2023年の世界アーティチョーク生産量は約1.61Mtで、最大生産国はエジプト(27.94%)です。南米ペルーや北アフリカ諸国の伸長が顕著な一方、伝統的生産国であるイタリアやスペインでは気候変動などにより生産減が続いています。今後は新興国の輸出型生産と、欧州の高付加価値路線との二極化が進むと予測されます。
生産量のデータとグラフ
アーティチョーク生産量の最大と最新
世界 | エジプト | イタリア | スペイン | アルジェリア | ペルー | 中国 | モロッコ | |
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最新 | 2023年 | 2023年 | 2023年 | 2023年 | 2023年 | 2023年 | 2023年 | 2023年 |
最大期 | 2021年 | 2021年 | 1972年 | 1989年 | 2023年 | 2018年 | 2019年 | 2012年 |
最新値[Mt] | 1.61 | 0.4498 | 0.3697 | 0.1826 | 0.1399 | 0.1362 | 0.08236 | 0.04665 |
最大値[Mt] | 1.662 | 0.5022 | 0.7512 | 0.4781 | 0.1399 | 0.1546 | 0.08336 | 0.06389 |
前年比[%] | 1.084 | -3.389 | -2.219 | -8.742 | 12.51 | 39.61 | -0.3017 | 13.71 |
全体比[%] | 100 | 27.94 | 22.96 | 11.34 | 8.691 | 8.462 | 5.116 | 2.898 |
これまでの推移


詳細なデータとグラフ
アーティチョーク生産量についての推移と展望
アーティチョーク(チョウセンアザミ)は地中海沿岸原産の多年生植物で、食用部分は蕾(つぼみ)の部分です。古代ギリシャやローマ時代から食用として親しまれ、特にヨーロッパの中でもイタリア、スペイン、フランスなどで伝統的に消費されてきました。食文化としての根付きと共に、世界の多様な地域でも栽培されるようになり、現代では南北アメリカ、アフリカ、アジアにまで生産が広がっています。
世界のアーティチョーク生産量の推移(1961〜2023年)
FAO統計によれば、2023年の世界総生産量は約1.61Mt(メガトン)で、前年比+1.084%と微増傾向です。アーティチョークの世界的需要は、健康志向や料理の多様化により徐々に拡大しており、全体としてはゆるやかな上昇基調にあります。一方で、気候変動や作物転換による栽培面積の減少も見られるため、地域ごとに増減の差が大きい点が特徴です。
エジプトの台頭とアフリカの新興生産地
2023年時点でエジプトは世界最大のアーティチョーク生産国であり、0.4498Mt(世界の27.94%)を生産しています。地中海性気候を活かした露地栽培が主流で、近年の農業近代化により急激に生産量を伸ばしました。ただし前年比は-3.389%とやや減少しており、これは栽培コストや水資源の制約による一時的な調整の可能性があります。
アルジェリア(8.691%)やモロッコ(2.898%)も増産傾向にあり、前年比ではそれぞれ+12.51%、+13.71%と大幅な伸びを示しています。これは地元需要の増加と輸出志向の農業政策が背景にあります。
イタリア・スペインなど伝統的生産国の現状
イタリア(0.3697Mt)は世界第2位の生産国で、アーティチョークが食文化の中核を占める国でもあります。しかし前年比は-2.219%と減少しており、高齢化、農業従事者の減少、気候変動などの影響が指摘されています。
スペイン(0.1826Mt)も同様に伝統的な栽培国でありながら、前年比で-8.742%と大きな減少を記録しました。近年の干ばつや高温化、作物転換の動きがこの背景にあります。両国とも地域ブランドを活かした高付加価値化が今後のカギとなります。
南米・アジアの伸長 ー ペルーと中国
ペルーは2023年、前年比で+39.61%という驚異的な増加率を示しました。生産量も0.1362Mtと世界全体の8.462%を占め、輸出志向型の産地として台頭しています。特にアメリカ市場や欧州市場への冷凍品・缶詰供給で高い競争力を持ちます。
中国も0.08236Mt(5.116%)を生産し、一定の存在感を示していますが、前年比は-0.3017%と微減。中国では伝統的な食材ではないため、国内需要の伸びは限定的ですが、輸出型生産を強化する動きが見られます。
今後の課題と展望
アーティチョークの今後の生産動向は以下の要素に左右されると考えられます:
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気候変動:特に地中海地域での干ばつ・高温化への対応
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労働力不足:手作業収穫が多いため、機械化の遅れがボトルネック
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市場多様化:缶詰・冷凍食品などの加工用途拡大が需要を支える
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新興市場の開拓:アジアなど新たな消費圏への進出
今後はアフリカ・南米・アジアの3極構造のなかで、輸出競争が激化する一方、地中海諸国はブランド志向の差別化戦略が求められる時代に入ると見られます。
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