家計調査に基づく最新データでは、世帯主の全国平均年齢は60.6歳に達し、長崎市や神戸市では65歳を超える一方で、高知市や松山市などでは50代半ばに留まっている。年齢上昇の背景には高齢化、定年延長、住宅購入時期の違いなどがある。都市部と地方、若年層転出入の差が年齢分布に大きく影響しており、今後も都市によって二極化が進む可能性が高い。家計構造や消費傾向にも大きな影響を与えるため、今後の都市政策や社会保障制度設計において重要な指標となる。
世帯主の年齢の家計調査結果
世帯主の年齢の多い都市
2025年3月 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | |
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名称 | 全国 | 長崎市 | 神戸市 | 奈良市 | 相模原市 | 横浜市 | 千葉市 | 水戸市 | 宮崎市 | 長野市 | 岐阜市 |
最新値[歳] | 60.6 | 65.5 | 65.5 | 64.3 | 63.3 | 63.1 | 63 | 62.9 | 62.9 | 62.7 | 62.7 |
前年月同比[%] | +1 | +5.816 | +1.55 | +2.552 | +8.02 | +2.769 | +3.789 | +8.262 | +0.319 | +3.125 | +2.619 |
世帯主の年齢の少ない都市
2025年3月 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | |
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名称 | 全国 | 高知市 | 松山市 | 山形市 | 鳥取市 | 川崎市 | 盛岡市 | 大分市 | 岡山市 | 鹿児島市 | 金沢市 |
最新値[歳] | 60.6 | 53.4 | 56.9 | 57.1 | 57.1 | 57.6 | 57.6 | 57.9 | 57.9 | 57.9 | 58.1 |
前年月同比[%] | +1 | -3.957 | -4.69 | -4.515 | -3.056 | +1.053 | -4.16 | +5.657 | -0.856 | -1.026 | +1.396 |
これまでの世帯主の年齢の推移


詳細なデータとグラフ
世帯主の年齢の現状と今後
日本の家計調査では、「二人以上の世帯」の世帯主の年齢が、経年で着実に上昇している。最新の2025年3月時点のデータでは、全国平均が60.6歳となり、もはや“高齢者が世帯の中心”であることが標準化している。本章では、都市間の年齢差の背景、世代交代の遅れ、また年齢構成が家計や経済行動に与える影響を、次章以降で深掘りしていく。
高齢世帯主の集中都市とその背景
長崎市と神戸市は65.5歳と、ほぼ後期高齢者の直前に達しており、他に奈良市(64.3歳)や横浜市(63.1歳)なども高齢化が顕著である。これらの都市の特徴には、以下のような要因が考えられる。
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住宅購入時期の集中:昭和期の団塊世代やバブル期に住宅を取得し、現在もその住居に住み続けている高齢層が多い。
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若年層の流出:地価や生活費の高さから、若年層が郊外や別地域に移住するケースが目立ち、相対的に高齢層が残る。
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高齢者向けインフラの充実:病院や公共交通が整っているため、リタイア後も移動せず住み続ける傾向がある。
若年世帯主が多い都市とその特徴
一方で、世帯主年齢が比較的若い都市として、高知市(53.4歳)、松山市(56.9歳)、山形市・鳥取市(57.1歳)などが挙げられる。ここには以下のような背景がある。
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地元就職と世代交代の早さ:都市部に比べて地元志向が強く、子世代が親の家を継いで早くから世帯主になる傾向。
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高齢層の施設移住や転出:都市部と異なり、医療や介護インフラが十分でないため、高齢者は都市部に転出することも。
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移住促進政策の効果:地域によってはUターン・Iターン支援策により、比較的若年層の移住が進んでいる。
増加率から見る構造変化の兆し
相模原市(+8.02%)や水戸市(+8.26%)のように急激に世帯主の年齢が上昇している都市がある一方で、松山市(-4.69%)や山形市(-4.515%)のように減少傾向を示す都市もある。
この増減には以下のような要因が関与していると考えられる:
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人口の自然移動と社会移動:都市部で若年層が離れる一方、地方では高齢層の自然減(死亡や施設転居)により平均年齢が下がる。
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共働きや世代継承による世帯交代:地方では若年層が実家で新たな世帯を築くケースもあり、平均年齢が相対的に若返る。
世帯主の年齢と家計の関係
世帯主の年齢が高まることで、以下のような家計構造の変化が生じている。
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消費支出の縮小傾向:高齢世帯は生活必需品以外の支出が少なく、消費刺激には限界がある。
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医療・介護支出の増大:高齢世帯では保健医療関係の支出比率が年々上昇している。
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住宅ローン完済後の資産保有層と無資産層の格差:退職後の生活基盤に大きな差が出る。
今後の推移と社会的課題
今後も世帯主の平均年齢は、60歳台前半を中心に推移することが予想されるが、都市間格差は拡大する可能性が高い。若年層の流入が進む都市は一部に留まり、少子高齢化の影響を受けやすい都市では、世帯主年齢が70歳に達する地域も出てくるだろう。
社会的には次の課題が浮かび上がる:
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高齢者中心の住宅政策とインフラ整備:高齢単身世帯への支援、バリアフリー住宅の整備が急務。
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若年層への家計移行支援:新たな世帯主層を育てるための雇用、住居支援が必要。
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自治体財政への影響:高齢化に伴う税収減と福祉支出増加が地域財政を圧迫する。
まとめ ― 世帯主年齢が映す日本の縮図
世帯主の年齢は単なる個人データではなく、都市の人口構造、家計の健全性、地域の将来像を映す重要な指標である。家計調査の推移を見ることで、日本社会の高齢化の深刻さや、世代交代の難しさが浮き彫りとなる。持続可能な社会を築くためには、この「年齢の地図」を読み解き、それぞれの地域に応じた政策設計が必要である。
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