が小さく、電力消費が夏の冷房期に集中します。さらに、那覇市は台風被害のリスクはあるものの、通年での温度変動が小さいため、エネルギー消費の平均水準が低く抑えられています。
前年からの増加率と異常値の考察
増加率では、山形市(+49.43%)、鳥取市(+32.94%)、長崎市(+57.7%)などの数字が目を引きます。これらは以下の要素が絡み合った結果と考えられます:
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冬季の寒波到来による電力使用量の激増
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電力会社の燃料費調整制度による反映タイミング
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一部自治体での補助金終了や電力会社の値上げ認可
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オール電化住宅の普及(とくに中・北部地方)
一方で、さいたま市では前年から電気代が-15.89%と大きく減少。これは家庭向けの電力自由化で安価なプランに切り替えた世帯が多いことや、暖冬の影響、省エネ型家電の普及が進んだことも背景にあるとみられます。
世代間で異なる電気使用の特徴
電気代は単なる気候要因だけでなく、世帯構成とライフスタイルにも大きく左右されます。
高齢世帯の特徴:
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日中も在宅率が高く、冷暖房・照明・テレビの稼働時間が長い
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省エネ家電の導入が遅れている傾向
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オール電化住宅で給湯や調理も電気依存が高い
働き世代・子育て世帯の特徴:
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外出時間が長く在宅時間が短いため電気使用が少なめ
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節電意識が高く、スマート家電やIoTで電力使用をコントロール
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教育・育児の関係でエアコン使用は季節的に集中する傾向
このように、高齢化が進む地域ほど、1世帯あたりの電気代は高止まりしやすいという構造的問題も浮かび上がっています。
今後の見通しと対策の方向性
電気代の先行きは依然として不透明ですが、以下の動きが今後の鍵となるでしょう。
増加要因:
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再エネ賦課金やインフラ更新による基本料金の上昇
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高齢化と単身高齢世帯の増加による電力依存度アップ
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猛暑・寒波の頻発による空調負荷の増加
抑制策と期待される取り組み:
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高断熱住宅の普及促進
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スマートメーターや蓄電池の活用による需給調整
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自治体によるエネルギー支援金の恒常化
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地域新電力による低料金の供給
また、消費者としても「見える化」による電気使用量の把握と、契約プランの見直し、家電の買い替えなど、小さな工夫が家計全体に大きな差をもたらす時代となっています。
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