世帯主の配偶者収入に見る都市別格差と今後の動向:家計調査から分析

世帯・住宅



2025年3月までの家計調査によれば、全国の勤労世帯における世帯主の配偶者の平均収入は8.982万円であるが、都市ごとに大きな差が見られる。山形市や広島市では高収入傾向が目立つ一方、神戸市や堺市では大きく低下している。女性の就労環境、地域の産業構造、育児支援策、世代交代などが影響していると考えられ、今後は都市間の「パート格差」がより顕著になる可能性もある。

世帯主の配偶者の収入の家計調査結果

世帯主の配偶者の収入の多い都市

2025年3月 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
名称 全国 山形市 徳島市 広島市 富山市 川崎市 松江市 新潟市 金沢市 高松市 鳥取市
最新値[万円] 8.982 19.4 17.33 16.05 14.26 13.62 13.6 13.57 12.26 12.1 11.84
前年月同比[%] -1.206 +67.3 +52.5 +76.91 +22.33 +19.86 +1.436 +15.35 -3.524 +36.82 +6.061

世帯主の配偶者の収入の少ない都市

2025年3月 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
名称 全国 神戸市 堺市 札幌市 横浜市 大阪市 奈良市 秋田市 那覇市 和歌山市 福岡市
最新値[万円] 8.982 5.767 6.087 6.487 6.68 7.033 7.096 7.248 7.478 7.524 7.761
前年月同比[%] -1.206 -18.93 -30.42 -1.578 -42.65 -13.96 +7.065 +12.92 +33.5 +271.9 +26.07

 

これまでの世帯主の配偶者の収入の推移

世帯主の配偶者の収入の推移
最新のデータ

 

詳細なデータとグラフ

 

世帯主の配偶者の収入の現状と今後

世帯主の配偶者収入は、主に専業主婦やパートタイム就労をしている妻の所得を示す指標である。家計調査においては、勤労世帯を対象にこの金額が継続的に観測されており、家計全体の可処分所得や生活水準に大きく影響する。近年では、共働き世帯の増加が注目される一方で、実態としては配偶者の就労形態や労働時間は多様化している。


長期的推移から見る配偶者収入の構造変化

2000年からのデータを見ると、配偶者の収入は緩やかに上昇傾向にあるものの、その実態は都市によって大きく異なる。育児支援策や女性の社会進出が進んだ地域では増加が顕著である一方、都市部では逆に減少傾向が見られるケースもある。これは正社員率やフルタイム就業率が都市部でも伸び悩んでいることを示唆している。


高収入都市の背景要因分析

2025年3月時点で世帯主の配偶者の収入が高い都市は、山形市(19.4万円)、徳島市(17.33万円)、広島市(16.05万円)などである。これらの都市の特徴としては以下が挙げられる:

  • 地元企業におけるパート時給の底上げ

  • 女性の労働力人口比率の高さ

  • 中小企業での事務・軽作業求人の多さ

  • 地元経済の復調によるパート需要の拡大

また、広島市や徳島市では前年同期比で+76.91%、+52.5%と急上昇しており、地場産業の雇用拡大や再就職支援策が奏功していると考えられる。


低収入都市の課題と構造的要因

一方、配偶者収入が低い都市は神戸市(5.767万円)、堺市(6.087万円)、札幌市(6.487万円)などであり、いずれも政令指定都市として人口規模は大きいが、収入面では伸び悩んでいる。特に神戸市と堺市は前年同期比で-18.93%、-30.42%と深刻な落ち込みを見せている。

考えられる要因としては:

  • パート市場の飽和と求人単価の低下

  • 大都市における保育環境の不足による就労制約

  • コロナ禍からの回復が鈍い業種(飲食・小売など)への依存

  • 高齢化の進展による主婦層の労働引退


世代間の違いと意識の変化

配偶者収入に影響を与える要素の一つが世代構造である。40〜50代の女性では「第2の収入源」としてパート就労が一般的であったが、現在の30代以下ではキャリア志向や正社員就労志向が高まっており、パート収入にこだわらない傾向がある。

また、高齢の世帯主(60代以上)を含む世帯では、配偶者が既に退職しており、収入がゼロになることも多い。これにより都市によって平均収入が大きく変わる構造になっている。


今後の予測と政策的な課題

今後、配偶者収入は以下のような方向で推移すると予測される:

  • 地方都市では求人の多様化により上昇基調が継続

  • 都市部では育児や介護との両立困難から停滞

  • AI・自動化の影響で事務系パートの縮小可能性

政策的には、「103万円・130万円の壁」問題の解消、柔軟な働き方の促進、保育・介護支援制度の強化が急務である。特に都市部での保育所整備や介護離職防止策が整わなければ、女性の就労は増えにくく、結果的に家計への貢献も限定的となる。


結語:配偶者収入の変化は家計と社会構造の鏡

世帯主の配偶者の収入は、単なる副収入ではなく、その地域社会の雇用状況、福祉政策、女性の生き方の変化などを反映した重要な指標である。今後の政策と企業の働き方改革が、家計全体に与える影響はさらに大きくなるだろう。都市ごとの差を埋め、すべての配偶者が希望する働き方を実現できる社会が求められている。

 

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