世界のミツロウ生産動向:国別特徴と品質・成長予測の展望

生産量

2023年の世界のミツロウ生産量は0.065Mtで、微増(+0.463%)となりました。インドが圧倒的なトップで、エチオピアやトルコも成長中。環境志向や伝統素材の再評価が追い風となり、今後も高付加価値製品向けに緩やかな需要増が見込まれます。

ミツロウの生産量ランキング

2023年
降順昇順
各国最新値[kt]全体比[%]前年比[%]
世界65.04100+0.463
1インド24.838.13+0.564
2エチオピア5.9399.132+1.612
3アルゼンチン5.047.75+0.292
4トルコ4.2316.506+3.227
5韓国4.0166.174+0.811
6ケニア2.6144.019+0.331
7アンゴラ2.3183.564+0.0401
8タンザニア1.9012.923+0.223
9ブラジル1.7872.747+0.277
10アメリカ1.592.444-0.0993
11メキシコ1.362.091-11.29
12ウガンダ1.3592.089-0.893
13ウルグアイ1.2111.863+1.288
14ドミニカ共和国1.1241.729+1.03
15中央アフリカ共和国0.8231.265+0.534
16チリ0.6260.963+0.267
17パキスタン0.4860.748+0.361
18マダガスカル0.4210.648+0.271
19セネガル0.3650.561+2.107
20カメルーン0.3090.475+0.286
21ニュージーランド0.2970.457+0.804
22オーストラリア0.260.4-1.076
23ジャマイカ0.2550.392+0.106
24エルサルバドル0.2170.334+0.0322
25ブルンジ0.1880.289+0.492
26パラグアイ0.1720.264-0.699
27シリア0.1560.24+2.426
28シエラレオネ0.1550.239+1.696
29エジプト0.1210.185+7.01
30ギニアビサウ0.10.154
31エクアドル0.09570.147+0.325
32モザンビーク0.09040.139+1.084
33コスタリカ0.08650.133+0.127
34ハイチ0.07190.111+0.251
35ベネズエラ0.07160.11-0.776
36グアテマラ0.07030.108-0.0711
37チュニジア0.06680.103+0.331
38マリ0.05650.0868-2.773
39ルワンダ0.04750.0731+0.486
40モロッコ0.04680.072-2.661
41東ティモール0.040.0615
42ザンビア0.03590.0552-1.237
43ホンジュラス0.01420.0219-2.867
ミツロウの生産量
ミツロウの生産量

生産量

詳細なデータとグラフ

ミツロウの現状と今後

ミツロウ(蜜蝋)は、ミツバチが巣を作るために分泌する蝋質の物質であり、ろうそく、化粧品、医薬品、食品コーティング、伝統工芸など、用途は多岐にわたります。近年では、プラスチック代替素材としても注目され、再評価が進んでいます。

ミツロウの生産は、ハチミツ生産と密接に関連しながらも独立した工程とされ、より労働集約的で量が限られるため、年ごとの変動は小さい傾向にあります。


世界全体の動向と2023年の概要

2023年の世界の総生産量は0.065Mt(6.5万トン)で、前年から+0.463%の微増となりました。全体として大きな変動はないものの、国ごとの動きに注目すべき傾向が見られます。


主要生産国の特徴と傾向

インド(0.0248Mt|+0.564%)

世界最大のミツロウ生産国で、全体の約38%を占めます。小規模農家と養蜂業の普及により、安定した供給を維持しています。農村部での副収入源としても機能しており、今後も持続的に微増傾向が続くと見られます。

エチオピア(0.00594Mt|+1.612%)

アフリカ最大の生産国であり、伝統的養蜂が今なお主流。森林に近い養蜂場が多く、自然由来のミツロウの品質は高い評価を受けています。成長率も高く、将来的な輸出拡大国として注目されます。

アルゼンチン(0.00504Mt|+0.292%)

ハチミツの大国であるアルゼンチンは、ミツロウ生産でも安定的。品質管理が行き届いており、ヨーロッパ市場向けの加工品原料として輸出も行われています。今後も小幅な伸びが予測されます。

トルコ(0.00423Mt|+3.227%)

2023年は大きな伸びを記録。品質の高い山岳地帯の養蜂と、製品への加工技術の発展が背景です。国内市場では天然素材志向の化粧品や伝統品に使われることが多く、需要の底堅さが特徴です。

韓国(0.00402Mt|+0.811%)

規模は小さいながらも、高品質・高付加価値志向の生産体制が整備されています。国内での養蜂支援政策もあり、食品衛生基準の厳しさから安定的な国内消費向け生産国といえます。

ケニア、アンゴラ、タンザニア(0.0019〜0.0026Mt)

これらの国々は自然環境に恵まれた養蜂地を持ち、近年少しずつ生産量を増やしています。ただしインフラや加工技術が未成熟なため、今後は技術支援や国際協力が生産拡大の鍵となります。

ブラジル(0.00179Mt|+0.277%)

豊かな植物相と熱帯気候により、ミツロウ生産にも適した国。今後はエコロジー製品やナチュラル化粧品市場との連動で需要が高まる可能性があります。

アメリカ(0.00159Mt|-0.0993%)

唯1、生産量が前年より微減。産業化された養蜂が主流のため、ミツロウの副産物としての地位が低く、収益性が相対的に低いことが原因と考えられます。今後はクラフト製品や地元市場向け需要が焦点となるでしょう。


生産の構造的特徴と課題

ミツロウ生産には以下のような構造的特徴があります:

  • 採取量が限られる副産物である(ハチミツとの連携が前提)

  • 手作業が多く、加工・精製に技術が必要

  • 生産の地域偏在が激しい(特に熱帯・亜熱帯が中心)

  • 長期保存可能であるため価格は比較的安定

1方で、課題もあります:

  • 近代化された生産ラインの不足(特にアフリカ・南米)

  • 天然素材志向に対する品質保証の整備

  • 養蜂全体の生産性への依存性(ミツバチの健康問題)


将来予測と市場展望

短期的には緩やかな増加基調

2023年のデータに見られるように、ほとんどの国が小幅な増加を示しており、今後数年間も0.5〜1.5%程度の年間成長率が見込まれます。特にエチオピア、トルコ、ケニアなどはローカル産業としての振興が期待されます。

高付加価値製品への展開

世界的な脱プラスチック運動ナチュラル・オーガニック志向の高まりを背景に、ミツロウの需要は広がる可能性があります。たとえば:

  • 食品用エコラップ(Bee’s Wrap)

  • 自然由来のキャンドルや化粧品

  • 伝統工芸(ろうけつ染めなど)

このように、単なる原料としてのミツロウではなく、製品価値を高めた展開が重要です。

コメント

タイトルとURLをコピーしました