婦人用スーツ・ワンピースの支出は年収に比例する傾向にあるが、近年は高所得層でも急減し、全体的に支出縮小傾向。リモート化・式典簡素化・物価高の影響で中間層は購入を抑制し、低価格帯製品や代替手段の活用が広がる。今後は用途限定・長期使用型へのシフトが進むと予想される。
年収別の婦人用スーツ・ワンピース
1世帯当りの月間使用料
2025年3月 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | |
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名称 | 平均 | 2000万~ | 1000~1250万 | 1250~1500万 | 1500~2000万 | 800~900万 | 900~1000万 | 600~700万 | 500~600万 | 700~800万 | 400~500万 |
最新値[円] | 1311 | 3345 | 2600 | 2078 | 1697 | 1565 | 1546 | 1030 | 998 | 951 | 633 |
前年月同比[%] | -28.01 | -47.39 | -2.622 | -39.54 | -40.04 | -27.18 | 6.768 | -14.88 | 12.13 | -42.99 | 2.593 |
これまでの年収別の推移


詳細なデータとグラフ
年収別の現状と今後
婦人用スーツ・ワンピースの支出は、年収が高ければ高いほど多くなる単純な比例関係ではありません。確かに、上位層ほど支出額は大きくなっていますが、消費の意識・生活ステージ・価値観の変化などが複雑に絡み合っており、一概に「高収入=多消費」とも言い切れない現状が見えてきます。
高所得層の支出傾向 ― 華やかさから慎重消費へ
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2,000万円以上(3,345円、前年比 -47.39%) 支出額は最多ですが、前年比の減少率は最も大きくなっています。これは、高所得層でも支出の見直しが進んでいること、または、買い替え周期が長期化していることを示しています。コロナ禍での外出制限の名残や、ハイブランド品を一度購入すれば数年使い続ける傾向があることも影響しています。
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1,250~1,500万円(2,078円、前年比 -39.54%)/1,500~2,000万円(1,697円、前年比 -40.04%) この層も支出額は多いものの、急激な減少が顕著です。高価格帯の商品からの撤退や、冠婚葬祭の簡素化によるフォーマルウェアの必要性の低下が考えられます。
中~上位層の堅調支出 ― 安定と生活防衛のはざまで
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1,000~1,250万円(2,600円、前年比 -2.62%) 支出額は高く、前年比も比較的安定。教育費や住宅ローンの支出も大きい層でありながら、見栄えや職場での装いに気を使う必要性がある層とも言えます。中間管理職層の増加と、オフィス回帰の動きが支出維持を支えている可能性があります。
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800~1,000万円(1,546~1,565円、前年比 -27.18~+6.77%) この層ではやや二極化が進んでおり、900~1,000万円では増加傾向を見せています。このことから、インフレ環境下においても、一部では衣料支出を削らず、むしろ買い替えニーズが発生している可能性があります。
中間層の慎重消費 ― 必要な時だけ、最小限に
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600~800万円(951~1,030円、前年比 -14.88~-42.99%) この層では、必要最低限の購入にとどめる傾向が強く、支出は抑制気味です。リモート勤務の定着、式典の省略、または中古・レンタルへのシフトも影響していると考えられます。物価上昇が生活必需品に影響を与えており、衣料品への支出は真っ先に見直されやすい項目となっています。
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500~600万円(998円、前年比 +12.13%)/400~500万円(633円、前年比 +2.59%) 興味深いのは、中下位層での支出増加です。特に500~600万円層の伸びは顕著で、これは職場復帰や面接対策、式典のリアル開催復活による一時的な需要増が考えられます。また、ユニクロやGUなど手ごろな価格でのフォーマル商品展開が支出しやすさにつながっているとも言えます。
これまでの推移と変化の背景
① 長期的には「スーツ=消耗品」から「用途限定品」へ
2000年代前半までは、「春の式典」「オフィスでの着用」「休日のレジャー用」とスーツの利用範囲が広く、所有数も多かった。しかし、現在では1着あれば十分という意識が一般化し、平均支出も2000年代前半より大きく下落している。
② 物価上昇と「買い控え」の相関
2022年以降のインフレ加速により、特に中間層以下では消耗品や耐久消費財以外の支出が絞られている。衣料品、とくにフォーマルウェアは真っ先にその対象となった。
③ 消費行動の「階層内格差」
同じ年収層の中でも、教育費を重視するか、見栄えを重視するか、家計を守るかで支出に大きな差が出ている。
今後の推移と予測
高所得層:ラグジュアリーから「賢い消費」へ
ハイブランド志向は縮小し、サステナブル・品質重視型にシフト。支出は今後も減少傾向に。
中間層:購入より「代替手段」の定着
購入回数は減少し、レンタルやメルカリでの取引が主流化。新規購入は子どものイベントや就職活動など目的が明確なときに限定。
中下位層:復職・転職市場と連動
転職増加・非正規雇用からの復帰により、今後も断続的な支出増が発生し得るが、長期的には頭打ち。
企業・小売側への示唆
婦人用フォーマル衣料市場は、年収層に応じたセグメント戦略が重要となります。
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高所得層向けには、「所有ではなく価値・体験を売る」アプローチ(例:スタイリスト付きレンタルサービス)。
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中間層には「一着で複数の用途に対応する着回し力」や「長く使える素材」が鍵。
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中下位層には「低価格だが上品・清潔感」を訴求する売り方が求められます。
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