2025年3月時点の年収別中古車支出は平均4395円。600~700万円層が11300円と最多で前年比+132.5%と急増。逆に2000万円超や1500~2000万円層は支出が大きく減少。中間層は新車から中古車へのシフト、高所得層は車所有を再考する傾向が背景にある。低所得層では維持費の負担から買い控えが進む。今後は中間層中心に中古車需要が拡大し、高所得層・低所得層ともに支出縮小の傾向が続く見通し。所得分布に応じた車選択の二極化が進行中。
年収別の中古車
1世帯当りの月間支出
2025年3月 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | |
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名称 | 平均 | 600~700万 | 800~900万 | 2000万~ | 900~1000万 | 1000~1250万 | 500~600万 | 1250~1500万 | 700~800万 | 300~400万 | 1500~2000万 |
最新値[円] | 4395 | 11300 | 8899 | 7776 | 7713 | 4393 | 4246 | 3555 | 2602 | 2288 | 2181 |
前年月同比[%] | -22.87 | +132.5 | -12.65 | -26.15 | -19.9 | +48.97 | -10.61 | -37.49 | -17.61 | -43.45 |
これまでの年収別の推移


詳細なデータとグラフ
年収別の現状と今後
中古車はもはや単なる「節約の手段」ではなく、年収帯によって異なる価値観や生活様式が反映される耐久消費財です。ここでは2025年3月時点のデータをもとに、年収別の中古車支出の違いと背景を分析し、今後の動向を予測します。
中間層(600~700万円):支出最大、支出増加率も突出
この層は月額支出が11300円と最多で、前年比+132.5%という大幅増を記録しています。
背景分析:
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新車価格の高騰:電動化や安全装備による価格上昇で、新車が手の届かない水準に。
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安定的な可処分所得:この層は教育費や住宅ローンを抱える一方で、車が必需品となる生活スタイルを維持。
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ローン活用と積極消費:資産形成期にあり、購入意欲が高いが、価格には敏感。
この層が現在の中古車市場の主力購入層であり、販売業者もこの年収帯向けに車種・価格帯を最適化する傾向があります。
高所得層(800万円~2000万円):支出は低下傾向
800~900万円(8899円)、900~1000万円(7713円)、2000万円以上(7776円)と支出額は高水準ですが、いずれも前年より1~3割の減少となっています。
背景分析:
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車離れの兆候:都市部居住・カーシェア利用・サブスク型車所有への移行。
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富裕層の価値転換:車に対する「所有欲」が低下。より効率的・環境配慮型な消費傾向へ。
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ライフスタイルの変化:仕事や子育てに車が不要な環境(共働き・都市勤務)により支出抑制。
この層では、中古車よりも高級リース・サブスク・フルサービスカー利用などが今後主流になり得ます。
低所得層(300~400万円):車の維持すら難しい現実
300~400万円の世帯は支出額2288円で、前年比-43.45%と大幅減。
背景分析:
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維持費への不安:ガソリン代・自動車税・車検費用など、購入後の支出が負担。
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軽自動車や自転車へのシフト:最低限の移動手段として他の代替策を選ぶ傾向。
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中古車価格上昇の影響:元々割安だった中古車も価格高騰により、手が届かなくなっている。
この層では、支出そのものが“断念”という形で減少しており、生活防衛意識がより強く表れています。
年収1000万~1250万円層:回復の兆しと支出増加
この層の支出は4393円とやや控えめながら、前年比+48.97%と大きく増加しています。
背景分析:
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堅実な生活志向:高年収層の中でも実用性や資産運用を意識する層。
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中古でも「良い車」への関心:高年式・低走行距離の良質中古車に絞って購入。
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教育・住宅への投資優先:可処分所得の中で車にかける割合は慎重ながら、品質は求める。
支出額は大きくなくとも、質へのこだわりが市場に影響を与える層といえます。
年収別でみる「中古車=合理的消費」の広がり
中古車は今や「安かろう悪かろう」ではなく、「品質と価格のバランスがとれた選択肢」として、中間~準高所得層に広く受け入れられている状況です。
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新車の維持費に敏感な層 → 中古車を「第1選択」として選ぶ
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高年収層の一部 → 「新車は資産価値が落ちる」として中古車に回帰
これらの動向が合流し、特定の価格帯の中古車(年式5年未満、走行距離3万km以内)の需要集中・価格上昇を招いています。
今後の予測:中間層中心の成長と二極化の加速
今後の中古車市場は以下のような方向に進むと予測されます。
中間層(500~900万円)
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需要の中核。家族構成や生活ステージに応じて車種選択が広がる。
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中古車販売の主戦場。SUVやミニバンなど人気車種が中心。
高所得層(1000万円超)
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サブスク型・EV化・高級リースにシフト。中古車からは一定の距離。
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コレクター向けや特殊用途にニッチな需要は残る。
低所得層(~400万円)
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自動車支出のさらなる縮小。行政支援車両や中古EVの提供が必要。
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「買わない選択」が増え、二輪・シェア型交通手段へ移行。
まとめ:中古車支出は「年収別ライフスタイル」の写し鏡
中古車にかける支出額は、単に所得に比例するものではありません。どの層が車をどう使うかという視点から見れば、むしろ可処分所得・ライフステージ・生活地域の複合的要素によって決まるのです。
中間層にとっては、「合理的な選択」としての中古車が今後も重要な選択肢であり、業界としてもこの層への訴求が鍵となるでしょう。一方で、極端な高所得・低所得層では支出縮小が進むため、市場は中間層中心に再編成される局面を迎えています。
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