世界のラズベリー生産量と国別動向:最新統計と将来予測

果物(南国)

2023年のラズベリー世界生産量は941ktで前年比-1.959%。ロシアやメキシコが増産する一方、ヨーロッパ諸国は気候や経済的要因で減産傾向。モロッコやポルトガルの輸出型成長が注目される。今後は施設栽培や加工用需要が成長の鍵。

ラズベリーの生産量ランキング

2023年
降順昇順
各国最新値[kt]全体比[%]前年比[%]
世界941100-1.959
1ロシア219.323.31+3.315
2メキシコ190.420.24+6.573
3セルビア98.6710.49-15
4ポーランド96.110.21-8.389
5アメリカ62.646.657-14.27
6モロッコ61.186.502+8.478
7ポルトガル35.663.79+21.71
8ウクライナ33.543.564-0.0894
9スペイン33.073.514-27.19
10イギリス15.951.695-2.389
11ボスニア・ヘルツェゴビナ12.081.284-0.886
12チリ11.831.258+0.761
13アゼルバイジャン11.811.255-0.0121
14モルドバ7.9640.846+14.71
15カナダ6.720.714-2.707
16ドイツ6.670.709-1.477
17フランス6.30.67+5.528
18ブルガリア5.660.602-0.527
19スイス3.6370.386-19.77
20オランダ3.210.341+7
21イタリア2.750.292+6.178
22キルギスタン2.6060.277+0.0518
23ノルウェー2.0350.216+6.936
24ベルギー1.720.183-15.69
25リトアニア1.450.154+16.94
26フィンランド1.370.146-6.803
27ジョージア1.20.128
28オーストラリア0.6470.0687+0.248
29デンマーク0.630.067+162.5
30オーストリア0.610.0648-12.86
31ハンガリー0.550.0584-5.172
32スウェーデン0.530.0563+20.45
33モンテネグロ0.50.0531
34ルーマニア0.430.0457+152.9
35アイルランド0.410.0436-14.58
36北マケドニア0.3540.0376-7.33
37クロアチア0.160.017-5.882
38スロベニア0.140.0149-12.5
39ラトビア0.10.0106-54.55
40ジンバブエ0.09830.0104+0.235
41チェコ0.080.0085+60
42エストニア0.070.00744-30
43スロバキア0.040.00425+33.33
44ウズベキスタン0.01880.002-83.59
45ニュージーランド0.01540.00164-9.246
46ギリシャ0.010.00106
47ルクセンブルク00
48マルタ00
ラズベリーの生産量
ラズベリーの生産量

生産量

詳細なデータとグラフ

ラズベリーの現状と今後

ラズベリーは、北半球の冷涼な気候を好む果実で、食味・栄養価の高さから生食・冷凍・ジャム・製菓用など多様な需要を持ちます。高単価で取引されるため、小規模農家から大規模集約栽培まで幅広い生産形態があります。

2023年の世界生産量は941ktで、前年から-1.959%の減少を示しています。全体としては減少傾向にあるものの、国別では成長と後退が交錯しており、地域ごとに異なる構造的な変化が進行しています。


主要生産国別の動向と特徴

ロシア(219.3kt、+3.315%)

依然として世界最大のラズベリー生産国。家庭菜園から大規模農場まで生産形態は幅広く、冷涼な気候と広大な土地が生産に適しています。2023年は3%以上の増加。長期的には安定傾向ですが、内需主導で輸出は限定的です。

メキシコ(190.4kt、+6.573%)

近年、急激な成長を遂げている国で、ラズベリーの商業的輸出型農業のモデルケース。温暖地域でも高地を利用し栽培が拡大。アメリカ市場向けの輸出が中心で、季節を逆手に取ったオフシーズン供給の需要が成長を支えています。

セルビア(98.67kt、-15%)

かつては世界2位の常連国でしたが、2023年は大幅減少。気候不順(霜や高温)、労働力不足、価格低迷など複合的な要因が生産減に繋がっています。依然として冷凍ラズベリーの重要供給国であり、回復の鍵は輸出市場と価格安定です。

ポーランド(96.1kt、-8.389%)

EU内での主要生産国。近年の気候変動による影響と人手不足が減産に繋がっています。ポーランド産は主に加工用(冷凍・ジャム)として欧州内に出荷され、競争が激化する中で品質と収穫効率の両立が課題です。

アメリカ(62.64kt、-14.27%)

西海岸(特にカリフォルニア、ワシントン)での集約的生産が中心。2023年は大幅減少で、干ばつ、労働力コスト、病害虫の増加などが影響したと考えられます。温暖化により生産地の北上も今後の可能性として注目されます。

モロッコ(61.18kt、+8.478%)

ラズベリーの新興国として急成長中。温暖な冬を活かしてヨーロッパのオフシーズン市場向けに出荷。労働コストの低さと近距離輸送が競争力の要。今後はさらに増加が見込まれます。

ポルトガル(35.66kt、+21.71%)

2023年は最も高い増加率を示した国の1つ。EU内の需要を背景に、温暖な冬季栽培が伸長。栽培技術の進歩と施設園芸(ビニールハウス)導入が増産を支えています。

ウクライナ(33.54kt、-0.0894%)

わずかな減少にとどまっており、地政学的リスクの中でも1定の生産を維持。安価で品質の高いラズベリーの産地としてEU諸国からの需要もあるが、インフラや輸送面の課題が今後のネック。

スペイン(33.07kt、-27.19%)

大幅減少の背景には異常気象(高温・干ばつ)と経済的収益性の低下があると考えられます。モロッコとの競争も激しく、輸出市場のシェア争いが激化。施設栽培への投資がなければ縮小傾向が続く可能性があります。

イギリス(15.95kt、-2.389%)

近年、国産ラズベリーのプレミアム市場が成長していますが、2023年は微減。労働力不足や生産コストの上昇が懸念点。施設栽培とスマート農業の導入が進めば回復の可能性も。


地域別の構造と競争力の違い

ヨーロッパ

伝統的な生産地(ポーランド、セルビア、スペインなど)が、気候変動・人手不足・価格競争に直面しています。今後は高付加価値品種、環境制御型栽培への移行が鍵。

北米・中南米

アメリカは減少傾向にある1方、メキシコやチリなど低コスト・高収益型の生産国が台頭。輸出重視で設備投資も進んでおり、今後も拡大が予想されます。

アフリカ・中東

モロッコを中心に成長が著しく、オフシーズンのヨーロッパ市場をターゲットとした輸出型戦略が功を奏しています。中東でも温室栽培による拡大が見込まれます。


将来予測と課題

今後の成長要因

  • 施設園芸やスマート農業による気候リスクの軽減

  • 冷凍・加工用ラズベリーの需要拡大

  • 輸出志向国(メキシコ、モロッコ、ポルトガルなど)の生産増

  • 高付加価値市場(有機、プレミアム品種)への転換

懸念される課題

  • 気候変動(霜・高温・干ばつなど)による安定生産の困難化

  • 労働力不足とコストの上昇

  • 主要市場での需給バランスの不均衡

  • 収穫後ロスと輸送インフラの脆弱性(特にウクライナ・アフリカ)


まとめと展望

ラズベリーの世界市場は、従来の生産国が苦戦する1方で、輸出志向の新興国が台頭する「再編の時代」に入っています。2024年以降、気候適応技術、農業DX(デジタル化)、国際的な品質基準への対応などが、持続的な成長を分けるポイントになるでしょう。

長期的には、世界の生産量は緩やかに増加または横ばいになると見込まれますが、生産地の重心はヨーロッパからアフリカ・中南米へと移動する可能性が高いと考えられます。

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