2022年の世界のチーズ生産量は26.89Mtで、アメリカが約25%を占め最大。欧州は全体的に減少傾向にあり、ロシアは輸入制限を背景に急増。環境規制や気候リスクが生産に影響する中、今後は高付加価値品の競争と新興国市場がカギとなる。
生産量のデータとグラフ
チーズ生産量の最大と最新
世界 | アメリカ | ドイツ | フランス | イタリア | ポーランド | オランダ | ロシア | |
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最新 | 2022年 | 2022年 | 2022年 | 2022年 | 2022年 | 2022年 | 2022年 | 2022年 |
最大期 | 2022年 | 2022年 | 2020年 | 2015年 | 2021年 | 2021年 | 2020年 | 2022年 |
最新値[Mt] | 26.89 | 6.597 | 3.023 | 2.304 | 1.359 | 1.01 | 0.9736 | 0.8652 |
最大値[Mt] | 26.89 | 6.597 | 3.171 | 2.338 | 1.374 | 1.013 | 0.9996 | 0.8652 |
前年比[%] | 0.3294 | 2.415 | -0.9506 | 3.251 | -1.102 | -0.3228 | -1.063 | 4.954 |
全体比[%] | 100 | 24.53 | 11.24 | 8.568 | 5.054 | 3.755 | 3.62 | 3.217 |
これまでの推移


詳細なデータとグラフ
チーズ生産量についての推移と展望
チーズは、牛乳などの乳を発酵・凝固させて作る加工乳製品であり、保存性と栄養価の高さから世界中で親しまれている。国によって種類や製法が異なり、文化的な価値も高い。1961年から2022年までの長期的なデータをもとに、世界のチーズ生産の変遷を概観し、主要生産国の特性と課題、今後の展望を多角的に分析する。
世界のチーズ生産推移と現状
2022年の世界のチーズ生産量は26.89メガトン(Mt)に達し、前年比+0.3294%の微増にとどまった。過去60年を通じては着実な増加傾向にあり、冷蔵保存技術やグローバル食文化の広がりが背景にある。しかし、直近では欧州中心に減少傾向が見られ、成長の鈍化も懸念されている。
主要生産国の動向と特徴
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アメリカ合衆国(24.53%) 世界最大のチーズ生産国で、2022年は6.597Mt、前年比+2.415%。モッツァレラやチェダーなど大量生産型のチーズが主流であり、ピザなど加工食品用途が多い。工業化酪農が発達しており、安価で効率的な生産が特徴。
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ドイツ(11.24%) 生産量は3.023Mt、前年比-0.9506%。欧州最大の輸出国であり、エメンタール、ハルツァー、クワルクなど多彩な品種を持つ。国内需要の安定性はあるが、乳価の上昇と環境規制が生産コストを押し上げている。
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フランス(8.568%) 2022年の生産量は2.304Mt、前年比+3.251%と好調。カマンベールやロックフォールなど、伝統的なAOP(原産地保護)チーズが有名。品質重視の姿勢が強く、海外高級市場向け輸出も拡大中。
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イタリア(5.054%) 生産量は1.359Mtで前年比-1.102%。パルミジャーノ・レッジャーノやモッツァレッラ・ディ・ブッファラなど世界的ブランドを持つが、気候変動による酪農への影響や生乳不足が響いている。
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ポーランド(3.755%) 生産量は1.01Mt、前年比-0.3228%。近年EU圏内での需要増加に支えられてきたが、労働力不足と農場統合の遅れが課題。
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オランダ(3.62%) 生産量0.9736Mt、前年比-1.063%。ゴーダやエダムに代表される輸出向けチーズが強み。高効率酪農で知られるが、窒素排出規制の強化が生産抑制につながっている。
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ロシア(3.217%) 生産量は0.8652Mt、前年比+4.954%と最も高い伸び率。ウクライナ侵攻以降の輸入制限により、国産化が進んでいる。伝統的なロシアチーズから、欧州風チーズへの移行が進展中。
チーズ生産における世界的課題
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環境規制の影響 特にEU諸国では窒素排出や動物福祉に関する規制が強化され、生産コストが上昇。これが一部の国の生産減少の要因となっている。
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気候変動と酪農リスク 高温・干ばつ・飼料不足などにより、牛乳生産量が不安定化。特に南欧や中央ヨーロッパで影響が顕著。
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グローバル供給網の脆弱性 コロナ禍やロシアのウクライナ侵攻により物流が混乱し、チーズの国際貿易にも支障が生じている。
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需要の変化 消費者の健康志向が進み、低脂肪・植物性チーズの需要が増加。動物由来チーズへの批判も一部にある。
今後の予測と展望
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アメリカとフランスが成長を牽引 アメリカは引き続き工業型生産で拡大を続け、フランスは高付加価値市場の開拓で存在感を強めると見られる。
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ロシアの国内生産強化 西側からの輸入が難しい状況が継続する限り、政府支援によるチーズ国産化はさらに進展し、一定の市場を形成する可能性がある。
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欧州各国の規模縮小圧力 環境負荷への対応が求められ、生産は「質重視・量抑制」へと向かう。輸出先の多様化やアジア市場への注力が鍵。
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アジアや中東での需要増加 中国や湾岸諸国では都市中間層の増加によりチーズ需要が高まりつつある。輸出競争が激化することが予想される。
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植物性チーズとの競合 ビーガン食品の台頭により、動物性チーズとの競争は避けられず、従来型製品のブランディング強化が必要。
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