2023年の世界の大麦生産量は145.8Mtで前年比5.7%減。ロシアやカナダの減産が影響し、気候変動や地政学的リスクが生産に影を落とす一方、フランスやトルコは増産。今後はスマート農業や耐候性品種の導入により、生産の安定化と高品質化が期待されます。
生産量のデータとグラフ
大麦生産量の最大と最新
世界 | ロシア | オーストラリア | フランス | ドイツ | トルコ | カナダ | イギリス | |
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最新 | 2023年 | 2023年 | 2023年 | 2023年 | 2023年 | 2023年 | 2023年 | 2023年 |
最大期 | 1990年 | 1994年 | 2021年 | 2019年 | 1991年 | 2006年 | 1996年 | 1984年 |
最新値[Mt] | 145.8 | 20.5 | 13.49 | 12.14 | 11 | 9.2 | 8.896 | 6.963 |
最大値[Mt] | 179.1 | 27.05 | 14.65 | 13.57 | 14.49 | 9.551 | 15.56 | 11.06 |
前年比[%] | -5.738 | -12.37 | -6.162 | 7.603 | -1.849 | 8.235 | -10.92 | -5.714 |
全体比[%] | 100 | 14.06 | 9.256 | 8.331 | 7.547 | 6.312 | 6.103 | 4.777 |
これまでの推移


詳細なデータとグラフ
大麦生産量についての推移と展望
大麦は古代から栽培されてきた重要な穀物で、主に飼料用やビールの原料として用いられています。1960年代から2000年代初頭までは世界的に安定した生産が続いていましたが、その後は気候変動や市場の変化を背景に、変動の大きな作物となっています。
2023年の世界の大麦生産量は145.8Mt(百万トン)で、前年比-5.738%と減少傾向にあります。これは異常気象や干ばつ、戦争・輸送問題など、さまざまな要因によって引き起こされたものです。
主要生産国別の動向と特徴
ロシア(20.5Mt/14.06%/前年比 -12.37%)
世界最大の大麦生産国。主に家畜飼料と輸出向けに栽培されていますが、2023年はウクライナ侵攻に起因する物流問題や国際制裁、さらには天候不良が響き、大幅な減産となりました。農業の近代化は進むものの、今後の政情が鍵となります。
オーストラリア(13.49Mt/9.256%/-6.162%)
南半球に位置する大麦大国で、乾燥気候に適した栽培体制を整えています。2023年はラニーニャ現象の影響による乾燥と高温の影響で減産となりました。輸出国としての地位は引き続き高く、中国などアジア市場への影響力が強いです。
フランス(12.14Mt/8.331%/+7.603%)
EUの中でも屈指の大麦生産国。2023年は天候に恵まれ、前年比で大きく増加しました。主にビール原料のモルト用として国内外の需要が高く、高品質品種の生産が評価されています。
ドイツ(11Mt/7.547%/-1.849%)
安定した生産体制を誇るが、2023年は気温と降水量の不均衡でやや減産。EU域内での供給バランスにおいて重要な国であり、農業機械の導入が進んだ近代的農業が特徴です。
トルコ(9.2Mt/6.312%/+8.235%)
中東における主要な生産国で、2023年は天候の回復と政府の支援策によって生産が好調。国内消費の多くを占めるほか、輸出も徐々に伸びてきています。乾燥に強い土地での栽培技術が向上しつつあります。
カナダ(8.896Mt/6.103%/-10.92%)
近年、干ばつや早霜など気象リスクの影響を大きく受けている国の一つです。2023年も干ばつによる大幅減産。モルト向けの輸出は依然として重要で、品質は高いものの、生産量の不安定性が課題です。
イギリス(6.963Mt/4.777%/-5.714%)
比較的冷涼な気候を活かし、ビール用大麦を中心に生産しています。近年は気候の不安定化と労働力不足が影響し、生産はやや低調。環境規制強化や農業補助金の変化(EU離脱後)も影響を与えています。
世界的な課題とリスク
大麦の世界的な生産には、以下のような課題と不安定要因があります。
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気候変動の影響:干ばつ、極端気象、収穫期の豪雨などにより、収量の年次変動が大きい。
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ウクライナ危機と物流混乱:黒海経由の輸出が制限され、価格や供給が不安定。
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需給バランスの変化:モルト用需要は伸びているが、飼料用途の需要は他穀物との競合により停滞。
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農業政策の不安定性:補助金や輸出制限などの政策次第で急変。
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土地と資源の制限:都市化や水資源の不足が今後の栽培可能面積を圧迫。
今後の展望と予測
生産の二極化
安定生産国(フランス・ドイツ)と、変動リスクの高い国(ロシア・カナダ)で生産構造が二極化する可能性があります。
テクノロジー導入と耐候性品種
ドローン、AI予測、リモートセンシングなどスマート農業の普及により、生産リスクの軽減が期待されます。乾燥に強い新品種の開発も進んでいます。
消費と市場の変化
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ビールやウイスキー産業の需要拡大により、モルト用大麦の需要は堅調。
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飼料用途では、トウモロコシなど他穀物との競争が激化。
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アジア・中東市場での輸入需要は今後も増加傾向。
政治的リスクと価格高騰の可能性
ロシア・ウクライナ地域の情勢次第では、大麦の国際価格が乱高下するリスクが高い。中長期的に見て、価格は不安定化する可能性があります。
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