世界の根茎・塊茎類(例:タロイモ、キャッサバ、ヤムイモなど)の生産量は2023年に927.7Mtに達し、前年比2.14%の増加を記録。中国やナイジェリア、インドが主な生産国で、食料安定や農業経済に貢献している。アフリカ諸国の生産拡大が目立つ一方、タイでは減少傾向。今後は気候変動や技術導入、地域間格差への対応が課題。持続可能な農業支援とインフラ整備が将来の鍵となる。
生産量のデータとグラフ
根茎と塊茎生産量の最大と最新
世界 | 中国 | ナイジェリア | インド | コンゴ民主共和国 | ガーナ | タイ | ブラジル | |
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最新 | 2023年 | 2023年 | 2023年 | 2023年 | 2023年 | 2023年 | 2023年 | 2023年 |
最大期 | 2023年 | 2000年 | 2023年 | 2023年 | 2023年 | 2023年 | 2021年 | 1971年 |
最新値[Mt] | 927.7 | 152.3 | 138.2 | 67.37 | 47 | 38.89 | 31.12 | 23.88 |
最大値[Mt] | 927.7 | 189.9 | 138.2 | 67.37 | 47 | 38.89 | 35.59 | 34.09 |
前年比[%] | 2.14 | 0.9322 | 1.719 | 5.971 | 2.995 | 1.795 | -9.959 | 4.501 |
全体比[%] | 100 | 16.41 | 14.9 | 7.262 | 5.066 | 4.192 | 3.354 | 2.574 |
これまでの推移


詳細なデータとグラフ
根茎と塊茎生産量についての推移と展望
根茎・塊茎類とは、地下に栄養を蓄える作物で、キャッサバ、ヤムイモ、タロイモ、サツマイモ、ジャガイモなどが含まれる。これらは主に炭水化物源として世界中で重要な主食作物であり、特にアフリカ、アジア、中南米などで食料安全保障の要となっている。
世界全体の生産推移(1961〜2023年)
1960年代以降、人口増加とともに根茎・塊茎類の生産量も急速に拡大。2023年には927.7Mt(百万トン)に達し、前年比2.14%の成長を記録。これは、アフリカやアジア諸国における食料需要の増大と栽培面積の拡大、ならびに一部国の技術向上に起因している。
主要国別の生産状況と特徴
中国(152.3Mt/16.41%)
ジャガイモやサツマイモの大規模生産国。機械化・品種改良の成果により安定生産を維持している。前年比0.9322%と緩やかな増加。
ナイジェリア(138.2Mt/14.9%)
キャッサバとヤムイモの世界最大級の生産国。家族農業が中心だが、国内需要増により生産規模は年々拡大。前年比1.719%と着実に成長中。
インド(67.37Mt/7.262%)
ジャガイモの生産が中心で、北部を中心に年々増加傾向。前年比5.971%と高い伸び率を示し、灌漑施設の普及と政府支援の影響が見られる。
コンゴ民主共和国(47Mt/5.066%)
ヤムイモやキャッサバが主要作物であり、食料自給に直結する重要資源。前年比2.995%の増加は、農業安定化と地方市場の回復によるもの。
ガーナ(38.89Mt/4.192%)
キャッサバ中心の国で、気候に応じた伝統的農業が多く見られる。前年比1.795%の伸びを維持しつつも、生産効率の向上には課題がある。
タイ(31.12Mt/3.354%)
キャッサバの一大輸出国だが、前年比-9.959%と大幅減少。価格下落や農家の作付け転換、干ばつの影響が大きい。
ブラジル(23.88Mt/2.574%)
キャッサバとサツマイモの両方を栽培。前年比4.501%の増加は、加工食品需要と国内農業投資の拡大による。
地域ごとの傾向と構造的課題
アフリカ
特にナイジェリア、ガーナ、コンゴ民主共和国など西・中央アフリカで生産が活発。多くは家族経営で、手作業中心。インフラ未整備と気候変動リスクが生産の安定化を阻む一方、人口増と都市化で国内需要は伸び続けている。
アジア
中国とインドが突出。タイやインドネシアではキャッサバの商業生産も進むが、価格変動と農業従事者の高齢化が課題。中国は機械化、インドは支援策により生産強化。
南米
ブラジルが中核。農業投資とインフラ整備が進みつつあり、今後の輸出拡大の余地がある。ただし小規模農家の経済的自立にはまだ課題。
現代農業における主な問題
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気候変動:干ばつ、洪水、気温変動が収量に影響。
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流通・保存インフラの不備:特にアフリカで収穫後の損失が多く、持続的な供給に課題。
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農業資材へのアクセス格差:肥料、改良種子、機械の供給が偏在。
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政策支援の不足と分断:農民支援政策が脆弱な国では生産が不安定。
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価格の乱高下と輸出依存:特にキャッサバの国際市場価格は不安定で、農家の所得を左右。
今後の見通しと展望
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アフリカ:人口増加と都市需要に伴い、生産は今後も伸びる見込み。ただし、生産効率の向上と市場インフラ整備が急務。
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アジア:中国とインドは安定生産を維持しつつ、高付加価値化やバイオ資源利用への転換が期待される。
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南米:ブラジルは食品加工・輸出拠点としての成長が見込まれる。
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気候スマート農業(CSA):ドローンやAIを活用した精密農業が普及すれば、収量安定と環境保護の両立が可能に。
まとめと提言
根茎・塊茎類は、「地下に眠る戦略的作物」として、食料安全保障や貧困対策、農村経済活性化において極めて重要な存在である。今後の鍵は:
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インフラ整備と技術導入の加速
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国際協力による品種改良や知識移転
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市場の安定化と価格保証制度の構築
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若年層への農業魅力づけと雇用創出
これらにより、根茎・塊茎類の生産は、持続可能な形でさらに成長し、世界の飢餓解決と農村振興の原動力となりうる。
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