年収別に見る新車支出の実態と格差:高所得層と低中所得層の分断進む

新車

2025年3月時点での新車月間支出の年収別平均は21,240円。高所得層(年収1500~2000万円)では53,520円と高く、前年比+65.44%と大幅増。一方で、年収500~800万円層は前年比40~50%超の大幅減となっており、支出の二極化が鮮明になっている。これには、物価上昇による中間層の購買力低下や、富裕層による高額車・EVの購入増加が影響している。今後もこの格差は拡大する可能性が高く、車購入を巡る経済的ハードルは年収によって大きく異なる時代に入っている。

年収別の新車

1世帯当りの月間支出

2025年3月 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
名称 平均 1500~2000万 2000万~ 1250~1500万 1000~1250万 600~700万 900~1000万 400~500万 800~900万 700~800万 500~600万
最新値[円] 21240 53520 32540 29110 27170 25050 23950 22970 18960 14000 12930
前年月同比[%] +2.222 +65.44 -0.479 -0.0662 +158.4 -5.044 -10.74 -57.29 -45.88 -43.71

これまでの年収別の推移

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最新のデータ

詳細なデータとグラフ

年収別の現状と今後

2025年3月時点のデータでは、年収が高くなるほど新車への支出が大きくなる傾向が明確に表れている。全体平均が21,240円に対し、年収1500~2000万円世帯では53,520円2000万円以上でも32,540円と高水準に達している。

一方、年収500~800万円の中間層は13,000~14,000円台まで減少しており、特に年収800~900万円が前年比-57.29%と最も大きく減少している。これらの動きは、物価上昇と実質可処分所得の減少、そして富裕層の消費行動の変化を如実に反映している。


高所得層の支出拡大とその背景

■年収1500~2000万円:前年比+65.44%

この層の支出が最も大きく、また伸び率も突出している背景には以下のような要因がある:

  • 高級車・輸入車・EVの需要増:テスラ、レクサス、BMWなど、富裕層が選ぶ車種の単価が高騰。

  • インフレヘッジとしての資産消費:現金資産を実物に変える動きが加速。

  • 趣味・ステータス消費の再開:コロナ後の「リベンジ消費」として高級車への投資が活発化。

また、年収2000万円以上層の支出は1500~2000万円層より少ないが、これは「支出が分散化」しており、車以外への高額支出(不動産・教育・資産運用など)が進んでいることを示唆している。


中間所得層の停滞と減少

■年収600~900万円:分岐点となる層

このゾーンはかつて「車を持つことが前提」の世帯だったが、現在は支出が激しく減少している。特に以下の点が影響している:

  • 物価上昇に伴う可処分所得の圧迫

  • 税負担や保険料、燃料費の上昇

  • 教育・住宅費との優先順位の変化

年収600~700万円では前年比+158.4%と例外的な伸びを見せているが、これは新車購入が一時的に集中しただけの可能性が高く、長期傾向とは言い難い


低中所得層の車離れとその意味

■年収500~600万円:前年比-43.71%

この層は、かつての平均的日本世帯に該当する層でありながら、新車購入から最も離れている。理由としては:

  • ローン審査・金利上昇の影響

  • 中古車やカーシェアへのシフト

  • 保守的な支出姿勢の強まり

車が「生活必需品」から「贅沢品」に変わりつつある象徴ともいえ、中流層の“車保有断念”が進行中である。


なぜ年収800~900万円層が大きく減少したか

この層は比較的ゆとりのある所得帯であるにもかかわらず、支出が57%超減少している点は特に注目に値する。主な理由は:

  • 教育費や住宅ローンとのバッティング

  • 金利上昇によるローン抑制

  • 支出の最適化志向(中古車・リース・残価設定ローン)

つまり、支出能力はあるが、積極的に「新車にお金をかけない」価値観が広がっているとみられる。


今後の推移予測と課題

高所得層は今後も堅調・高水準を維持

富裕層は引き続きプレミアムカーやEVに資金を投じ、新車市場の高額帯を牽引し続ける可能性が高い。

中間層はさらなる減少の懸念

経済政策や物価抑制がなければ、中間層の車離れはさらに進行し、新車市場のボリュームゾーンが縮小していく。

低所得層はリース・シェア・中古への移行

支出額の減少とともに、車の保有ではなく「利用」に価値を置く流れが加速すると考えられる。

「自動車格差社会」の定着

年収により所有可能な車のレベルや頻度が分断される、自動車における“階級社会”の構築が進みつつある。


まとめ

年収別の新車支出データは、単なる車の購買傾向ではなく、家計構造の変化、所得格差の深化、消費価値観の二極化を示している。富裕層が支出を増やす一方で、中低所得層は車購入をためらい、結果として市場の高価格帯偏重が進行している。この傾向は今後も継続する可能性が高く、車メーカーや政策側には、新たな価格戦略や所得層別モデルの構築が求められる時代に入っている。

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