2022年の世界のマーガリン生産量は13.96Mtで前年比-1.689%と微減。アメリカが最大生産国だが、健康志向の高まりで減少傾向。トルコやメキシコなど一部新興国は増加しており、安価な調理油脂としての需要は依然存在。今後は無トランス脂肪・高機能製品などへの転換と、地域ごとの市場戦略の違いが重要となる。
生産量のデータとグラフ
マーガリン生産量の最大と最新
世界 | アメリカ | パキスタン | ブラジル | トルコ | メキシコ | ロシア | インド | |
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最新 | 2022年 | 2022年 | 2022年 | 2022年 | 2022年 | 2022年 | 2022年 | 2022年 |
最大期 | 2007年 | 2002年 | 2018年 | 2018年 | 2011年 | 2020年 | 2008年 | 2005年 |
最新値[Mt] | 13.96 | 4.285 | 1.52 | 0.8997 | 0.7234 | 0.5645 | 0.4529 | 0.436 |
最大値[Mt] | 14.95 | 5.035 | 1.804 | 0.9835 | 0.9016 | 0.6488 | 0.7615 | 1.898 |
前年比[%] | -1.689 | -3.264 | -11.74 | 2.625 | 6.073 | 9.398 | -0.5811 | -9.731 |
全体比[%] | 100 | 30.68 | 10.88 | 6.443 | 5.18 | 4.043 | 3.243 | 3.122 |
これまでの推移


詳細なデータとグラフ
マーガリン生産量についての推移と展望
マーガリンは19世紀後半に登場したバターの代替品であり、主に植物性油脂を原料とし、経済的・保存性に優れる食品です。第二次世界大戦以降、世界中で乳製品の代用品として普及し、とくに低価格かつ工業的に大量生産できる食品として重宝されてきました。
世界のマーガリン生産推移と2022年の概況
1960年代以降、マーガリンの世界生産量は伸び続けてきましたが、2022年の世界総生産量は13.96Mtとわずかに減少し、前年比-1.689%となっています。この微減は、健康志向の変化や製造コストの上昇が影響していると考えられます。
主要生産国の特徴と変化
アメリカ(4.285Mt|シェア30.68%|前年比 -3.264%)
世界最大のマーガリン生産国であり、食用油脂加工品の輸出も多い国ですが、近年は健康志向の高まりでトランス脂肪酸の規制強化が影響。製品の再編成や低トランス脂肪マーガリンへの転換が進んでいます。
パキスタン(1.52Mt|10.88%|前年比 -11.74%)
急減の背景には輸入原料の価格高騰、電力不安定、インフレの影響があると見られます。日常的な調理油脂としてのマーガリン需要はあるものの、国内経済の不安定さが大きな制約となっています。
ブラジル(0.8997Mt|6.443%|前年比 +2.625%)
ブラジルは大豆油などの供給国であり、原料の安定性が強み。都市部ではベーカリー・食品加工業向けの需要が堅調であり、安価で柔軟な食品素材としてのマーガリンは根強い支持を受けています。
トルコ(0.7234Mt|5.18%|前年比 +6.073%)
成長が目立つ国の一つ。マーガリンは朝食文化やパンの消費と深く結びついており、地場大手企業による多様な製品ラインが生産拡大を支えています。
メキシコ(0.5645Mt|4.043%|前年比 +9.398%)
近年、都市化と外食産業の拡大により、業務用油脂製品の需要が増加。特に低所得層向けマーガリン製品の市場が安定しており、今後も堅調な成長が予想されます。
ロシア(0.4529Mt|3.243%|前年比 -0.5811%)
ロシアはかつてソ連時代にマーガリン生産が盛んでしたが、経済制裁や原料調達の困難が影響しており、近年は横ばい傾向。ただし国内自給を目指す方向性は強く、安定した需要は継続。
インド(0.436Mt|3.122%|前年比 -9.731%)
伝統的にギー(精製バター)や植物油が好まれる文化が根強く、マーガリン市場は限定的。近年の減少は輸入原料コスト上昇や小売価格の上昇によるものと見られます。
マーガリン産業が抱える課題
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健康リスクへの懸念 トランス脂肪酸が心疾患リスクを高めるとの指摘が長年なされており、法規制が各国で強化されています。これにより製品改良のコストが増加。
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競合製品の台頭 オリーブオイル、バター、ココナッツオイルなど、天然・健康志向の油脂類の人気が高まっており、マーガリンは価格優位性を失いつつある。
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エネルギー・原料価格の変動 植物油や加工油脂は原油価格・天候・国際物流の影響を受けやすく、特に低所得国では生産維持が困難となりやすい。
今後の展望と予測
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低価格帯食品としての需要は一定層に残る 発展途上国や一部中所得層では、安価な油脂としての役割は続く見通し。
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「健康型」マーガリン市場への転換 無トランス脂肪・機能性脂肪を含む新商品(例:植物ステロール配合)への転換が進む。
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ローカル市場ごとの差別化が進行 アメリカのような規制先進国では健康志向製品中心、パキスタンやメキシコでは価格重視製品が主力となり、今後は「二極化」した市場構造が予想される。
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