カラントの世界生産はロシアが7割近くを占め、地域的に偏った構造が特徴です。ポーランドも続きますが減少傾向が見られ、全体としては停滞気味。気候変動や需要の限界、収益性の低さが生産拡大を妨げており、将来的には品質重視や加工品市場への展開が焦点になると見られます。
生産量のデータとグラフ
カラント生産量の最大と最新
世界 | ロシア | ポーランド | チェコスロバキア | ウクライナ | イギリス | フランス | ドイツ | |
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最新 | 2023年 | 2023年 | 2023年 | 1992年 | 2023年 | 2023年 | 2023年 | 2023年 |
最大期 | 2004年 | 2023年 | 1992年 | 1989年 | 2018年 | 1963年 | 1996年 | 1988年 |
最新値[kt] | 759.3 | 531.2 | 129.7 | 34 | 22.84 | 15.33 | 12.89 | 12.6 |
最大値[kt] | 780.1 | 531.2 | 213.4 | 37.79 | 29.63 | 32.01 | 13.57 | 173.7 |
前年比[%] | -0.1048 | 4.267 | -11.04 | 0.7348 | -7.493 | 3.01 | 29.42 | -11.08 |
全体比[%] | 100 | 69.97 | 17.08 | 4.478 | 3.008 | 2.018 | 1.698 | 1.659 |
これまでの推移


詳細なデータとグラフ
カラント生産量についての推移と展望
カラント(スグリ)は、主に冷涼な気候で育つベリー系果実で、ブラックカラント(黒スグリ)、レッドカラント(赤スグリ)、ホワイトカラント(白スグリ)などが知られています。ジャム、果汁、リキュール、サプリメントなど幅広い用途があり、ビタミンCを豊富に含む健康果実としても注目されてきました。ただし、世界的な果実市場の中ではニッチな存在にとどまっています。
1961年から2023年までの長期的な動向
カラントの生産量は長期的に見て大きな成長を示しているとは言い難く、安定またはわずかな縮小傾向が続いています。かつて欧州各国では家庭菜園レベルでも栽培されていたほどですが、商業的な拡大は他のベリー(ブルーベリーやラズベリー)に比べて鈍化しています。その背景には、収益性の低さや手間のかかる栽培・収穫工程、消費需要の停滞があります。
ロシアの圧倒的なシェアとその背景
2023年時点で世界のカラント生産量の約70%をロシアが占めており、圧倒的なトップに位置しています。これはソ連時代から続く栽培文化の延長と、国内消費や加工用需要(ジュースや果実酒など)を背景としたものです。2023年の前年比も4.267%の増加と、他国と比較して安定した成長を示しています。ロシアの広大な土地と冷涼な気候、また市場の独自性がこの生産継続を支えています。
ポーランドの苦境と欧州諸国の停滞
かつてはカラントの主要生産国の一つだったポーランドは、現在も全体の17%を占めるものの、前年比では11.04%の減少と低迷が目立ちます。農業の効率化と輸出志向の変化、カラントに対する市場の鈍化が要因と考えられます。
チェコスロバキア(注:現在は分離しているが、旧データの扱い)やウクライナ、ドイツ、フランス、イギリスといった他の欧州諸国も、それぞれ数%未満〜数%台のシェアにとどまり、全体的に縮小傾向が見られます。
なおフランスは前年比で29.42%増と一時的な回復を示しましたが、全体比ではわずか1.698%であり、構造的な変化とは言い難い水準です。
停滞の理由と課題
カラントの生産停滞には以下のような要因が挙げられます:
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収益性の低さ:他の果物に比べて単価が低く、大規模農業に向かない。
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市場需要の停滞:伝統的な需要が頭打ちで、若年層の関心も薄い。
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気候変動の影響:冷涼な気候を好む果実であり、温暖化の影響を受けやすい。
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機械化の難しさ:果実が小さく、収穫や選別に手間がかかる。
今後の展望と可能性
今後のカラント市場には以下のような展開が予想されます:
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ロシア主導の安定供給体制の維持 大規模農地と国内需要に支えられたロシアは、今後も安定的な供給国として存在感を保つと見られます。
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加工品需要の掘り起こし ジャムや機能性飲料、健康サプリメントとしての価値を再評価することで、消費拡大の可能性があります。
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有機・地産地消志向との親和性 欧州では健康志向と地元産品への関心から、小規模生産でも付加価値化する流れが期待できます。
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フランスやイギリスなど一部国の回復 一部で前年比増が見られる国では、ニッチ市場をターゲットとした再成長の兆しもあり、特に有機志向の消費層向けに可能性が広がっています。
結語:ロシアを中心に維持されるニッチな果実
カラントは今後も世界的な主要果実になる可能性は低いものの、特定の国・地域では文化的・加工的な価値から、一定の需要と供給が維持されていくと見られます。特にロシアの独自性は際立っており、他国との差は今後も縮まりにくい構造です。商業ベースでの拡大は限定的ですが、健康食品や地域特産品としての再評価が鍵となるでしょう。
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