2023年の世界パルス豆生産量は94,350ktで前年比1.765%減。インドは最大生産国だが気候の影響で減少。オーストラリアは25%超の増加で輸出競争力を拡大。全体として健康志向や植物性タンパク質需要により長期的な成長が期待される一方、気候変動や政策依存が課題。
生産量のデータとグラフ
パルス豆生産量の最大と最新
世界 | インド | オーストラリア | 中国 | カナダ | ロシア | ナイジェリア | ミャンマー | |
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最新 | 2023年 | 2023年 | 2023年 | 2023年 | 2023年 | 2023年 | 2023年 | 2023年 |
最大期 | 2022年 | 2022年 | 2023年 | 1962年 | 2016年 | 2023年 | 2012年 | 2013年 |
最新値[kt] | 94350 | 25740 | 5194 | 4849 | 4761 | 4702 | 4360 | 3545 |
最大値[kt] | 96040 | 27620 | 5194 | 11220 | 8349 | 4702 | 5206 | 5706 |
前年比[%] | -1.765 | -6.806 | 25.17 | 0.4744 | -22.77 | 2.053 | 2.095 | -1.968 |
全体比[%] | 100 | 27.28 | 5.505 | 5.14 | 5.047 | 4.984 | 4.622 | 3.758 |
これまでの推移


詳細なデータとグラフ
パルス豆生産量についての推移と展望
パルス豆(Pulses)は、乾燥して保存・輸送される食用豆類の総称で、レンズ豆、ヒヨコ豆、インゲン豆、乾燥エンドウ豆、ムング豆などが含まれます。タンパク質、鉄分、食物繊維に富み、低コストで栄養価の高い食品として、特に発展途上国で重要視されています。
また、窒素固定を行う特性から、化学肥料への依存を抑える環境調和型作物としても注目されています。
世界のパルス豆生産の長期推移(1961年~2023年)
1961年以降、パルス豆の世界生産量は着実に増加してきました。これは以下の要因によるものです:
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植物性タンパク源としての需要の増加
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肉の代替需要(ベジタリアン・ビーガン志向)
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農業政策における輪作推奨と土壌保全の重視
2023年の世界総生産量は94,350kt。前年比-1.765%とやや減少しましたが、長期的には高水準を維持しています。
主要国の生産動向と特徴
インド(25,740kt/全体の27.28%)
世界最大のパルス豆生産国。ムング豆、チャナ豆(ひよこ豆)、トゥール豆などが広く栽培され、国内消費も旺盛です。2023年は前年比-6.806%と減少。モンスーンの遅れや高温乾燥気候の影響が原因とされます。国家備蓄や輸出規制も多く、国際価格への影響も大きいです。
オーストラリア(5,194kt/5.505%)
主にレンズ豆、ヒヨコ豆、乾燥エンドウ豆を生産。輸出型農業で、主な輸出先はインド、中東、欧州。2023年は前年比+25.17%と大幅増。これは前年の干ばつからの回復と、高価格による作付け増の成果です。今後も世界市場でのシェア拡大が期待されます。
中国(4,849kt/5.14%)
インゲン豆や乾燥エンドウなどを多く生産。主に国内需要向けで、輸出は限定的です。2023年は前年比+0.4744%と堅調な推移を維持。高齢化や都市化により生産拡大は頭打ちと見られますが、国内健康志向による需要は強いままです。
カナダ(4,761kt/5.047%)
世界有数のレンズ豆とヒヨコ豆の輸出国。乾燥地での適応が進んでおり、高品質な作物で市場競争力があります。2023年は前年比-22.77%と大幅減。干ばつと高温の影響で作柄が悪化しましたが、持続可能な農業技術の導入が進められています。
ロシア(4,702kt/4.984%)
冷涼な気候を活かしたパルス豆生産が拡大中。政府支援の農業振興政策により作付けが増え、2023年は前年比+2.053%と安定成長。欧州・中東への輸出ルートの確保が課題となっています。
ナイジェリア(4,360kt/4.622%)
サブサハラアフリカ最大の生産国。カウピー(黒目豆)など在来種が多く、国内消費と地域間輸送が中心です。前年比+2.095%と穏やかに増加。生産性の低さやインフラ問題が今後の課題。
ミャンマー(3,545kt/3.758%)
パルス豆は主要な輸出作物で、特にヒヨコ豆とムング豆が多い。インドと中国への輸出が多く、国際相場に強く影響されます。前年比-1.968%とわずかに減少。政治不安定や港湾輸送の問題が影響。
世界のパルス豆を取り巻く課題
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気候変動と干ばつ耐性:生産の地域偏重が災害時に世界供給を脅かす。
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価格の不安定性:インドの輸出入政策次第で市場が乱高下。
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品種改良と生産効率の低さ:発展途上国では農業機械化が遅れている。
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貯蔵・流通インフラの不足:虫害・カビのリスクが高く、流通効率も課題。
今後の展望と推移の予測
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需要拡大:植物性タンパクへの注目や健康志向の高まりにより、世界的に需要は右肩上がり。
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アフリカ・中南米での新興生産地拡大:土地資源の豊富な地域での生産強化が進む見通し。
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環境農業政策との整合性:輪作作物として、炭素排出削減政策と連動した奨励が進む。
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スマート農業の導入:ドローン・センサーによる水管理や収穫予測技術の普及が見込まれます。
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