2022年の世界のオリーブ生産量は前年比-17.48%と大幅減。スペインの干ばつによる不作が主因。一方、トルコやチュニジアなど一部国は大きく増産。オリーブは気候変動の影響を強く受ける作物であり、今後は生産地域の分散や灌漑技術、耐乾性品種の導入がカギとなる。
オリーブの生産量ランキング
各国 | 最新値[Mt] | 全体比[%] | 前年比[%] | |
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世界 | 2.743 | 100 | -17.48 | |
1 | スペイン | 0.666 | 24.27 | -55.41 |
2 | イタリア | 0.331 | 12.07 | -2.242 |
3 | ギリシャ | 0.313 | 11.42 | +22.52 |
4 | トルコ | 0.302 | 11.02 | +36.15 |
5 | チュニジア | 0.235 | 8.574 | +63.11 |
6 | シリア | 0.189 | 6.905 | +82.33 |
7 | モロッコ | 0.182 | 6.616 | -6.875 |
8 | ポルトガル | 0.138 | 5.022 | -39.83 |
9 | アルジェリア | 0.0882 | 3.215 | +24.23 |
10 | エジプト | 0.0457 | 1.666 | +3.628 |
11 | パレスチナ | 0.036 | 1.312 | +106 |
12 | アルゼンチン | 0.033 | 1.203 | +10 |
13 | ヨルダン | 0.0254 | 0.927 | +8.627 |
14 | チリ | 0.0213 | 0.776 | -14.11 |
15 | レバノン | 0.02 | 0.729 | +16.96 |
16 | オーストラリア | 0.02 | 0.729 | -11.5 |
17 | リビア | 0.018 | 0.656 | +5.882 |
18 | アメリカ | 0.016 | 0.583 | |
19 | アルバニア | 0.0155 | 0.565 | -6.061 |
20 | イスラエル | 0.014 | 0.51 | +16.67 |
21 | イラン | 0.00701 | 0.255 | +52.49 |
22 | フランス | 0.0051 | 0.186 | +4.082 |
23 | キプロス | 0.0047 | 0.171 | -6 |
24 | クロアチア | 0.0034 | 0.124 | -2.857 |
25 | サウジアラビア | 0.003 | 0.109 | |
26 | メキシコ | 0.00202 | 0.0736 | +197.6 |
27 | 北マケドニア | 0.00188 | 0.0684 | -0.541 |
28 | エルサルバドル | 0.00156 | 0.0568 | -0.0424 |
29 | ウルグアイ | 0.00154 | 0.0563 | -13.26 |
30 | アゼルバイジャン | 0.00131 | 0.0476 | +14.86 |
31 | アフガニスタン | 0.00105 | 0.0383 | +0.671 |
32 | ペルー | 0.000782 | 0.0285 | -34.35 |
33 | スロベニア | 0.0004 | 0.0146 | -42.86 |
34 | モンテネグロ | 2.33E-5 | 0.00085 | -15.69 |
35 | マルタ | 9.94E-6 | 0.000362 | +51.99 |
36 | ブルネイ | 0 | 0 | |
37 | バーレーン | 0 | 0 | |
38 | ウクライナ | 0 | 0 |


詳細なデータとグラフ
オリーブの現状と今後
オリーブは、果実そのものの消費(テーブルオリーブ)と、オリーブオイルの原料として重要な作物です。特に、乾燥耐性が高く痩せた土地でも栽培可能な点が、地中海地域を中心に長年栽培されてきた理由です。
栄養面でも、オリーブオイルは「地中海食の中心」として世界的に再評価されており、健康志向や自然食品ブームに伴って市場の広がりを見せています。
世界全体の生産量推移と2022年の概況
2022年の世界のオリーブ生産量は2.743Mtで、前年比-17.48%の大幅減少となりました。これは主にスペインの異常気象・干ばつの影響によるものであり、世界のオリーブ生産が1国に強く依存している構造を浮き彫りにしています。
この傾向は、今後の気候変動のリスクを考慮する上で、重要な指標となります。
主要国別の生産動向と特徴
スペイン(0.666Mt|前年比 -55.41%)
世界最大のオリーブ生産国で、特にオリーブオイルの輸出量では圧倒的なシェアを誇ります。しかし、2022年は歴史的な干ばつと高温により、生産量が前年の半分以下に激減。スペイン1国の減少が、世界全体の17%以上の落ち込みに直結するほど、その依存度の高さが浮き彫りになりました。
今後も水資源の不足と高温リスクは継続すると予想され、持続可能な農法や、耐乾性品種への転換が急務です。
イタリア(0.331Mt|-2.242%)
イタリアは高品質・付加価値型のオリーブオイルで知られ、品種・風味の多様性に優れた国です。2022年の減少幅は小さいものの、全体としては長期的な微減傾向にあります。高齢化による労働力不足や、小規模農家の後継者問題が構造的な課題となっています。
ギリシャ(0.313Mt|+22.52%)
前年から大きく回復した国の1つです。国内需要と輸出両面での拡大が見られ、特にEU圏内での評価が高まっていることが背景にあります。オーガニックや在来品種によるブランド化も進んでおり、付加価値戦略が成功しています。
トルコ(0.302Mt|+36.15%)
生産量でイタリア・ギリシャに迫る急成長国。気候がオリーブ栽培に適しており、特に2022年は干ばつを免れた地域が多かったことから、前年比+36.15%の大幅増となりました。内需も堅調で、オリーブオイルの輸出も強化されています。今後の地中海地域の中で最も成長余地のある国といえます。
チュニジア(0.235Mt|+63.11%)
前年からの大幅な回復(+63.11%)は、気象条件の改善と、政府によるオリーブ産業支援策の成果です。オリーブはチュニジア最大の農産輸出品のひとつであり、雇用と経済の重要な柱でもあります。欧州へのオーガニックオリーブオイルの輸出も順調です。
シリア(0.189Mt|+82.33%)
長年内戦によって農業が打撃を受けてきましたが、徐々に1部地域で生産が回復しています。前年からの大幅増は、1時的な回復の兆しと捉えられますが、安定した成長には安全保障やインフラ復旧が不可欠です。
モロッコ(0.182Mt|-6.875%)
国内需要が増加傾向にある1方で、降水量の不足による生産量の減少が影響しました。オリーブ栽培は中・小規模農家によるところが大きく、政府は灌漑設備への投資と国際協力を推進中です。
ポルトガル(0.138Mt|-39.83%)
大幅な減少の背景には、スペインと同様の気候要因(干ばつ・高温)があります。ポルトガルのオリーブ産業はEUの支援を受けつつ、新技術による省力化・自動化が進められていますが、気候変動の影響を免れにくい地域でもあります。
アルジェリア(0.0882Mt|+24.23%)
生産量は比較的少ないものの、国内消費を賄う重要な作物として重視されています。政府はオリーブ植林を砂漠化防止策の1環として奨励しており、今後も徐々に生産拡大が見込まれます。
エジプト(0.0457Mt|+3.628%)
ナイル流域の灌漑農業に支えられ、限定的ながら安定した成長を維持しています。オリーブは中間層向けの健康食品として認識されており、国内消費主導の生産体制です。
気候変動と新たな地理的分布
近年の動向から明らかなのは、オリーブ生産が気候変動に極めて敏感であるという点です。従来は「地中海沿岸の専売特許」とも言える作物でしたが、今後は以下のような地域シフトの可能性があります:
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高緯度地域(例:南フランス、北イタリア)での栽培可能性の増加
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ラテンアメリカ、オーストラリアなどの新興国での商業的生産拡大
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干ばつ耐性品種の開発と植え替え
今後の展望と課題
安定供給体制の構築が急務
スペインのような大規模供給国が不作となると、国際価格が激しく変動し、消費地に影響を及ぼします。今後は以下の戦略が鍵となります:
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供給地域の分散化(依存脱却)
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精密農業と灌漑技術の導入による収量安定化
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オリーブオイル消費国による自国生産への関心増
オリーブオイル市場の拡大余地
健康志向に伴い、オリーブオイルの消費は世界的に上昇傾向にあります。特にアジア・北米市場での消費拡大が著しく、今後はこれらの新市場への輸出対応と、品質・認証制度の整備が不可欠です。
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