2002年から2025年3月までの中古車支出における役職別データを分析すると、最も支出が高いのは「雇用されている人」(5,137円)で、安定した需要が見られる。一方で「会社役員」「自営業主・その他」では大幅な減少が起きており、特に自営層の支出は前年比▲71.6%と急落している。本稿では、職業的立場による中古車利用の背景と今後の市場動向を多角的に読み解く。
役職別の中古車
1世帯当りの月間支出
2025年3月 | 1 | 2 | 3 | 4 | |
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名称 | 平均 | 雇用されている人 | 会社などの役員 | 無職 | 自営業主・その他 |
最新値[円] | 3374 | 5137 | 2788 | 2611 | 2385 |
前年月同比[%] | -44.53 | -5.134 | -69.62 | +10.4 | -71.62 |
これまでの役職別の推移


詳細なデータとグラフ
役職別の現状と今後
2025年3月時点での役職別中古車支出平均は3,374円。これは過去20年の物価推移やライフスタイルの変化を反映した数字であり、最も支出が多いのは「雇用されている人」(5,137円)です。続いて「会社役員」(2,788円)、「無職」(2,611円)、「自営業主・その他」(2,385円)となっており、社会的地位が高いからといって支出が多いとは限らない実態が浮かび上がっています。
最も堅調な「雇用されている人」層の特徴
通勤・日常使用が主目的
正社員や契約社員、パートタイマーを含む「雇用されている人」層では、通勤や家庭用としての実用的な需要が大きく、中古車支出が安定しています。特に郊外居住者では中古車が生活インフラの一部となっており、代替タイミングごとに一定の投資がなされています。
支出の微減はインフレと維持費高騰の影響
前年比で約▲5%の減少が見られた背景には、車両価格だけでなくガソリン代や保険料、車検費用の上昇により「買い替えを控える」行動が強まっている可能性があります。それでも支出水準が他の層より高いことから、実用性重視の消費が堅調に続いていることが分かります。
「会社役員」層の支出急減の背景
保有車両の高級化と買い控え
役員層はかつて中古の高級車や社用車買い取りなどの形で中古車市場でも一定の存在感がありましたが、2025年時点で前年比▲69.6%という大幅減を記録しています。背景には、電気自動車やリース車両の活用、あるいは法人名義での新車取得が増えたことが挙げられます。
支出を「個人」から「法人」へ移す傾向
会社役員は、車両取得や維持費を法人経費として処理する傾向があり、個人支出としての中古車購入が減っている可能性があります。統計上の「個人支出」が減っただけで、車の保有そのものが減っているわけではない点に留意が必要です。
「無職」層の支出増加とその意味
高齢層を中心とする生活手段としての車
「無職」層の支出は前年比で+10.4%と増加傾向にあります。これは主に高齢者世帯における再購入・乗り換え需要であり、免許返納の進行が言われる中でも、地方に住む高齢者は移動手段として中古車を必要としている実情があることを示しています。
節約志向と中古車ニーズの合致
年金生活などで支出を抑えたい層にとって、中古車は現実的な選択肢です。中古軽自動車やコンパクトカーを中心に、コストパフォーマンスを重視した車選びが顕著になってきました。
自営業主・フリーランスの支出急減の要因
経済不安と投資優先の判断
「自営業主・その他」の支出が前年比▲71.6%という大幅減を記録しています。背景には物価高や資材高騰により経営環境が厳しさを増す中、車両購入よりも事業投資を優先する動きが加速していると見られます。
業務用車両のリース化
かつては自営業者が軽バンやトラックなどを中古で購入するケースが一般的でしたが、近年は短期リースやサブスクリプション型の業務車両利用が広がり、個人支出として統計に現れにくくなっています。
今後の役職別中古車市場の展望
雇用者層
今後も堅調な支出が続くと予測されるが、維持費の上昇がさらなる支出抑制を呼ぶ可能性もある。特に若年層ではカーシェアとの併用が進むことで、中古車利用のスタイルが変わってくるだろう。
会社役員・自営業主
支出額が今後も低位安定する可能性が高いが、法人名義での取得や経費処理の進展により、見た目以上に車両保有は維持されると考えられる。経済状況次第では再び支出が戻る可能性もある。
無職層
高齢者の「車がないと生活できない」という現実がある限り、中古車支出は一定程度維持される。今後はより低価格・小型・安全な車へのニーズが強まり、自治体支援や補助金制度との連動が重要になる。
結語:役職の違いが生む中古車消費の多様性
役職別の中古車支出データは、個人の経済的立場と生活ニーズが如実に表れる分野です。特に「仕事の有無」「法人経費処理の可否」「移動の必要性」といった視点が、中古車の必要性と支出意欲を左右しています。カーライフが人生のステージごとに変化していく中で、今後も中古車市場はこうした細かなセグメントごとに対応していくことが求められるでしょう。
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