高齢層で急増、自賠責保険料の年齢別支出動向と今後の展望

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2025年時点での自賠責保険料の年齢別支出では、65〜74歳を中心とした高齢層の支出が特に高く、70〜74歳層では前年比+35.65%と急増しています。一方で、55〜59歳層では支出が減少しており、年齢によって保険料負担の傾向が分かれています。高齢者の移動需要の増加や生活スタイルの変化が影響しており、今後は高齢層の支出がさらに増加する可能性がある一方で、若年層の保有離れも進行することが予測されます。

年齢別の自動車保険料(自賠責)

1世帯当りの月間支出

2025年3月 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
名称 平均 65~69歳 65~74歳 70~74歳 60~69歳 60~64歳 55~64歳 70~79歳 60歳~ 55~59歳 65歳~
最新値[円] 654.6 931 914 898 880 821 791 781 767 759 754
前年月同比[%] -2.578 +8.256 +20.9 +35.65 +12.82 +18.47 -0.503 +17.62 +11.97 -16.68 +10.23

 

これまでの年齢別の推移

自動車保険料(自賠責)
最新のデータ

 

詳細なデータとグラフ

 

年齢別の現状と今後

自賠責保険はすべての自動車に義務付けられており、世代を問わず車を保有すれば支払う必要があります。しかし、その支出額には世代ごとのライフスタイル、移動手段、就労状況などが深く関係しています。特に高齢層を中心に保険料の支出が顕著に増加している点に注目する必要があります。


年齢別支出の現状 ― 高齢層が突出して高い

最新のデータ(2025年3月)によると、月間の自賠責保険料の支出が最も高いのは65〜69歳で931円、次いで65〜74歳(914円)、70〜74歳(898円)と続きます。平均値である654.6円を大きく上回る水準です。

また、これらの世代では前年比でも大幅な増加が見られ、70〜74歳は+35.65%という非常に高い伸びを示しています。60〜69歳も+12.82%、65〜74歳も+20.9%と、いずれも顕著な上昇です。


なぜ高齢層で増加しているのか ― 移動手段と生活維持の必要性

高齢層で保険料支出が増加している背景には、次のような複合的要因があります:

  • 地方在住者の生活維持手段としての車:公共交通機関の衰退により、特に地方在住の高齢者は生活の足として自家用車に依存せざるを得ない。

  • リタイア後のライフスタイル:退職後に自由な移動が増え、観光や買い物、通院のために運転機会がむしろ増えるケースも多い。

  • セカンドカーの保有:夫婦ともに免許を維持し、別々に車を保有しているケースがあり、保険料が重層的に発生する。

これらの状況は、単なる高齢化による支出増ではなく、「生活の質の維持」に不可欠な支出であるとも言えます。


減少傾向の層 ― 55〜59歳層に見られる支出縮小

一方、55〜59歳層では前年同期比-16.68%と大幅な減少が見られました。この世代はまだ就労期にあり、通勤や子育てを理由に保有していた車両の見直しを図るタイミングでもあります。

また、子どもの独立や転居に伴い、家庭の車の必要性が一時的に薄れることで、保険契約の一時中断や車両台数の削減が起きていると考えられます。この層では「縮小に向かう支出構造」が現れているのです。


中間年齢層(60〜64歳・55〜64歳)の過渡的状況

60〜64歳(821円)、55〜64歳(791円)といった中間層は、支出水準は高いものの増加率は抑制的で、55〜64歳では前年比-0.503%と横ばいです。これらの世代はリタイア前後にあり、将来的な車の手放しを検討する一方、まだ現役として車が必要な場面も多く、使用傾向が定まらない「過渡期」にある層と位置づけられます。


70代以降の支出 ― 「卒業」か「延命」かの岐路

70〜74歳、70〜79歳といった層は支出水準が高いにもかかわらず、+17〜35%と増加傾向が継続しています。この年代は本来、免許返納や運転頻度の縮小が進む世代ですが、実際には「車のある生活」を維持する人が多いという実情がデータに表れています。

一方で、医療費・介護費の負担が増す中で、自動車関連支出が家計を圧迫していくことも予測され、「自動車生活からの卒業」か「延命」かという選択を迫られる局面に差し掛かっています。


今後の見通し ― 高齢ドライバー政策と保険制度の課題

高齢者の事故リスクの増加や免許更新制度の厳格化により、今後は保険会社側もリスクプレミアムを価格に織り込む可能性があります。これは自賠責保険にも波及し、高齢層の負担がさらに高まる懸念があります。

また、地域ごとの公共交通整備や、カーシェア・乗合交通などの代替手段の発展により、保険加入世帯そのものが減少していく可能性も考えられます。

一方で、60代〜70代の自動車依存はしばらく継続すると予想され、制度的な支援(低所得高齢者への補助など)を検討する余地も出てくるでしょう。


まとめ ― 高齢層中心に支出増、社会的な対応の必要性

2025年時点での年齢別自賠責保険料支出のデータからは、高齢層を中心とした保険料支出の急増が明らかになっています。特に70代前半では前年比30%を超える増加があり、これは高齢社会の象徴的な傾向といえるでしょう。

単なる「加齢による負担」ではなく、車が生活を支える基盤である限り、社会としてどのように支援し、保険制度を調整していくかが今後の重要な課題となります。年齢ごとの支出傾向を見極めることは、次世代の交通政策を構築するうえで欠かせない視点です。

 

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