2023年の世界の雑穀生産量は1.772Mtで前年比-20.2%と大幅減。ポーランドとフランスが全体の約8割を占め、フランスやイギリスでは健康志向による需要増が支えています。気候変動や収益性の低さが課題であり、今後は政策支援とローカル食材としての価値向上が鍵を握ります。
生産量のデータとグラフ
雑穀生産量の最大と最新
世界 | ポーランド | フランス | カナダ | イギリス | フィンランド | スペイン | デンマーク | |
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最新 | 2023年 | 2023年 | 2023年 | 2023年 | 2023年 | 2023年 | 2023年 | 2023年 |
最大期 | 1971年 | 2004年 | 1972年 | 1971年 | 1970年 | 2014年 | 2018年 | 1961年 |
最新値[Mt] | 1.772 | 0.9057 | 0.4726 | 0.1529 | 0.04728 | 0.04017 | 0.03294 | 0.02667 |
最大値[Mt] | 6.727 | 4.322 | 0.6632 | 2.186 | 0.2577 | 0.0709 | 0.1599 | 0.7594 |
前年比[%] | -20.2 | -22.5 | 2.244 | -24.61 | 11.31 | -21.74 | -67.36 | -30.78 |
全体比[%] | 100 | 51.1 | 26.66 | 8.626 | 2.667 | 2.267 | 1.859 | 1.505 |
これまでの推移


詳細なデータとグラフ
雑穀生産量についての推移と展望
雑穀とは、一般的に米、小麦、トウモロコシなどの主要穀物以外の穀類を指します。オート麦、スペルト小麦、ライ麦、キビ、ヒエなどが含まれ、栄養価が高く、耐乾性や痩せた土地でも育つことから持続可能な農業の象徴ともされています。
特にヨーロッパ諸国では、健康志向食品や有機農法との親和性から、再び注目されている作物群です。
世界の生産推移(1961年〜2023年)
過去60年にわたり、世界の雑穀生産は一貫した増加基調ではなく、地域や食文化に依存した波状的な変動を見せてきました。2023年には全世界で1.772Mt(百万トン)の生産量が報告され、前年比-20.2%と大きな落ち込みを記録しています。
この大幅減少は、主に欧州諸国における不作や耕地転換、また市場価格低迷による作付け減が原因とみられています。
主要国の動向と特性
ポーランド(0.9057Mt|世界シェア51.1%)
雑穀大国とも言える存在。ライ麦やオート麦などが中心で、伝統的な食文化や畜産飼料としての利用が盛んです。しかし、2023年は前年比-22.5%と大幅減。気象リスクや農家の小麦志向へのシフトが影響しています。
フランス(0.4726Mt|26.66%)
ヨーロッパ有数の農業国で、ガレット(そば粉クレープ)や有機食材への需要により、一定の雑穀栽培が継続。前年比は+2.244%と健闘し、他国が減少する中で貴重な成長国です。
カナダ(0.1529Mt|8.626%)
オート麦の主要輸出国として知られます。畜産飼料やグルテンフリー製品への応用が進んでいますが、2023年は前年比-24.61%と厳しい結果に。干ばつの影響や収益性の低下が背景にあります。
イギリス(0.04728Mt|2.667%)
健康志向によりオート麦の需要が堅調で、2023年は前年比+11.31%と唯一の2桁成長国。EU離脱後も国内回帰の食材として雑穀の価値が再評価されています。
フィンランド(0.04017Mt|2.267%)
北欧では気候的に雑穀栽培が重要であり、オーガニック食品としてのニーズも高いですが、2023年は-21.74%の大幅減少。短い夏と湿度の影響が生産を不安定にしています。
スペイン(0.03294Mt|1.859%)
主に乾燥地でのキビなどの生産ですが、2023年は前年比-67.36%と壊滅的。干ばつと灌漑水源の不足が主因です。
デンマーク(0.02667Mt|1.505%)
酪農と連動した飼料用雑穀が主流。前年比-30.78%と落ち込んでおり、欧州全体の減産傾向の一端を担っています。
雑穀生産を取り巻く課題
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収益性の低さ:小麦やトウモロコシと比較して市場規模が小さく、価格変動が大きい。
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気候変動の影響:雑穀は耐性があるとはいえ、極端な干ばつや洪水には弱く、生産が不安定。
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政策支援の不足:多くの国で雑穀は補助対象外であることも多く、農家が離れる傾向がある。
今後の見通しと可能性
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健康志向・持続可能性の潮流:食物繊維、ミネラル、抗酸化物質が豊富な雑穀は、健康食品市場での再評価が続くと見られます。
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地産地消・ローカル食材ブーム:欧州を中心に、雑穀が地域農業のアイデンティティとして注目され始めています。
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気候変動適応作物としての期待:従来型穀物が育ちにくい地域で、将来的に雑穀が主作物となる可能性もあります。
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政策支援と市場拡大が鍵:持続可能な農業への移行政策の中で、雑穀へのインセンティブが重要になるでしょう。
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