勤労世帯の有価証券純購入額は全国平均で7,602円となり、長野市や名古屋市など一部都市で大幅にプラス、一方北九州市や鹿児島市などでは大幅なマイナスが続く。背景には都市ごとの資産形成意識や投資環境、世代別の金融行動の違いがある。今後は人口構造の変化や経済環境の影響を受け、都市間格差は縮小する可能性もあるが、リスク管理の重要性は増す見込みである。
有価証券純購入の家計調査結果
有価証券純購入の多い都市
有価証券純購入の少ない都市
これまでの有価証券純購入の推移


詳細なデータとグラフ
有価証券純購入の現状と今後
有価証券純購入とは、家計が株式や債券、投資信託などの有価証券を購入した金額から売却した金額を差し引いた純額を示します。資産形成の1環としての投資行動を反映し、家計の金融リスク許容度や将来の資産形成意識の強さを測る重要な指標です。特に勤労世帯における有価証券純購入は、将来の収入の不確実性に対する備えやインフレ対策としての側面も持ちます。
長期的動向(2000年〜2025年)
2000年代初頭から日本では金融市場の多様化とともに個人投資が徐々に拡大してきました。バブル崩壊後の低金利環境や近年の老後資金準備の必要性により、勤労世帯の有価証券購入は1部で活発化しています。しかしリーマンショックや東日本大震災、コロナ禍などの経済ショックにより売買は波乱を伴い、純購入額は1時的に減少する局面もありました。
直近のデータで全国平均が7,602円の純購入を示しているのは、資産運用の1般化が進んでいる反面、依然として慎重な傾向も根強いことを示しています。
都市間の特徴と格差
高純購入都市の特徴(長野市・名古屋市・福井市など)
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長野市(29,800円)、名古屋市(18,470円)などは純購入額が突出。地域経済の安定性や所得水準の高さ、地元企業の投資機会の多さが背景にあると考えられます。
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地域の金融教育や証券会社の営業活動が活発なことも1因。
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中高年層を中心に資産運用意識が強いことも特徴。
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増加率の高い都市は近年の株高や投資信託の人気上昇に伴う影響も大きい。
低純購入都市の特徴(北9州市・鹿児島市・福島市など)
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北9州市(-47,440円)、鹿児島市(-12,980円)など大きなマイナス。地域経済の停滞や高齢化の影響が大きく、現金化や解約が進んでいる可能性。
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投資に対する慎重な姿勢や金融リテラシーの格差も懸念される。
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東北・9州地方の1部では、資産運用よりも貯蓄志向が根強い傾向。
世代間の特徴と影響
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若年層は投資経験が少なく、リスクを避ける傾向が強いため、純購入額は低いかマイナスになることが多い。非正規雇用の増加も資金余裕の少なさを助長している。
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中年層は住宅購入や教育費支出が大きく、1時的に投資余力が低下することもあるが、資産形成意識は高い。
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高齢層は退職金や年金受給を背景に積極的な資産運用を行う1方、リスク回避から売却に走るケースも多い。
世代間で投資行動が大きく異なり、家計全体で見ると純購入の増減はこれら世代構成の影響を受ける。
今後の推移と課題
今後の見通し
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人口の高齢化が進む中、高齢層の資産売却圧力が強まり、純購入は1時的に減少する可能性。
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若年層の金融リテラシー向上と、積立型投資信託の普及により、中長期的には純購入額が安定・増加することも期待できる。
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地域間格差は徐々に縮小傾向にあるが、経済格差の拡大が逆に差を広げるリスクも残る。
課題と問題点
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投資のリスク管理が不十分な世帯が多く、暴落時の損失拡大が懸念される。
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地域・世代による金融リテラシーの格差が投資行動の不均衡を生み、家計の資産形成に影響。
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証券市場の変動に家計が過剰に左右されることによる生活の不安定化。
まとめ
有価証券純購入は家計の資産形成や金融行動の動向を反映する重要な指標です。都市間や世代間で大きな差が存在し、経済構造や金融リテラシーが背景にあります。今後も金融教育の充実や安定的な資産形成支援策が不可欠であり、家計の経済的安定に直結する課題といえます。
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