世界のさつまいも生産は中国が過半数を占める一方、アフリカ諸国での栄養改善や農村支援を背景に著しい成長を見せている。気候変動やインフラ課題もあるが、加工需要や持続可能性の観点から今後の成長が期待される。
生産量のデータとグラフ
さつまいも生産量の最大と最新
世界 | 中国 | マラウイ | タンザニア | ナイジェリア | アンゴラ | ウガンダ | インドネシア | |
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最新 | 2023年 | 2023年 | 2023年 | 2023年 | 2023年 | 2023年 | 2023年 | 2023年 |
最大期 | 1973年 | 1973年 | 2023年 | 2017年 | 2019年 | 2023年 | 2007年 | 1964年 |
最新値[Mt] | 93.52 | 51.63 | 8.045 | 4.515 | 4.085 | 1.998 | 1.649 | 1.559 |
最大値[Mt] | 152.9 | 134 | 8.045 | 5.441 | 4.143 | 1.998 | 2.654 | 3.958 |
前年比[%] | 1.423 | 0.6111 | 7.4 | 5.877 | -0.3579 | 6.67 | 6.849 | -22.45 |
全体比[%] | 100 | 55.21 | 8.603 | 4.828 | 4.368 | 2.136 | 1.763 | 1.667 |
これまでの推移


詳細なデータとグラフ
さつまいも生産量についての推移と展望
さつまいもは、乾燥や痩せた土壌にも強く、栄養価の高い根菜類として、特にアジア・アフリカを中心に重要な食料源となっています。イモ類の中でも成長速度が速く、穀物と比較しても気候変動に対する適応性が高いため、食料安全保障の面でも注目され続けています。2023年の世界総生産量は93.52Mtで、前年比1.423%の成長を記録しています。
1961年からの世界生産推移と変化
1960年代のさつまいもは、中国と日本を中心としたアジアでの主食・副食としての地位が高く、特に中国は飢餓対策として生産を推進しました。しかし1980年代以降、アジアにおける食生活の多様化や穀物の優先順位の上昇により、相対的な地位は低下。一方で、1990年代以降はアフリカ諸国での生産拡大が著しく、栄養改善と飢餓対策の観点から再評価されています。
主要生産国の特徴と成長要因
中国(51.63Mt、前年比+0.611%、世界シェア55.21%)
依然として世界最大の生産国で、全体の過半数以上を占めています。河南省・四川省などで広く栽培され、食用だけでなく、家畜飼料や澱粉原料としても利用されています。栽培面積は縮小傾向にあるものの、品種改良と効率的な栽培により生産量は安定しています。
マラウイ(8.045Mt、前年比+7.4%、世界シェア8.603%)
ここ10年で急成長している注目国です。農民の生活安定作物として重要視され、オレンジ色のベータカロテン豊富な品種が導入されるなど、栄養強化政策と連動しています。気候にも適応しやすく、農薬依存度も低い点が拡大要因です。
タンザニア(4.515Mt、前年比+5.877%、世界シェア4.828%)
家庭菜園から商業的な規模まで幅広く栽培されており、マラウイ同様、栄養改善の柱とされる作物です。地方農村部での需要が高く、農業支援政策が生産を後押ししています。
ナイジェリア(4.085Mt、前年比-0.3579%、世界シェア4.368%)
一時的に生産が停滞していますが、依然として重要な生産国です。都市部の需要が拡大する一方、農村部での輸送インフラの課題が生産量の伸びを制約しています。
アンゴラ(1.998Mt、前年比+6.67%、世界シェア2.136%)
過去10年で生産量を倍増させた国のひとつであり、戦後復興とともに農業が回復しつつあります。さつまいもは比較的栽培しやすく、現地の食文化にも適合しています。
ウガンダ(1.649Mt、前年比+6.849%、世界シェア1.763%)
ウガンダ政府の農業支援計画に基づいてさつまいも栽培が拡大。とくに「オレンジ・フレッシュ・スイートポテト」と呼ばれる栄養価の高い品種が推進されています。
インドネシア(1.559Mt、前年比-22.45%、世界シェア1.667%)
大幅な減少を記録しており、農業人口の都市流出や価格低下が要因とみられます。今後は輸出や加工品向けの再編が鍵になると予測されます。
直面する課題と地球規模の懸念
気候変動の影響
干ばつや豪雨などの極端気象がさつまいもの生産に深刻な影響を与えています。特にアフリカでは、雨季と乾季の不安定化が収穫量に直結しています。
栄養価の格差と品種の偏り
中国などでは主に澱粉向けの白肉品種が多く、アフリカでは栄養価の高いオレンジ品種への切り替えが進んでいますが、まだ地域差が大きく残っています。
農業インフラの未整備
アフリカ諸国では、農道、冷蔵施設、加工工場の不足が流通ロスや価格低迷の要因となっています。
将来予測と持続可能な生産への展望
アフリカのさらなる拡大
マラウイ、タンザニア、ウガンダなどでは今後もさつまいも生産の増加が見込まれます。国際NGOやFAOなどが支援する形で、農家支援と栄養改善を目的としたプログラムが継続される見込みです。
加工・輸出産業の成長
フライドスイートポテトやさつまいもチップスなどの加工品は、今後の高付加価値化の可能性を秘めています。特にアジア圏では健康志向の高まりとともに需要増が期待されます。
持続可能性へのシフト
低農薬・省資源で栽培可能なさつまいもは、脱炭素時代の主力作物としても再評価される可能性があります。今後は循環型農業や土壌改良と組み合わせた形での発展が期待されます。
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