家計調査から見る世帯主の高齢化傾向と都市別・世代別の特徴分析

世帯・住宅



家計調査によると、2025年3月時点の世帯主の全国平均年齢は51.2歳で、都市ごとに大きな差が見られます。神戸市や富山市などでは55歳以上が平均となっており、都市部でも高齢化が進行。一方で、高知市や盛岡市などでは45〜48歳と比較的若年化傾向があります。背景には地域の雇用構造や転入出の差、若年層の定着力が影響しており、今後は地方と都市の二極化がさらに進む可能性があります。

世帯主の年齢の家計調査結果

世帯主の年齢の多い都市

2025年3月 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
名称 全国 神戸市 富山市 相模原市 津市 長野市 宇都宮市 奈良市 水戸市 福井市 佐賀市
最新値[歳] 51.2 56.4 54.6 54.4 54.2 53.7 53.6 53.2 53.1 52.9 52.9
前年月同比[%] +2.196 +8.88 +8.982 +12.16 +4.633 +2.677 +7.631 +10.63 -1.121 +8.402

世帯主の年齢の少ない都市

2025年3月 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
名称 全国 高知市 盛岡市 堺市 仙台市 大分市 鹿児島市 松江市 山形市 新潟市 北九州市
最新値[歳] 51.2 44.8 47.2 47.8 47.9 48 48.3 48.4 48.7 48.8 49.2
前年月同比[%] +2.196 -5.485 -4.839 -6.823 -1.844 -3.808 -5.479 +3.64 -4.322 -1.811 -4.28

 

これまでの世帯主の年齢の推移

世帯主の年齢の推移
最新のデータ

 

詳細なデータとグラフ

 

世帯主の年齢の現状と今後

世帯主の年齢は、消費行動・住宅取得・子育て支出・貯蓄行動など、家計のライフサイクルに大きく影響を与える指標であり、家計調査においては社会経済動向を読み解く鍵となります。2025年3月時点の全国平均は51.2歳。これは一見、平均的な中年世帯が主流であることを示しますが、都市ごとに詳細に見ると、実態はより複雑で多層的です。


全国的な動向:世帯主の高齢化とその背景

2000年以降、少子高齢化と非正規雇用の増加により、世帯主の年齢は年々上昇しています。就労年齢の上昇(定年延長や再雇用制度)も影響し、60歳前後まで現役として家計の中心を担う例が増えています。都市部では住宅ローンや教育費を抱えたまま高齢に差し掛かる世帯も多く、平均年齢の上昇にはこうした社会的要因が強く影響しています。


年齢の高い都市の特徴:定着型・地元中心の都市構造

年齢が高い都市の上位には、神戸市(56.4歳)、富山市(54.6歳)、相模原市(54.4歳)などが並びます。これらに共通するのは、以下のような要素です。

  • 地元定着率の高さ:大学進学や就職で都市部へ出ず、地元で家庭を持ち続けた世帯が多い。

  • 若者の流出と高齢者の残存:人口流出で若年層が減少し、高齢の世帯主が割合として増える。

  • 一戸建て比率の高さ:住宅の取得が早期に行われた世帯がそのまま年齢を重ねている。

また、富山市や津市では女性配偶者の有業率も高く、「共働き世帯の継続的な地域定着」が、高年齢化と同時に進んでいる点も興味深い傾向です。


年齢の低い都市の特徴:流動的・若年層集積型の都市

一方、年齢が低い都市には高知市(44.8歳)、盛岡市(47.2歳)、仙台市(47.9歳)などが並びます。

  • 大学や若者向けの雇用機会がある:地方中核都市として若年層の流入・定着がみられる。

  • 若年世帯の比率が高い:再開発や子育て支援政策によって、比較的若い家庭が多く居住。

  • 地域の転出入の活発さ:世代交代が速やかに進行し、結果として平均年齢が抑えられている。

特に高知市では前年から-5.485%と大きく年齢が若返っており、移住施策や地域内での若年層の定着が一定の成果を見せている可能性があります。


世代間の構造:中年層の厚さと若年層の希薄さ

全国平均51.2歳という数字は、「団塊ジュニア」世代を中心とした中高年層の厚みを反映しています。しかし、これには次のような課題も潜んでいます。

  • 若年層の家計形成の遅れ:非正規雇用や結婚の晩婚化によって、世帯主となる年齢が遅くなっている。

  • 親世代との同居・介護負担:高齢者を抱える世帯が増え、世帯主の高齢化が促進されている。

  • 世代間格差の固定化:40代以下の世帯の可処分所得や資産形成が追いつかず、家計の格差が拡大。


今後の見通し:二極化と地域政策の重要性

今後の推移として、以下のシナリオが考えられます。

  • 都市間の二極化:子育て支援・若者向け雇用のある都市では年齢若返りが進むが、他では高齢化が進行。

  • 再雇用・シニア就業の拡大:定年延長や年金支給開始年齢の後ろ倒しにより、60代の世帯主が主流になる可能性。

  • 地方の人口構成の固定化:移住政策の成否が年齢構造の今後を大きく左右する。

したがって、地域行政には「若年層の定着支援」と「高齢世帯向けの家計支援」の両面が求められます。


まとめ

家計調査の世帯主年齢の分析からは、日本社会が直面する「人口構造の変化」と「地域間格差」の実態が浮かび上がります。平均値だけでは見えない地域ごとの実情を丁寧に読み解くことで、今後の政策課題や住宅・労働市場への影響をより具体的に把握する必要があります。人口減少社会における“世帯の姿”は、今後ますます多様化していくでしょう。

 

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