世界の洋ナシ生産は、2023年に26.51Mtに達し、中国が全体の75.28%を占める圧倒的主導国です。南米のアルゼンチンや北米のアメリカ、欧州のベルギーなどが続き、各国は輸出市場や技術革新で差別化を図っています。気候変動や資材高騰が課題となる一方、精密農業の導入で生産性向上も期待されています。
生産量のデータとグラフ
洋ナシ生産量の最大と最新
世界 | 中国 | アルゼンチン | アメリカ | トルコ | 南アフリカ | ベルギー | オランダ | |
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最新 | 2023年 | 2023年 | 2023年 | 2023年 | 2023年 | 2023年 | 2023年 | 2023年 |
最大期 | 2023年 | 2023年 | 2013年 | 1994年 | 2022年 | 2022年 | 2020年 | 2018年 |
最新値[Mt] | 26.51 | 19.95 | 0.6538 | 0.6037 | 0.5345 | 0.4814 | 0.3813 | 0.354 |
最大値[Mt] | 26.51 | 19.95 | 0.89 | 0.949 | 0.5511 | 0.549 | 0.3926 | 0.4022 |
前年比[%] | 0.7333 | 3.036 | 15.47 | 2.7 | -3.007 | -12.32 | 10.25 | 0.8547 |
全体比[%] | 100 | 75.28 | 2.467 | 2.278 | 2.016 | 1.816 | 1.439 | 1.335 |
これまでの推移


詳細なデータとグラフ
洋ナシ生産量についての推移と展望
洋ナシ(ペアー)は、世界中で消費される代表的な果物の一つであり、特に温帯から亜熱帯地域にかけて広く栽培されています。1961年から2023年までの統計により、その生産量の推移と国別の構造的変化、近年の傾向と課題が明らかになってきました。本稿では、FAOなどの国際統計を基に、洋ナシの世界的な生産状況を整理し、主な生産国の特徴と将来的な見通しについて詳述します。
世界全体の生産量の推移と現状
1961年以降、世界の洋ナシの生産量は着実に増加してきました。とりわけ1990年代以降は中国の台頭により、生産量は飛躍的に拡大。2023年時点での世界全体の洋ナシ生産量は26.51Mt(メガトン)に達し、前年から0.7333%の微増となっています。
この伸びは緩やかではあるものの、気候変動の影響や農業資材コストの上昇など、生産環境が厳しさを増す中での安定的成長と捉えることができます。
中国の圧倒的な存在感
中国は2023年において19.95Mtの生産を記録し、世界全体の75.28%を占める一大生産国です。前年比でも3.036%と安定した成長を示しており、世界の洋ナシ市場を牽引する存在です。
この背景には、農業の近代化政策、大規模な果樹園の整備、国内需要の拡大、さらには輸出体制の整備があります。特に河北省や山東省など、内陸部を中心とした集中的な栽培が規模経済を可能にしており、中国は今後も生産の中心として君臨し続けると見られます。
南米と北米の役割 ― アルゼンチンとアメリカ
南米の代表格であるアルゼンチンは、2023年に0.6538Mtを生産し、前年比で15.47%という高い伸びを記録しました。これは輸出向け生産の回復や新規栽培技術の導入によるものです。欧州市場を中心とした輸出に力を入れており、今後も需要拡大が見込まれます。
一方、アメリカ合衆国は0.6037Mtの生産量を維持し、前年比では2.7%の増加。ワシントン州やカリフォルニア州を中心に高品質な洋ナシの生産が進んでおり、国内外での安定した需要に支えられています。
トルコ、南アフリカ、ベルギー、オランダ ― 地域の多様性と課題
トルコは0.5345Mtを生産し、世界シェアでは2.016%ですが、前年比では-3.007%と減少。これは干ばつや寒波などの気象条件の影響を大きく受けたためと考えられます。
南アフリカも0.4814Mtを生産する重要国であり、ヨーロッパへのオフシーズン輸出で知られていますが、前年比では-12.32%と大幅な減少。水資源の制限や農業労働力不足が課題です。
ヨーロッパのベルギーとオランダは、それぞれ0.3813Mt(+10.25%)、0.354Mt(+0.8547%)と着実に生産を維持しています。特にベルギーは近年、生産技術とマーケティング力で存在感を増しており、欧州市場内での影響力が強まっています。
今後の予測と課題
今後、洋ナシの世界生産は以下のような要因に影響されると予想されます:
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気候変動:極端気象による収穫不安定化のリスク。
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農業資材の価格高騰:肥料・燃料の価格上昇がコスト圧力に。
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労働力不足:特に先進国では収穫時期の人手確保が課題。
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市場需要の変化:健康志向や輸出入政策の変化が各国の販売戦略に影響。
一方で、AIやIoTを活用した精密農業技術の導入や、品種改良による高収量・高糖度品種の開発が進んでおり、生産性向上の余地も大きいです。
中国が今後も主導権を握る可能性が高いものの、アルゼンチンやベルギーのように独自の市場戦略でシェアを伸ばす国の動きも注目されます。
まとめ
洋ナシの世界的な生産構造は、中国の圧倒的シェアのもとで安定的に推移しています。一方で、新興国や中堅生産国の技術革新や輸出戦略によって、局地的な成長も見られます。気候リスクや人材不足といった課題はあるものの、技術と政策の両面からの支援によって、今後の洋ナシ市場はさらなる発展が見込まれます。
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