2023年の世界の肉類生産量は1242Mtに達し、アメリカと中国で半数以上を占めています。ブラジルが急増し、アルゼンチンは大幅減。気候変動や飼料価格、環境負荷が課題となる中、今後は新興国を中心に需要が拡大。持続可能な技術と生産体制の転換が必要とされています。
生産量のデータとグラフ
肉類生産量の最大と最新
世界 | アメリカ | 中国 | ブラジル | アルゼンチン | インド | ウクライナ | メキシコ | |
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最新 | 2023年 | 2023年 | 2023年 | 2023年 | 2023年 | 2023年 | 2023年 | 2023年 |
最大期 | 2023年 | 2016年 | 2023年 | 2023年 | 2021年 | 2023年 | 2021年 | 2016年 |
最新値[Mt] | 1242 | 389.7 | 289.1 | 132 | 41.41 | 38.09 | 31.03 | 27.55 |
最大値[Mt] | 1242 | 412.3 | 289.1 | 132 | 60.53 | 38.09 | 42.11 | 28.25 |
前年比[%] | 6.836 | 12.39 | 4.201 | 20.24 | -29.86 | 12.91 | 18.5 | 3.754 |
全体比[%] | 100 | 31.39 | 23.28 | 10.63 | 3.335 | 3.068 | 2.499 | 2.219 |
これまでの推移


詳細なデータとグラフ
肉類生産量についての推移と展望
1961年から2023年にかけて、世界の肉類生産量は急増し、2023年には1242Mt(メガトン)に到達しました。これは人口増加と所得上昇により食肉需要が拡大した結果であり、とくに都市化の進展や食生活の「西洋化」が顕著なアジア・ラテンアメリカで顕著です。
2023年の世界全体の前年比は+6.836%と高い成長を記録しており、肉類需要が依然として拡大基調にあることがうかがえます。
主要国別の生産動向と特徴
アメリカ(389.7Mt、世界の31.39%、前年比+12.39%)
世界最大の肉類生産国であり、牛肉・豚肉・鶏肉のいずれにも強みがあります。機械化が進んだ大規模畜産業と、高効率な飼料管理・品種改良技術によって、2023年は前年比+12.39%という顕著な増加を達成しました。輸出も堅調であり、世界の食肉市場を牽引しています。
中国(289.1Mt、23.28%、前年比+4.201%)
豚肉が消費の中心で、世界の豚肉市場における中国の存在感は依然として圧倒的です。アフリカ豚熱などの家畜疫病による打撃を乗り越え、再建が進行中。牛肉や鶏肉の消費も増えており、今後は多様化が進むと予測されます。
ブラジル(132Mt、10.63%、前年比+20.24%)
鶏肉と牛肉の輸出大国であり、とくに中東・アジアへの輸出が好調。2023年は前年比+20.24%と突出した増加率を示し、畜産インフラの拡充と国際需要の高まりが背景にあります。ただし、アマゾン森林伐採との関連が国際的な批判を招くことも。
アルゼンチン(41.41Mt、3.335%、前年比-29.86%)
2023年は急減。牛肉の国内価格統制や干ばつの影響、飼料価格高騰によって畜産業が打撃を受け、前年比-29.86%という大幅減少となりました。政治・経済不安定が生産の継続性に影を落としています。
インド(38.09Mt、3.068%、前年比+12.91%)
牛の宗教的タブーから牛肉生産は限定的ですが、水牛肉や鶏肉の生産で伸びを見せています。畜産の近代化が進んでおり、前年比+12.91%と大幅増加。人口増と食生活の変化が成長の後押しになっています。
ウクライナ(31.03Mt、2.499%、前年比+18.5%)
戦争の影響を受けながらも回復傾向にあり、鶏肉や豚肉を中心に生産量を大きく伸ばしました。前年比+18.5%は農業回復と輸出ニーズの高まりを反映した結果です。農地の再開発と外資の支援が背景にあります。
メキシコ(27.55Mt、2.219%、前年比+3.754%)
鶏肉・豚肉中心のバランス型生産で、米国との経済連携協定により輸出も拡大中。温暖な気候を活かした畜産が強みで、今後も緩やかな成長が見込まれます。
肉類生産をめぐる世界的な課題
環境負荷
肉類生産は温室効果ガス排出、水資源消費、土地利用の面で高い環境負荷があります。とくに牛肉生産はメタン排出が問題視されています。
飼料価格と穀物需給
トウモロコシや大豆などの飼料価格が高騰すると、畜産コストが上昇。2022〜2023年のウクライナ情勢も飼料供給に影響を与えました。
疫病リスク
アフリカ豚熱、鳥インフルエンザなどが周期的に流行し、各国の生産体制に大打撃を与えるリスクが常に存在します。
消費の二極化
欧米など先進国では「脱肉」や代替肉の動きが進む一方、新興国では肉類消費が急増。このギャップが生産・流通に複雑な影響を及ぼしています。
将来の展望と持続可能性への課題
食肉需要は世界的には増加基調
2030年代にかけて、アジアとアフリカを中心に肉類消費はさらに増加すると見込まれます。とくに鶏肉は価格・生産効率の面で有利なため、主流の地位を維持するでしょう。
技術革新による環境負荷軽減
低メタン飼料、バイオガス活用、精密畜産(Precision Livestock Farming)など、技術導入によって環境負荷の低減と効率化の両立が可能とされます。
代替肉市場の拡大
植物性代替肉や培養肉といった新たな市場が台頭しており、今後は一部市場で動物性肉の代替を果たす可能性がありますが、現状では生産量全体に対する影響は限定的です。
グローバル供給網の再設計
パンデミックや地政学リスクを経て、食肉供給網の多極化・分散化が進むと予測されます。特定地域依存からの脱却がカギになります。
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