2000年から2025年にかけて、日本の世帯実収入は都市部と地方で明確な差が生まれており、最新の全国平均は52.43万円。広島市やさいたま市などは60万円を超える一方、神戸市や那覇市では40万円未満も見られる。高収入地域は共働きや若年層世帯が多く、低収入地域は高齢化や産業空洞化が要因。今後は物価上昇と賃上げのバランス、地域政策、労働市場の変化が実収入の方向を左右すると考えられる。
実収入の家計調査結果
実収入の多い都市
2025年3月 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | |
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名称 | 全国 | 広島市 | さいたま市 | 千葉市 | 東京都区部 | 山形市 | 川崎市 | 京都市 | 仙台市 | 名古屋市 | 福井市 |
最新値[万円] | 52.43 | 66.61 | 66.28 | 64.6 | 63.88 | 63.63 | 61.72 | 61.19 | 60.4 | 58.2 | 57.75 |
前年月同比[%] | +2.065 | +50.93 | -1.414 | +5.694 | -11.78 | +23.48 | -11.91 | +19.53 | +18.85 | +13.41 | +3.505 |
実収入の少ない都市
2025年3月 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | |
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名称 | 全国 | 神戸市 | 那覇市 | 青森市 | 甲府市 | 宮崎市 | 長崎市 | 堺市 | 大阪市 | 長野市 | 鳥取市 |
最新値[万円] | 52.43 | 36.79 | 37.71 | 41.61 | 42.39 | 42.9 | 43.7 | 45.11 | 45.52 | 45.77 | 46.4 |
前年月同比[%] | +2.065 | -18.82 | +4.703 | -18.21 | -5.893 | +19.86 | -10.51 | -24.44 | -1.588 | +0.788 | -6.555 |
これまでの実収入の推移


詳細なデータとグラフ
実収入の現状と今後
実収入とは、税金や社会保険料などを控除する前の、世帯が1カ月に得る総収入を指します。給与、事業所得、年金、その他の補助金などが含まれ、生活水準や消費行動を把握する上で重要な指標です。家計調査における実収入は、全国平均や都市ごとの経済力を示す基準にもなっています。
2000年から2025年にかけての実収入の推移
2000年以降、日本の実収入は長期的には横ばいからやや減少傾向を続けてきました。リーマンショック(2008年)や消費税増税(2014年・2019年)を機に実質的な可処分所得は伸び悩み、実収入も緩やかな減少が続きました。特に地方では人口減少や産業空洞化により収入水準が抑制される傾向が強く、都市部との格差が拡大しています。
2025年3月時点の全国および都市別の実収入の特徴
最新の2025年3月データでは、全国平均の実収入は52.43万円。特筆すべきは、広島市(66.61万円)やさいたま市(66.28万円)といった都市部が全国平均を大きく上回っている点です。これらの都市は、共働き率が高く、住宅取得世代や子育て世帯が多いという特徴があります。対して、神戸市(36.79万円)や那覇市(37.71万円)などは、観光依存や高齢化、産業構造の転換に伴い実収入が低めに出ています。
前年同期比での増減を見ると、広島市の+50.93%という急上昇が注目される一方、神戸市-18.82%、堺市-24.44%といった大幅減少も確認され、地域ごとの景況感の違いが鮮明になっています。
実収入の地域格差の要因
実収入の地域差を生む主な要因は以下の通りです:
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雇用構造の違い:製造業やIT、金融など高収入の産業が集中する都市部では高水準に。
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高齢化の進行:高齢者比率が高く年金中心の収入構成となる地方は低水準に。
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住宅費や物価の違い:家賃や生活費が高い都市部では高収入でも支出が多く、実質可処分所得が圧迫されやすい。
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共働き比率:共働き世帯の多い地域では世帯全体の収入が高まる傾向。
課題と懸念
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名目上の収入増 vs 実質購買力の低下物価上昇が続く中で名目上の収入が増加しても、実質的な生活レベルの向上は感じにくい状態が続いています。
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世代・地域間格差の拡大若年層の低収入・不安定雇用と高齢層の年金依存により、世代間格差が固定化。さらに、都市と地方の間でも格差が拡大しています。
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急変動する地域の存在広島市のように短期間で収入が大きく上昇した地域もあれば、堺市や神戸市のように急落する地域もあり、景気や政策、企業動向の影響が強く出ています。
今後の予測と展望
今後、日本の実収入の推移には以下の要因が影響すると予想されます。
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インフレ動向と賃上げのバランス物価上昇が続く限り、名目収入の増加が実質生活を改善するには大規模な賃上げが必要です。2024〜2025年の春闘結果が今後の方向を左右するでしょう。
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労働市場の変化生成AIやリモートワークの普及による産業構造の変化が、新たな高収入職種を生み出す可能性があります。
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政府の地域振興策地方創生や移住支援による人材分散が進めば、地方の実収入が改善され、格差是正に繋がる可能性があります。
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高齢化の進行今後さらに高齢者世帯が増える中で、年金制度の改革が実収入の安定性に影響を及ぼす可能性があります。
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