世界の小麦生産量推移と主要国の動向分析【最新データ】

生産量

2023年の小麦生産量は799Mtで前年比-1.5%。インドやオーストラリアは増産、ロシアやカナダは減産。気候変動と地政学的リスクが影響する中、今後は耐性品種の導入や精密農業がカギ。持続可能な生産体制が求められる。

小麦の生産量ランキング

2023年
降順昇順
各国最新値[Mt]全体比[%]前年比[%]
世界799100-1.529
1中国136.617.1-0.82
2インド110.613.84+2.61
3ロシア91.511.45-12.22
4アメリカ49.316.172+9.836
5オーストラリア41.25.157+13.69
6フランス364.505+3.936
7カナダ31.953.999-6.934
8パキスタン28.163.525+7.447
9トルコ222.754+11.39
10ウクライナ21.632.707+4.322
11ドイツ21.542.695-4.655
12イラン141.752+6.061
13イギリス13.981.75-10.04
14ポーランド12.931.619-1.991
15アルゼンチン12.561.571-43.32
16カザフスタン12.111.516-26.17
17エジプト9.71.214+0.8
18ルーマニア9.6241.205+10.82
19ブラジル7.730.968-25.26
20イタリア6.8940.863+4.311
21ブルガリア6.8550.858+6.312
22ウズベキスタン6.4720.81+3.213
23ハンガリー5.9420.744+36.45
24エチオピア5.80.726
25チェコ5.2620.659+1.42
26リトアニア4.4550.558-0.611
27アフガニスタン4.30.538+13.07
28イラク4.2480.532+53.64
29モロッコ4.1580.52+53.58
30スペイン4.0490.507-37.79
31デンマーク3.5560.445-14.62
32メキシコ3.4760.435-3.734
33セルビア3.4490.432+10.9
34シリア3.080.386+98.53
35スウェーデン2.7680.346-14.26
36アルジェリア2.50.313-16.67
37スロバキア2.4910.312+21.6
38ベラルーシ2.40.3-17.24
39ラトビア2.1370.267-15.85
40ネパール2.0980.263-2.15
41南アフリカ2.050.257-2.844
42アゼルバイジャン1.7920.224+6.008
43ベルギー1.7910.224-3.278
44オーストリア1.7450.218+1.886
45モルドバ1.5550.195+81.87
46ウルグアイ1.3440.168+4.731
47ギリシャ1.3090.164+8.803
48チリ1.290.161+16.52
49パラグアイ1.2880.161+32.42
50バングラデシュ1.1070.139+1.967
51トルクメニスタン1.10.138-12
52オランダ1.0970.137-5.679
53日本1.0940.137+10.12
54サウジアラビア0.9230.115+15.35
55タジキスタン0.8610.108+5
56クロアチア0.8340.104-14.13
57フィンランド0.7490.0937-11.28
58エストニア0.6940.0869-18.73
59アイルランド0.4840.0606-30.99
60スイス0.4470.056-8.058
61モンゴル0.4430.0555+10.33
62キルギスタン0.440.0551-25.67
63チュニジア0.40.0501-64.76
64ニュージーランド0.3920.049-2.718
65スーダン0.3780.0473-20.59
66ケニア0.3090.0387-16.06
67ジンバブエ0.30.0375+20
68ザンビア0.2770.0347+18.12
69ボリビア0.2730.0341-12.2
70アルバニア0.2340.0292+0.189
71ボスニア・ヘルツェゴビナ0.2280.0285-18.98
72北マケドニア0.2150.0269-4.214
73ペルー0.1940.0242-8.904
74アルメニア0.1780.0223+28.31
75ノルウェー0.1720.0215-55.21
76ジョージア0.1470.0184-6.25
77スロベニア0.1450.0182-3.536
78イスラエル0.1360.017-3.955
79リビア0.130.0163
80レバノン0.10.0125
81イエメン0.10.0125
82タンザニア0.08650.0108+31.09
83ミャンマー0.080.01-17.29
84ルクセンブルク0.07240.00906-15.75
85北朝鮮0.06740.00843-4.55
86ナイジェリア0.05280.0066+53.24
87韓国0.05180.00648+49.9
88マリ0.03850.00482+14.78
89パレスチナ0.03570.00447+3.486
90ポルトガル0.03470.00434-44.01
91キプロス0.02790.00349-10.45
92ヨルダン0.02670.00334+28
93エリトリア0.0250.00313
94ウガンダ0.0250.00313
95ナミビア0.02470.00309+33.57
96アンゴラ0.02090.00262+158.4
97ルワンダ0.01670.00208+20.02
98モザンビーク0.0160.002
99コロンビア0.009350.00117-27.66
100コンゴ民主共和国0.0090.00113
101ブルンジ0.007960.000996-2.236
102オマーン0.007890.000988+122.5
103レソト0.006370.000797+11.61
104ニジェール0.00550.000688+0.124
105エクアドル0.003980.000498-46.49
106マダガスカル0.002850.000356+42.28
107モンテネグロ0.002220.000278+8.494
108モーリタニア0.0020.00025
109チャド0.00140.000175+16.1
110タイ0.001320.000165+0.0227
111ホンジュラス0.001280.00016+0.457
112ソマリア0.001060.000133+0.368
113マラウイ0.0010.000125
114ブータン0.0008370.000105+8.734
115ボツワナ0.000810.000101-71.68
116エスワティニ0.0007058.83E-5-0.336
117カメルーン0.00067.51E-5-1.263
118ベネズエラ0.0005797.25E-5+1.568
119クウェート2.53E-53.17E-6-8.203
120メラネシア1.24E-51.55E-6+147.4
121ニューカレドニア1.24E-51.55E-6+147.4
122カタール2.4E-63.0E-7+166.7
123マルタ00
124グアテマラ00
小麦の生産量
小麦の生産量

生産量

詳細なデータとグラフ

小麦の現状と今後

小麦は、世界で最も重要な穀物のひとつであり、世界人口の約35%以上のカロリー源を担う戦略的作物です。1961年以降、世界の生産量は人口増加と農業技術の進歩により1貫して増加してきましたが、2023年には799Mt(7億9900万トン)と、前年比-1.529%の減少が見られました。

これは気候変動、地政学的リスク、生産国間の変動による影響が反映された結果といえます。地域によって、天候、政策、インフラ、技術水準などの違いが生産量に与える影響は大きく、今後の持続可能な生産と安定供給が大きなテーマとなっています。


主要生産国ごとの現状と特徴

中国(136.6Mt、前年比-0.82%)

中国は小麦の世界最大の生産国であり、国内消費も非常に大きいため、輸出にはあまり依存していません。灌漑システムや肥料利用、栽培品種の改良により、高収量を維持していますが、水資源の枯渇や都市化による農地減少が長期的リスクです。2023年はわずかな減少で、安定した生産体制を維持しています。

インド(110.6Mt、前年比+2.61%)

インドは急速に生産を伸ばしてきた国で、農業政策による最低支持価格の導入肥料補助金制度が生産意欲を支えています。2023年は順調なモンスーンと政策支援の効果により増産となりました。人口増加に伴う国内需要の増大が今後の生産拡大を促す要因となります。

ロシア(91.5Mt、前年比-12.22%)

世界有数の小麦輸出国であり、「世界の穀倉地帯」としての位置づけが強まっています。2023年は前年の豊作の反動や天候不順により減少しましたが、依然として強い供給力を持ちます。地政学的リスク(例:ウクライナ侵攻)が供給と価格の変動要因となりやすく、今後も不安定要素がつきまとうと考えられます。

アメリカ(49.31Mt、前年比+9.836%)

かつての最大輸出国ですが、他国の競争力向上と国内需要の多様化により、近年は生産量が安定的に推移。2023年は気象条件の改善や、1部地域での栽培面積の拡大により増産しました。今後も安定供給国としての地位を維持する1方、品質志向や環境対応が焦点になります。

オーストラリア(41.2Mt、前年比+13.69%)

輸出志向の強い国であり、中国やアジア市場との関係が生産・販売に大きな影響を与えています。2023年の増加は降雨条件の好転と輸出見込みの強さが背景にあります。気候変動への脆弱性はありますが、精密農業や乾燥耐性品種の導入が進んでいます。

フランス(36Mt、前年比+3.936%)

EU最大の生産国として、ヨーロッパの食料安全保障の要です。気候安定性と機械化、農業技術水準の高さにより、安定した供給体制を持ちます。2023年は回復傾向で、今後も環境規制への対応と収量安定の両立が課題となるでしょう。

カナダ(31.95Mt、前年比-6.934%)

カナダは特に高タンパク質のハードレッドスプリング小麦の輸出国として評価が高い国です。2023年は干ばつの影響で減少しましたが、品種改良や技術投資が進んでおり、中長期的には安定成長が期待されます。

パキスタン(28.16Mt、前年比+7.447%)

国内消費を満たすために増産が国家的な課題となっている国。2023年は比較的順調な気象条件が好影響を与えました。水不足とインフラの未整備が依然として課題であり、収穫後損失の削減が生産性向上の鍵です。

トルコ(22Mt、前年比+11.39%)

地域の主要供給国として重要な位置を占めており、2023年は増産に成功。政策支援と生産者への助成金が奏功した結果といえます。今後も中東・北アフリカ市場への供給基地としての役割が強まると予想されます。

ウクライナ(21.63Mt、前年比+4.322%)

戦争によるインフラ被害や耕地の減少が懸念されつつも、2023年はわずかに回復。生産意欲と輸出ニーズが高い国ですが、物流・保管体制の安全確保が最大の課題です。将来的な安定には国際的な支援体制の維持が不可欠です。


地域別の構造的特徴と課題

アジア圏(中国、インド、パキスタンなど)

  • 人口集中に伴う自給的生産が中心

  • 灌漑や集約栽培が普及しており、高収量

  • 水資源の消耗や農地の都市転用が問題

欧州・ロシア圏

  • 生産量・品質ともに高く、輸出市場をリード

  • EU内の環境政策(グリーンディール)が今後の栽培に影響

  • 気候変動による熱波・干ばつの頻発が新たな脅威

北米(アメリカ、カナダ)

  • 機械化と大規模農業の成熟

  • 品質と機能性(タンパク質・グルテン量)重視の生産

  • 干ばつ・寒波の年次変動に左右されやすい

オセアニア(オーストラリア)

  • 輸出志向と価格競争力の高さ

  • 降水量次第で大きく生産量が変動

  • サステナブル農業への対応が進行中


将来の展望と課題

成長・変化を支える要因

  • 人口増加と都市化による食料需要の拡大

  • 新興国の食生活の「パン化」に伴う需要増

  • 精密農業、スマート農業技術の導入

  • 気候変動に強い耐乾性・耐熱性品種の育成

懸念される課題とリスク

  • 気候変動(熱波、干ばつ、洪水)による生産不安

  • 地政学リスク(特にウクライナ・ロシア地域の緊張)

  • 農業資材(肥料、燃料)の価格高騰

  • 若年層の農業離れと人材不足


まとめ

2023年の世界の小麦生産量は799Mtで、前年比-1.529%の微減。主要国ではインドやオーストラリア、トルコなどが増産を果たす1方、ロシアやカナダは天候や地政学リスクで減産となりました。

将来的には、人口増、気候変動、貿易摩擦、技術革新といった複数の要素が交錯する中で、持続可能で強靭な農業体制の構築がカギとなります。主要国の政策的選択や国際協力の行方が、世界の食料安全保障を大きく左右していくでしょう。

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