世界のウール生産は2023年に1.746 Mtで、前年から約1%の微減。主要国では中国のみが3.18%の増加を記録し、オーストラリアやニュージーランド、イランなどは減少。特に品質重視国で生産低下が目立ちます。将来は中国中心の成長継続や新興国の台頭、気候変動と価格圧力への対応、付加価値重視の生産構造への転換が鍵となります。
ウールの生産量ランキング
各国 | 最新値[Mt] | 全体比[%] | 前年比[%] | |
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世界 | 1.746 | 100 | -0.996 | |
1 | 中国 | 0.368 | 21.05 | +3.176 |
2 | オーストラリア | 0.324 | 18.56 | -1.22 |
3 | ニュージーランド | 0.124 | 7.104 | -5.349 |
4 | トルコ | 0.0802 | 4.593 | -5.525 |
5 | イギリス | 0.0717 | 4.106 | +0.631 |
6 | モロッコ | 0.0629 | 3.604 | +1.378 |
7 | トルクメニスタン | 0.0491 | 2.813 | +0.768 |
8 | イラン | 0.0477 | 2.732 | -9.096 |
9 | 南アフリカ | 0.0453 | 2.592 | +0.223 |
10 | ロシア | 0.0449 | 2.572 | -2.45 |
11 | パキスタン | 0.0428 | 2.454 | -1.344 |
12 | ウズベキスタン | 0.0386 | 2.209 | +3.393 |
13 | カザフスタン | 0.0366 | 2.099 | -11.88 |
14 | アルジェリア | 0.0354 | 2.028 | +4.957 |
15 | アルゼンチン | 0.0352 | 2.015 | -3.943 |
16 | インド | 0.0339 | 1.941 | -3.528 |
17 | ウルグアイ | 0.0247 | 1.414 | -3.547 |
18 | インドネシア | 0.0246 | 1.41 | -2.125 |
19 | シリア | 0.0211 | 1.21 | +3.37 |
20 | アゼルバイジャン | 0.0152 | 0.868 | -3.911 |
21 | モンゴル | 0.0145 | 0.831 | -1.165 |
22 | イラク | 0.0142 | 0.814 | -4.986 |
23 | サウジアラビア | 0.0142 | 0.813 | +1.912 |
24 | アフガニスタン | 0.0128 | 0.731 | -4.498 |
25 | エジプト | 0.0119 | 0.682 | +0.501 |
26 | キルギスタン | 0.0118 | 0.676 | +0.416 |
27 | アメリカ | 0.0114 | 0.65 | -2.45 |
28 | リビア | 0.0103 | 0.592 | +0.663 |
29 | チュニジア | 0.00946 | 0.542 | -0.327 |
30 | イエメン | 0.00927 | 0.531 | +1.785 |
31 | ブラジル | 0.00855 | 0.489 | -3.809 |
32 | ペルー | 0.00798 | 0.457 | +3.817 |
33 | タジキスタン | 0.00769 | 0.44 | +2.547 |
34 | タンザニア | 0.00761 | 0.436 | +1.461 |
35 | エチオピア | 0.00732 | 0.419 | -0.238 |
36 | チリ | 0.00632 | 0.362 | -2.661 |
37 | ヨルダン | 0.00469 | 0.269 | +0.59 |
38 | コロンビア | 0.00443 | 0.254 | -0.329 |
39 | メキシコ | 0.0038 | 0.217 | +0.304 |
40 | レソト | 0.00361 | 0.207 | -0.00277 |
41 | ノルウェー | 0.00341 | 0.196 | -0.832 |
42 | ジンバブエ | 0.00285 | 0.163 | +2.869 |
43 | レバノン | 0.00283 | 0.162 | +2.12 |
44 | アルバニア | 0.00268 | 0.154 | +14.61 |
45 | バングラデシュ | 0.00251 | 0.144 | +0.872 |
46 | ケニア | 0.00217 | 0.124 | +0.729 |
47 | ボリビア | 0.00203 | 0.116 | -1.361 |
48 | セルビア | 0.00201 | 0.115 | -30.48 |
49 | ジョージア | 0.002 | 0.115 | -4.762 |
50 | ボスニア・ヘルツェゴビナ | 0.00142 | 0.0812 | +0.431 |
51 | エリトリア | 0.00133 | 0.0761 | +0.937 |
52 | ナミビア | 0.00121 | 0.0691 | -6.748 |
53 | イスラエル | 0.00121 | 0.069 | +1.147 |
54 | カナダ | 0.00119 | 0.0681 | -0.824 |
55 | ウクライナ | 0.00119 | 0.068 | -4.042 |
56 | モルドバ | 0.00118 | 0.0676 | -7.467 |
57 | アルメニア | 0.0011 | 0.0631 | +2.514 |
58 | クウェート | 0.00102 | 0.0587 | +3.258 |
59 | エクアドル | 0.000951 | 0.0544 | -7.1 |
60 | ミャンマー | 0.000796 | 0.0456 | +2.276 |
61 | 北マケドニア | 0.000713 | 0.0408 | -13.35 |
62 | スイス | 0.000629 | 0.036 | -1.872 |
63 | パラグアイ | 0.000623 | 0.0357 | -1.243 |
64 | アイスランド | 0.000543 | 0.0311 | -28.08 |
65 | ネパール | 0.000381 | 0.0218 | -32.8 |
66 | マリ | 0.000268 | 0.0153 | -2.021 |
67 | モンテネグロ | 0.00024 | 0.0138 | -1.468 |
68 | マレーシア | 0.000169 | 0.0097 | +0.63 |
69 | ベラルーシ | 8.8E-5 | 0.00504 | -10.2 |


詳細なデータとグラフ
ウールの現状と今後
2023年の世界生産量は 1.746 Mt(百万トン)で、前年から ‑0.996 % の微減となりました。世界全体としては伸び悩み傾向にあり、ピーク期から漸減していることが示唆されます。
主産国別の状況と特徴
中国:最大生産国、増産傾向
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生産量:0.368 Mt
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前年比:+3.176 %中国は世界最大の生産国で、他国が減少する中でも堅調に成長しています。これは内需拡大や畜産技術の進展に支えられています。
オーストラリア:高品質だが微減
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生産量:0.324 Mt
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前年比:‑1.22 %オーストラリアは伝統的に高級品種のウール(メリノ種など)で有名ですが、前年はわずかに減少。市場価格の変動や天候不順が影響した可能性があります。
ニュージーランド:大きく悪化
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生産量:0.124 Mt
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前年比:‑5.349 %ニュージーランドも品質は高いものの、減少率が比較的大きく、気候変動や飼育コスト、国際価格低迷などが影響していると推測されます。
トルコ:中東拠点で減少
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生産量:0.0802 Mt
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前年比:‑5.525 %トルコは地理的に中東・欧州市場に近く、内需と輸出が混在しますが、前年はかなりの減少。国内需要の低下や為替変動などが要因でしょう。
イギリス:微増で堅調維持
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生産量:0.0717 Mt
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前年比:+0.631 %イギリスは伝統的牧羊国で、増産は少ないながらも安定しており、品質やブランド力による安定した需要が背景と考えられます。
モロッコ:堅調な成長
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生産量:0.0629 Mt
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前年比:+1.378 %モロッコは近年輸出志向が強まり、増産傾向が見られます。地中海・欧州向けに安定供給を続けている様子です。
トルクメニスタン:緩やかな拡大
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生産量:0.0491 Mt
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前年比:+0.768 %中央アジアで1定の拡大傾向。国内畜産政策の安定化が背景と考えられます。
イラン:大幅減少
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生産量:0.0477 Mt
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前年比:‑9.096 %中東の緊張や経済制裁、内需の不安定化などで大きく落ち込んでいます。
南アフリカ:微増維持
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生産量:0.0453 Mt
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前年比:+0.223 %南アフリカは羊毛品質が高く、輸出市場への安定供給が続いていますが、増産はわずかです。
ロシア:減少傾向
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生産量:0.0449 Mt
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前年比:‑2.45 %地政学的な混乱や経済制裁が影響している可能性があり、減産が続いています。
動向の共通傾向と背景
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世界全体で微減傾向:世界生産量は前年に比べ約1%減で、ピーク期から見ると横ばいまたは緩やかな下落基調です。
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中国のみがプラス成長:他主要国が減少する中、中国が堅調に成長しており、今後も最大生産国の地位を維持する可能性が高いです。
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品質重視国の減少傾向:オーストラリア、ニュージーランド、南アフリカなど品質高い国で生産が減少しており、市場価格の低迷や気候問題が影響したと推測されます。
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中小国の明暗分かれる:イランやトルコ、ロシアは減少、大幅減少もある1方、モロッコやトルクメニスタンは増加しており、政策や経済構造が分岐点です。
将来的な展望と予想
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中国のさらなる拡大の可能性 技術革新、内需の拡大、現地畜産政策の強化により、中国の生産は引き続き増加傾向を維持する可能性があります。
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気候変動の影響拡大 干ばつ、降水パターンの変化、牧草地の劣化などにより、オーストラリア・ニュージーランド・南アフリカのような牧畜国に影響が出るおそれがあります。
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産地分散と新興国の台頭 モロッコやトルクメニスタンに代表される比較的安定成長中の国々が、今後さらにシェアを伸ばす可能性があります。1方、イランやトルコ、ロシアは政治・経済の不安定によって停滞するリスクがあります。
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価値転換とニッチ高級市場の重視 高品質ウールのみに依存せず、リサイクル繊維や代替素材(カシミヤなど)との競合が進み、機能性・環境性・ブランド性など付加価値型生産が求められます。
総括
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世界のウール生産量は2023年には 1.746 Mt で微減傾向が続いています。
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生産国別では中国が唯1増加し、その他主要国は減少傾向。特にニュージーランドとイランの落ち込みが顕著です。
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将来的には、中国のさらなる伸長、新興産地の持続的拡大、気候変動による生産構造の転換、そして付加価値志向による市場変化が予想されます。
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