2020年〜2025年の家計調査によると、賃貸住宅における1世帯当たりの平均畳数は全国で37.5畳。地方都市では広めの住居が目立ち、新潟市や徳島市では44畳を超える。一方、東京都区部など都市部では30畳前後にとどまり、都市間格差が顕著。世代や家族構成によっても広さの価値観に違いがあり、今後は利便性と広さを両立する住宅政策が求められる。
平均畳数(賃貸・借家)の家計調査結果
平均畳数(賃貸・借家)の多い都市
2025年3月 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | |
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名称 | 全国 | 新潟市 | 徳島市 | 山形市 | 川崎市 | 富山市 | 津市 | 長野市 | 宇都宮市 | 奈良市 | 山口市 |
最新値[畳] | 37.5 | 44.5 | 44 | 42.7 | 42.1 | 41.7 | 41 | 40.6 | 39.9 | 39.9 | 39.7 |
前年月同比[%] | +0.267 | +12.37 | +13.99 | +0.235 | +23.1 | +4.25 | +7.895 | -1.695 | +4.45 | +6.117 | +10.28 |
平均畳数(賃貸・借家)の少ない都市
2025年3月 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | |
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名称 | 全国 | 東京都区部 | 長崎市 | 相模原市 | 高知市 | 大阪市 | 北九州市 | 京都市 | さいたま市 | 千葉市 | 宮崎市 |
最新値[畳] | 37.5 | 31.1 | 32.2 | 32.6 | 32.7 | 33.3 | 34 | 34.7 | 34.8 | 34.8 | 35.1 |
前年月同比[%] | +0.267 | -4.308 | -14.81 | -6.052 | -2.388 | -3.198 | -7.357 | +6.442 | -8.421 | +19.59 | -0.284 |
これまでの平均畳数(賃貸・借家)の推移


詳細なデータとグラフ
平均畳数(賃貸・借家)の現状と今後
2020年11月から2025年3月までの家計調査のデータに基づくと、勤労世帯における「賃貸・借家」の全国平均の居住スペースは37.5畳である。これは、持ち家(住宅ローン有)の平均畳数と一致しており、かつて見られた「賃貸=狭い住まい」という固定観念に変化が生じつつあることを示唆している。
特に地方都市では、空き家や人口減少による需給の緩和から、比較的広い賃貸物件が手頃な価格で供給されている。新潟市(44.5畳)や徳島市(44畳)などはその典型である。反対に、大都市部では土地価格や建設コストの高さから依然として狭小住宅が多く、東京都区部では31.1畳に留まっている。
都市間格差が映し出す賃貸市場の構造
上記のように、平均畳数には都市間で大きな差がある。広さの上位にある都市はいずれも地方または中堅都市であり、比較的空間に余裕のある都市設計と低地価が背景にある。新潟市、徳島市、山形市、富山市、津市などはいずれも人口密度がそれほど高くないため、住宅1戸あたりの専有面積が確保されやすい。
一方で、下位に位置する都市は、東京都区部、大阪市、相模原市、北九州市など、人口集中が続く大都市圏や政令指定都市である。地価の高さ、建物の築年数、供給サイドの利益追求などにより、1戸あたりの面積を広げることが困難である。
世代間にみる広さへの価値観の違い
賃貸に住む世代ごとの特徴にも注目すべきである。若年単身世帯では「利便性」と「賃料の安さ」が優先され、都心の狭いワンルームが選ばれがちである。一方で、子育て世帯や地方の中高年世代では、広さと快適性を重視する傾向が強い。
とりわけコロナ禍以降、在宅勤務や自宅学習の需要が高まり、広い間取りの価値が再認識された。こうした流れが、徳島市(+13.99%)、新潟市(+12.37%)、川崎市(+23.1%)など、広さが顕著に増加した都市に表れている。
問題点―質の担保と賃料上昇圧力
広さの拡大が見られる一方で、質の担保は別問題である。例えば、築年数の古い広い物件では、断熱性・耐震性・設備面で課題が多い。また、最近のリノベーションブームにより、広さを確保しながらも設備の良い賃貸住宅は賃料が高騰する傾向にある。
さらに都市部では、高層タワーマンションなどによる容積率の活用が進むが、ファミリー向けであっても40畳を超える物件は稀である。よって、広さと質を両立させることは今後の課題である。
今後の予測と政策的な示唆
今後の動向としては、以下のようなシナリオが考えられる:
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地方都市では広さ志向が継続 空き家対策や移住促進策の一環で、広い賃貸住宅の整備が進む見込み。
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都市部では「狭くても快適」を追求 IoTや家具の工夫により、効率的な空間利用が重視され、狭いが暮らしやすい住宅が好まれる。
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世帯構成の多様化への対応 単身・DINKs・高齢者世帯向けに広さよりも機能性・立地を重視した物件供給が増加。
また、行政としては、住宅の最低基準面積やリノベーション支援、空き家活用などの政策を通じて、量・質・広さのバランスを取る施策が必要となる。
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