家計調査における「他の借金純減」は、都市間で大きな差が見られ、浜松市が35,360円と全国平均1,070円を大きく上回る一方、大分市では-15,900円と逆に借金が増加している。これは地域の経済構造、雇用環境、世代別消費傾向の違いが影響していると考えられ、今後も格差は拡大する可能性がある。都市別・世代別の背景と課題を整理し、将来の見通しを解説する。
他の借金純減の家計調査結果
他の借金純減の多い都市
2025年3月 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
名称 | 全国 | 浜松市 | 高知市 | 広島市 | 津市 | 和歌山市 | 福岡市 | 千葉市 | さいたま市 | 福島市 | 宇都宮市 |
最新値[円] | 1070 | 35360 | 4792 | 4598 | 4200 | 4126 | 3804 | 3061 | 2715 | 2699 | 2393 |
前年月同比[%] | -2.904 | +2920 | -7.024 | +162.3 | +295.1 | +906.3 | +339.3 | +280.7 | -115.2 | +10.07 | +17.71 |
他の借金純減の少ない都市
2025年3月 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
名称 | 全国 | 大分市 | 前橋市 | 奈良市 | 岐阜市 | 高松市 | 盛岡市 | 京都市 | 堺市 | 相模原市 | 神戸市 |
最新値[円] | 1070 | -15900 | -3941 | -3186 | -723 | -615 | -296 | 0 | 0 | 0 | 0 |
前年月同比[%] | -2.904 | -559.3 | -591.4 | -387.8 | -136.9 | -190.8 | -109.2 | -100 | -100 | -100 | -100 |
これまでの他の借金純減の推移


詳細なデータとグラフ
他の借金純減の現状と今後
「他の借金純減」とは、家計が保有する借金の中で住宅ローンや教育ローンなど特定用途を除く、クレジットカードのリボ払いや消費者金融などの借金の残高を減らした額を指す。この指標は、返済額が新たな借入額を上回った場合にプラスとなり、逆に借入が返済を上回った場合はマイナスになる。つまり、純減が大きいほど家計が借金から脱却していることを示す重要な指標であり、家計の健全性を見る上でも極めて有用である。
これまでの動向と全国平均の推移
2000年以降の長期データでは、全国平均は経済情勢に応じて増減を繰り返してきた。
-
リーマンショック(2008年)以降:一時的に借金純増傾向が強まった。
-
アベノミクス期(2013年以降):緩やかに純減傾向に回復。
-
コロナ禍(2020年以降):再び借入増加が目立つ時期があったが、給付金や支援策により一部の世帯で純減が見られた。
そして、2025年3月時点の全国平均は1,070円の純減。これは前年より改善傾向にあるものの、都市ごとの差が極めて大きいのが現状だ。
借金純減が大きい都市の特徴
浜松市(+35,360円):突出した返済実績
前年同期比+2920%という圧倒的な純減は、地域経済の復調、企業の賞与増、家計の金融リテラシー向上が寄与している可能性が高い。
その他の上位都市
-
高知市、広島市、津市、和歌山市、福岡市など:経済の回復基調、雇用改善、移住・定住促進策が生活安定化につながり、借金の整理が進んでいる可能性がある。
-
千葉市、さいたま市、宇都宮市、福島市:首都圏近郊の都市で、比較的年収水準が高く、コロナ明けの収入回復により余裕資金で返済を進めた世帯が多いと考えられる。
借金純増が目立つ都市の問題点
大分市(-15,900円)、前橋市、奈良市など
これらの都市では、借入の増加が返済額を上回っている。これは以下のような要因が想定される:
-
非正規雇用率の高さ:収入の不安定さにより、借金の再利用や返済滞納が起きやすい。
-
地方経済の停滞:消費支出の維持や急な医療・介護費用への対応として借金を増やすケースがある。
-
若年層の生活不安:進学や就職をきっかけに借金を抱え、返済が追いつかない構造。
また、京都市・神戸市・堺市などの「-100%」都市は、該当する借金種別での返済報告がゼロになったことを意味し、調査上の記録抹消や統計上の注意点も含まれる。
世代別傾向の違い
-
若年層(20~30代):リボ払いやスマホ分割払いなど「気づかぬ借金」が多く、純減の進捗が鈍い。
-
中年層(40~50代):教育費・住宅ローンと並行して他の借金も抱える層。安定収入があれば純減可能だが、家計圧迫が続けば逆転するリスクあり。
-
高齢層(60代以降):退職金や年金収入を使い、計画的に借金を整理する傾向が強い。純減が最も進みやすい層。
今後の推移と政策的含意
今後の予測
-
都市間格差の拡大:浜松市のように一気に借金純減が進む都市と、大分市のように借金が増加する都市の差は今後も拡大する可能性が高い。
-
金利動向の影響:日銀の金融政策次第で、借金のコストが上がれば返済が進みにくくなり、純減にブレーキがかかる。
-
家計金融教育の普及:借金管理の知識が普及すれば、純減がより多くの都市に広がる。
政策的提案
-
借金純増地域への金融教育支援や生活再建支援の強化
-
若年層向けの消費者金融利用規制と教育プログラムの整備
-
自治体ごとの家計モニタリングの導入による早期介入の実施
まとめ
「他の借金純減」は、家計の健全性を示す指標として今後さらに注目されるべきである。浜松市のような顕著な純減都市と、大分市のような借金増加都市の差は、地域ごとの雇用環境、住民の金融知識、政策の違いに起因している。将来的には、都市格差を是正し、全国的に安定した家計構造を築くための取り組みが重要である。
コメント