世界の大麦生産量と主要国の動向【最新統計・今後の予測】

生産量

2023年の世界の大麦生産量は145.8Mtで前年比-5.738%。ロシア、オーストラリアは減産傾向だが、フランスやトルコは増産。気候変動に敏感で年ごとの生産変動が大きい作物。今後はスマート農業や高付加価値市場への対応が鍵となる。

大麦の生産量ランキング

2023年
降順昇順
各国最新値[Mt]全体比[%]前年比[%]
世界145.8100-5.738
1ロシア20.514.06-12.37
2オーストラリア13.499.256-6.162
3フランス12.148.331+7.603
4ドイツ117.547-1.849
5トルコ9.26.312+8.235
6カナダ8.8966.103-10.92
7イギリス6.9634.777-5.714
8ウクライナ5.5073.778-1.801
9アルゼンチン4.6963.222-11.06
10アメリカ4.0292.764+6.391
11スペイン3.7582.578-46.55
12イラン32.058
13ポーランド2.8511.956+2.475
14カザフスタン2.6141.793-20.48
15デンマーク2.5421.744-38.35
16エチオピア2.451.681+12.18
17ハンガリー2.221.523+39.54
18ルーマニア1.9981.37+17.05
19中国1.991.365+1.531
20インド1.9131.312+39.49
21チェコ1.7641.21-6.027
22モロッコ1.3480.925+93.59
23シリア1.2260.841+586.9
24アイルランド1.2150.833-21.62
25イタリア1.1940.819+3.066
26ベラルーシ1.150.789-23.33
27フィンランド1.0790.74-24.37
28アゼルバイジャン1.0390.713-2.845
29アルジェリア10.686
30ウルグアイ0.8970.616-2.489
31スウェーデン0.8560.587-43.33
32メキシコ0.8320.571-18.74
33ブルガリア0.7970.547+27.64
34オーストリア0.7720.53+0.652
35スロバキア0.6030.414+8.363
36リトアニア0.5670.389+8.598
37セルビア0.5380.369+19.07
38ノルウェー0.4050.278-31.47
39ベルギー0.3940.27+5.571
40キルギスタン0.3820.262-29.19
41南アフリカ0.3770.259+24.83
42ブラジル0.3750.258-28.08
43ギリシャ0.3630.249+12.1
44ニュージーランド0.3580.246+8.539
45エストニア0.3320.228-32.14
46クロアチア0.2930.201-8.851
47トルクメニスタン0.2780.19+33.38
48モルドバ0.2430.167+83.06
49ラトビア0.2330.16-17.29
50日本0.2320.159-0.429
51オランダ0.2310.158-18.61
52ペルー0.2110.145-4.786
53タイ0.1820.125+4.241
54タジキスタン0.170.117+8.217
55スイス0.1650.113-10.81
56ウズベキスタン0.1640.112+32.6
57チリ0.1510.104+38.93
58北マケドニア0.1450.0995+5.322
59アフガニスタン0.110.0755+16.17
60イラク0.1060.0727-26.71
61スロベニア0.1010.0693-10.15
62エジプト0.090.0617-2.043
63チュニジア0.0890.0611-82.92
64アルメニア0.08360.0574+10.9
65ボスニア・ヘルツェゴビナ0.07560.0518-15.68
66リビア0.0680.0467-2.857
67韓国0.06610.0453-2.779
68エリトリア0.0650.0446
69ジンバブエ0.05830.04+1.084
70ジョージア0.05290.0363-10.03
71ボリビア0.04750.0326+0.691
72ヨルダン0.04450.0305+54.62
73パキスタン0.04350.0298+14.32
74北朝鮮0.04160.0285+8.922
75ケニア0.03290.0226+63.73
76ルクセンブルク0.0310.0213-17.43
77レバノン0.030.0206
78イエメン0.030.0206
79ポルトガル0.02630.0181-5.22
80ネパール0.02590.0178-19.42
81キプロス0.02150.0147-12.11
82アルバニア0.02120.0145+11.39
83パレスチナ0.01440.0099+12.01
84イスラエル0.01120.00768+14.29
85コロンビア0.01020.00701+46.92
86エクアドル0.008520.00584-23.63
87アイスランド0.007680.00527-13.72
88モンゴル0.006520.00447+57.98
89クウェート0.004710.00323+5.799
90タンザニア0.003790.0026-68.38
91ザンビア0.003520.00241-75.22
92サウジアラビア0.0020.00137-53.49
93モーリタニア0.001470.00101-0.11
94コンゴ民主共和国0.0009940.000682+0.208
95モンテネグロ0.000940.000645+15.49
96オマーン0.0006930.000475-78.03
97ブータン0.0005180.000355-15.74
98レソト0.0002990.000205+0.609
99カタール0.0001930.000132+370.7
100バングラデシュ0.0001590.000109-7.558
101グアテマラ1.81E-51.24E-5
102マルタ00
大麦の生産量
大麦の生産量

生産量

詳細なデータとグラフ

大麦の現状と今後

大麦は、人間の食用・家畜の飼料・ビールなどの醸造用として広く栽培されている重要な穀物です。寒冷地や乾燥地でも栽培可能なため、広い気候帯に適応しやすく、多くの国で生産されています。

2023年の世界全体の生産量は145.8Mt(1億4580万トン)で、前年からは-5.738%の減少。長期的には生産量は安定していますが、年ごとの変動が激しいのが大麦の特徴でもあります。これは大麦がトウモロコシや小麦に比べて商品作物としての政策支援が少ないことや、天候の影響を受けやすい地域で栽培されていることが理由のひとつです。


主要生産国の動向と特徴

ロシア(20.5Mt、前年比-12.37%)

ロシアは世界最大の大麦生産国であり、大規模な農地での機械化栽培が1般的です。2023年は前年比-12.37%の減少となりましたが、これは干ばつや収穫期の気象不順の影響が考えられます。

ロシア産大麦は、主に輸出用(特に飼料・醸造用)であり、中東や中国などのマーケットとの連動も大きく、生産のブレが年によって大きいのが特徴です。

オーストラリア(13.49Mt、前年比-6.162%)

オーストラリアは輸出志向が非常に強い国で、大麦はとくに中国・日本向けのビール醸造用として重要です。2023年は-6.162%と減産しましたが、前年が豊作であった可能性が高く、気象変動による年ごとのブレが目立ちます。

また、降雨量に左右されやすいため、エルニーニョ現象などの気候要因の影響が大きい国の1つです。

フランス(12.14Mt、前年比+7.603%)

フランスはEU圏で最大の大麦生産国で、主にビール用と飼料用に生産されています。2023年は+7.603%と増加しており、安定した農業技術と補助政策の影響が見て取れます。

EU内での需要が安定していることや、農業の近代化が進んでいる点も、比較的収量の変動が小さい要因です。

ドイツ(11Mt、前年比-1.849%)

ドイツもフランスと並ぶ主要な大麦生産国であり、国内消費・輸出ともにバランスが取れた構造です。2023年はわずかに減産ですが、全体としては安定的な供給体制を維持しています。

トルコ(9.2Mt、前年比+8.235%)

トルコは2023年に+8.235%の増産を記録し、気象条件の回復や政策的支援が効果を上げたと推測されます。内陸乾燥地での飼料用大麦生産が多く、気候変動への対応が今後の課題です。

カナダ(8.896Mt、前年比-10.92%)

カナダの大麦は主に醸造用・飼料用に利用されており、ビールの品質に関わるため、高品質な栽培管理が求められます。2023年は-10.92%と大きく減産。干ばつや霜などの気象障害の影響が強い地域でもあり、今後は気候変動へのレジリエンス強化が必要です。

イギリス(6.963Mt、前年比-5.714%)

イギリスは比較的温和な気候により、安定した大麦生産が可能な国ですが、2023年は-5.714%とやや減産しました。主にビール・ウイスキー醸造用としての品質重視型の生産が特徴です。

ウクライナ(5.507Mt、前年比-1.801%)

ウクライナは以前は欧州随1の輸出大国でしたが、地政学的リスクとインフラ破壊の影響で、2023年は小幅な減産に留まったとはいえ、中長期的な不安定要因を抱えています

アルゼンチン(4.696Mt、前年比-11.06%)

アルゼンチンは南米唯1の上位生産国であり、大麦は主に輸出用の換金作物として扱われています。2023年の大幅減産(-11.06%)は、ラニーニャ現象による干ばつの影響が大きいと推察されます。

アメリカ(4.029Mt、前年比+6.391%)

アメリカでは、かつてより大麦の重要性は下がっており、トウモロコシや大豆に比べると経済的重要性は小さいものの、醸造用や地域的飼料用としての役割を持ちます。2023年は+6.391%と回復傾向です。


地域別の構造と課題

  • ヨーロッパ(フランス、ドイツ、イギリスなど)安定した農業インフラと品質志向、気候変動への順応が進む地域。

  • ユーラシア(ロシア、ウクライナ、トルコ)広大な農地による規模拡大が可能だが、気象と政治の両リスクあり。

  • 北米(カナダ、アメリカ)高品質志向で輸出競争力もあるが、干ばつリスクと作付転換圧力が大きい。

  • 南半球(オーストラリア、アルゼンチン)気候の変動性が高く、エクスポート主導型の生産体制が経済に直結。


将来予測と展望

安定性と課題

大麦の世界生産は、トウモロコシや小麦に比べて注目度が低い1方で、需要は根強く存在します。特にクラフトビール市場の拡大などが生産国にとってはチャンスです。

1方で、干ばつ、豪雨、気温上昇といった気候変動の影響をもろに受けやすい作物でもあり、年ごとの生産変動が激しいというリスクも残ります。

今後の展望

  • 持続可能な農業技術(ドローン・スマート灌漑)の導入

  • 醸造用などの高付加価値分野への特化

  • 地理的分散による生産のリスク分散

  • 耐乾性品種・耐病性品種の開発

これらの要素が今後の安定供給と市場競争力の鍵になります。

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