さつまいもは日本の農業において重要な作物であり、戦前から戦後にかけて食料供給の役割を担ってきました。しかし、戦後の食生活の変化や農業従事者の減少により、作付け面積は減少し、2023年には3.2万haとなりました。特に九州と関東・東山が全体の8割以上を占め、鹿児島県や宮崎県では焼酎原料としても活用されています。一方、四国では伝統品種や高糖度品種が注目されるなど、地域ごとに特色ある生産が行われています。
さつまいものデータとグラフ
さつまいもの作付け面積の全国データ
全国 | 九州 | 関東・東山 | 四国 | 東海 | 北陸 | 中国 | 近畿 | 東北 | 北海道 | |
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最新 | 2023年 | 2023年 | 2023年 | 2023年 | 2023年 | 2023年 | 2023年 | 2023年 | 2023年 | 2023年 |
最大期 | 1949年 | 1962年 | 1948年 | 1949年 | 1948年 | 1949年 | 1949年 | 1948年 | 1948年 | 2023年 |
最新値[万ha] | 3.2 | 1.45 | 1.24 | 0.167 | 0.108 | 0.0623 | 0.0593 | 0.0507 | 0.0324 | 0.01 |
最大値[万ha] | 44.08 | 15.58 | 13.51 | 3.6 | 6.38 | 1.56 | 3.45 | 2.31 | 0.989 | 0.01 |
前年比[%] | -0.9288 | -7.051 | 1.639 | -6.18 | -10 | -3.56 | -5.723 | -7.143 | 52.11 | 300 |
全体比[%] | 100 | 45.31 | 38.75 | 5.219 | 3.375 | 1.947 | 1.853 | 1.584 | 1.013 | 0.3125 |
さつまいもの収穫量の全国データ
全国 | 九州 | 関東・東山 | 四国 | 東海 | 北陸 | 中国 | 近畿 | 東北 | 北海道 | |
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最新 | 2023年 | 2023年 | 2023年 | 2023年 | 2023年 | 2023年 | 2023年 | 2023年 | 2023年 | 2023年 |
最大期 | 1955年 | 1963年 | 1955年 | 1955年 | 1950年 | 1955年 | 1949年 | 1948年 | 1955年 | 2023年 |
最新値[万t] | 71.58 | 31.93 | 31.03 | 3.68 | 1.58 | 0.997 | 0.806 | 0.702 | 0.432 | 0.187 |
最大値[万t] | 718 | 342.8 | 216 | 56.4 | 98.7 | 19.07 | 45.01 | 29.7 | 12 | 0.187 |
前年比[%] | 0.7176 | -22.14 | 5.044 | -16.74 | -15.05 | -10.18 | -23.24 | -32.5 | 72.11 | 353.9 |
全体比[%] | 100 | 44.61 | 43.35 | 5.141 | 2.207 | 1.393 | 1.126 | 0.9807 | 0.6035 | 0.2612 |
さつまいもの10a当りの収穫量データ
全国 | 関東・東山 | 四国 | 九州 | 北海道 | 北陸 | 東海 | 近畿 | 中国 | 東北 | |
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最新 | 2023年 | 2023年 | 2023年 | 2023年 | 2023年 | 2023年 | 2023年 | 2023年 | 2023年 | 2023年 |
最大期 | 2005年 | 2004年 | 2017年 | 2002年 | 2008年 | 2014年 | 1963年 | 2004年 | 1996年 | 2002年 |
最新値[kg] | 2240 | 2500 | 2200 | 2200 | 1870 | 1600 | 1460 | 1380 | 1360 | 1330 |
最大値[kg] | 2580 | 2510 | 2310 | 3060 | 2520 | 1720 | 2090 | 1620 | 1680 | 1470 |
前年比[%] | 1.818 | 2.459 | -4.762 | -5.983 | 4.469 | -3.03 | 7.353 | -6.122 | 2.256 | 3.101 |
全国比[%] | 100 | 111.6 | 98.21 | 98.21 | 83.48 | 71.43 | 65.18 | 61.61 | 60.71 | 59.38 |
さつまいもの農業についての推移と展望
さつまいもは日本の農業において長い歴史を持つ作物であり、特に戦前から戦後にかけて食料供給の重要な役割を果たしてきました。1878年以降、作付け面積と収穫量は増減を繰り返しながら推移してきましたが、近年では作付け面積の減少が顕著になっています。特に戦後の食生活の変化、米や小麦の消費増加、農業従事者の減少などの要因が影響し、2023年の作付け面積は全国で3.2万haとなっています。これは過去のピーク時と比較して大幅な減少を示しており、収穫量も減少傾向にあります。
最新の作付け面積と収穫量の地域別分布
2023年のデータによると、九州(1.45万ha、全国比45.31%)と関東・東山(1.24万ha、全国比38.75%)の2地域で全体の8割以上を占めています。これらの地域は、温暖な気候や適した土壌条件を生かし、古くからさつまいも栽培が盛んな地域です。一方、四国、東海、北陸、中国、近畿、東北、北海道の作付け面積は比較的少なく、特に北海道では0.01万haと全国比0.3125%にとどまっています。収穫量も作付け面積と同様の分布を示し、九州(31.93万t、全国比44.61%)、関東・東山(31.03万t、全国比43.35%)が中心ですが、10a当たりの収穫量を見ると地域ごとに異なる生産効率が見られます。全国平均は2240kgですが、九州や関東・東山では高い収穫量を維持しており、技術や品種改良の成果が表れています。
地域別のさつまいも栽培の特色
九州地方九州はさつまいもの一大産地で、特に鹿児島県や宮崎県が有名です。火山灰土壌を活かした栽培が特徴で、「紅はるか」や「シルクスイート」などの品種が多く栽培されています。また、焼酎用の原料としての需要も高く、加工向けの生産が発展しています。
関東・東山地方茨城県や千葉県を中心に、関東地方でもさつまいもが多く生産されています。「紅あずま」や「紅こがね」などの品種が広く栽培されており、関東の消費地への供給拠点としても重要な役割を果たしています。特に土壌改良や水管理技術が発達し、高品質なさつまいもが生産されています。
四国地方四国は比較的作付け面積が小さいものの、香川県などでは伝統的な品種の栽培が続いています。また、近年はスイーツ向けの高糖度品種が注目されており、小規模ながらも特色ある生産が行われています。
東海・北陸・中国・近畿・東北・北海道地方これらの地域では、気候や土壌の制約により作付け面積は限られていますが、特定の地域では高品質なさつまいもを生産しています。例えば、愛知県では「安納芋」のような甘みの強い品種の生産が行われており、北海道では寒冷地向けの栽培技術が試験されています。
近年の問題と課題
近年、さつまいも生産において以下のような課題が指摘されています。
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農家の高齢化と後継者不足:特に主要産地では、農業従事者の減少が深刻な問題となっています。
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病害の発生:サツマイモ基腐病(もとぐされびょう)の拡大が一部の地域で問題となっており、生産量の減少に影響を及ぼしています。
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気候変動の影響:異常気象や台風被害により、収穫量が安定しない年も増えています。
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価格変動と市場競争:海外産の安価なさつまいもとの競争が激化しており、国内生産者にとって厳しい状況が続いています。
今後の展望と必要な技術革新
今後、さつまいも生産を維持・発展させるためには、以下のような取り組みが求められます。
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品種改良と耐病性向上:病害に強く、収穫量が安定する品種の開発が重要です。
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スマート農業の導入:IoT技術を活用した栽培管理や収穫支援システムを導入することで、労働負担の軽減と生産性向上が期待されます。
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高付加価値化とブランド化:地域ごとの特色を活かしたブランド化を進め、国内外での販売力を強化することが重要です。
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環境負荷の低減:持続可能な農業の観点から、化学肥料や農薬の使用を抑えた栽培方法が求められています。
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新規就農者の育成:若手農家を支援するための補助金制度や技術研修の拡充が必要です。
まとめ
さつまいもは日本の農業において重要な作物であり、特に九州と関東・東山地域で大きなシェアを占めています。しかし、近年は農家の減少や病害の発生などの課題があり、持続可能な生産体制の確立が求められています。今後は、品種改良やスマート農業の導入、ブランド化を進めることで、安定した生産と市場拡大を図ることが必要となるでしょう。
作付け面積と収穫量の推移


直近の作付け面積と収穫量の割合


10a面積当たりの収穫量と作況指数

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