家計調査に見る世帯人員数の都市別格差と今後の動向分析

世帯・住宅



2025年3月時点で全国の勤労世帯の平均世帯人員数は3.2人。都市によって大きな差が見られ、最多は川崎市の3.72人、最少は甲府市の2.83人。大都市近郊や地方都市で家族人数が多い傾向がある一方、高齢化や単身世帯の増加が進む地域では世帯人員数が減少している。今後は共働き世帯・子育て世帯の集中と、人口減少地域での孤立世帯の増加という二極化がさらに顕著になると予測される。

世帯人員数の家計調査結果

世帯人員数の多い都市

2025年3月 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
名称 全国 川崎市 山形市 新潟市 松江市 鳥取市 堺市 松山市 鹿児島市 福岡市 相模原市
最新値[人] 3.2 3.72 3.69 3.61 3.56 3.55 3.55 3.49 3.47 3.44 3.43
前年月同比[%] -0.929 +20.39 -0.27 +16.83 +2.594 +1.14 +4.106 +11.5 +23.05 +8.517 +11

世帯人員数の少ない都市

2025年3月 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
名称 全国 甲府市 富山市 長野市 大津市 徳島市 宇都宮市 青森市 仙台市 宮崎市 水戸市
最新値[人] 3.2 2.83 2.84 2.84 2.97 2.97 3.01 3.01 3.02 3.03 3.04
前年月同比[%] -0.929 -11.84 -14.46 -3.729 -3.257 -4.808 -8.232 -5.938 -3.822 +4.124 -10.85

 

これまでの世帯人員数の推移

世帯人員数の推移
最新のデータ

 

詳細なデータとグラフ

 

世帯人員数の現状と今後

家計調査のデータによると、2025年3月時点で勤労世帯の全国平均の世帯人員数は3.2人である。これは長期的に見て減少傾向にある。2000年代初頭には3.5人以上が当たり前だった地域も多かったが、晩婚化や出生率の低下、単身世帯の増加といった社会的背景を受け、全国的に世帯の小規模化が進行している。

人員数の多い都市の特徴と背景

高い人員数を示した都市(例:川崎市、山形市、新潟市)

  • 川崎市(3.72人):全国平均を大きく上回り、特に前年からの増加率(+20.39%)が顕著である。東京のベッドタウンとしての性格が強く、子育て世帯や外国人労働者家族の流入が影響している可能性がある。

  • 新潟市、山形市、松江市など:地方都市であるが、世帯人員数は高め。これは、地元企業に勤める勤労世帯が実家や近隣に住むことで親子同居・多世代同居が多く、核家族化が進みにくい地域性があるためと考えられる。

  • 鹿児島市(3.47人、+23.05%):急増の背景には、都市部への移住に加え、出生数の回復や世帯の再統合など地域独自の動きもありうる。

人員数の少ない都市の傾向と要因

低い人員数を示した都市(例:甲府市、富山市、長野市)

  • 甲府市(2.83人、-11.84%)・富山市(2.84人、-14.46%):急激な減少が見られ、単身高齢者や夫婦のみの世帯が増加していることが原因と考えられる。

  • 宇都宮市・仙台市などの中核都市でも3.0人前後に落ち込んでおり、都市型ライフスタイル(共働き夫婦+子ども1人)の定着や、転勤による単身赴任も影響している。

  • 地方都市では若年層の都市部流出により残された高齢者世帯が多く、これが世帯人員数の減少を招いている。

世帯人員数と世代構造・地域文化の関係

  • 多世代同居が根強い地域(北陸・山陰など)では、依然として3人以上の世帯が中心だが、都市圏では核家族化と共働きの定着により、2~3人の世帯が主流となっている。

  • 地方の農業・自営業比率が高い地域ほど、家族での共同生活が必要とされるため、世帯人員数が維持されやすい。

  • 一方で、都市型の職業や教育事情によって世帯分離が進む地域では、一人暮らしやDINKs(子どもを持たない共働き夫婦)が目立つ。

今後の推移予測と政策的課題

二極化の進展

  • 今後のトレンドとしては、都市近郊の子育て世帯集中地域と、高齢化・過疎化が進む小規模世帯地域との二極化がより一層鮮明化すると予測される。

  • 地方においては、空き家増加や「老々世帯」の孤立が懸念される一方、都市圏では保育所・学校・住宅供給の整備が急務となる。

政策課題

  • 子育て支援や住宅政策のあり方を見直し、若年層が地方に定着できる施策が求められている。

  • また、単身高齢者の生活支援策や多世代居住促進の仕組み作りも、持続可能な地域づくりの鍵となる。

まとめ:世帯構造の変化は地域社会の縮図

勤労世帯の世帯人員数の変化は、人口動態、社会構造、就業形態、ライフスタイルの変化を如実に映し出す指標である。単に「人数が多い・少ない」ではなく、それぞれの都市が直面する課題や強みを読み解くことで、今後の社会政策や都市計画の方向性が明らかになる。世帯という「最小の社会単位」から、これからの日本のあり方を見つめ直す必要がある。

 

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