日本のイチゴ栽培は茨城県がトップで、都市近郊型農業やブランド化が進む一方、労働力不足や気候変動といった課題も抱えています。スマート農業や観光農園との連携、輸出強化などが今後のカギとなるでしょう。
野菜栽培のデータとグラフ
イチゴ収穫量の最大と最新
全国 | 茨城 | 埼玉 | 福岡 | 群馬 | 東京 | 神奈川 | 千葉 | |
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最新 | 2023年 | 2023年 | 2023年 | 2023年 | 2023年 | 2023年 | 2023年 | 2023年 |
最大期 | 2020年 | 2023年 | 2012年 | 2019年 | 2020年 | 2002年 | 2004年 | 2016年 |
最新値[kha] | 7.44 | 1.49 | 0.775 | 0.653 | 0.51 | 0.45 | 0.399 | 0.319 |
最大値[kha] | 7.55 | 1.49 | 0.953 | 0.703 | 0.554 | 0.577 | 0.47 | 0.347 |
前年比[%] | 0.6766 | 8.759 | -2.146 | 4.647 | -4.135 | -0.4425 | -0.25 | -1.543 |
全体比[%] | 100 | 20.03 | 10.42 | 8.777 | 6.855 | 6.048 | 5.363 | 4.288 |

これまでの推移


詳細なデータとグラフ
イチゴについての推移と展望
イチゴは、日本の農業において高収益を見込める果実的野菜の代表格であり、生食用はもちろん、スイーツや加工食品への需要も高く、周年販売が拡大している点で他の野菜と一線を画します。2023年現在、果実的野菜全体の栽培面積は7.44khaであり、その中でイチゴの比重は大きくなっています。
県別の栽培状況 ― 地域ごとの特色と動向
最新のデータに基づく主要産地の栽培面積と前年比、全国比をみると、以下のような特徴が明らかになります。
● 茨城県(1.49kha、全国比20.03%、前年比+8.759%)
全国最大の栽培面積を誇り、前年比でも大きく伸長しており、生産体制の拡大が進んでいることが分かります。首都圏への地理的な近さと物流面の優位性も強みです。
● 埼玉県(0.775kha、全国比10.42%、前年比-2.146%)
面積では全国2位ですが、前年比で微減。都市化の進行や農地の確保難が影響している可能性があります。ただし直販市場や観光農園の充実が支えとなっています。
● 福岡県(0.653kha、全国比8.777%、前年比+4.647%)
九州最大のイチゴ産地であり、「あまおう」に代表されるブランドイチゴの力が強く、需要の下支えがあります。前年比でも増加しており、安定した成長が見られます。
● 群馬県(0.51kha、全国比6.855%、前年比-4.135%)
比較的寒冷な気候を活かした冬春出荷型の生産が中心。減少傾向は後継者不足や労働力問題が影響している可能性があります。
● 東京(0.45kha、全国比6.048%、前年比-0.4425%)
都市型農業の代表であり、高密度での栽培や観光農園との連携が多いものの、農地面積の制限が成長の足かせになっています。
● 神奈川県(0.399kha、全国比5.363%、前年比-0.25%)、千葉県(0.319kha、全国比4.288%、前年比-1.543%)
両県とも都市近郊型農業を特徴とし、観光需要を狙った栽培も行われていますが、農地の減少と人手不足が影響して微減傾向にあります。
イチゴ栽培が抱える課題
● 労働力不足と高齢化
イチゴは栽培から収穫にかけて手間が多く、熟練の作業が求められる作物です。そのため、労働力不足や高齢化が直撃し、作付面積の維持・拡大が困難な状況も散見されます。
● 気候変動と病害リスク
気温上昇や極端気象の頻発により、病害のリスクや収穫時期のずれが発生しています。特にハウス栽培中心のイチゴにとって、天候の安定性は重要なファクターです。
● 市場の価格競争とブランド戦略
産地間競争の激化により価格の下落も懸念されます。その一方で、「あまおう」「とちおとめ」などブランド戦略の明暗も分かれており、ブランド化による差別化が今後の鍵となります。
今後の推移と予測
今後、日本のイチゴ栽培は以下の方向に進む可能性が高いです。
● 栽培のスマート化・省力化
ICTやAIを活用したスマート農業の導入が加速する見込みです。養液栽培、自動収穫装置、環境制御システムの導入が、少人数でも高効率な栽培を可能にするでしょう。
● 地産地消・観光農園との連携強化
都市近郊型農業においては、観光農園と直売所の連携強化により、農業の6次産業化が進展する見通しです。特に首都圏に近い県ではこの傾向が顕著になるでしょう。
● ブランド育成と輸出戦略
国内市場の競争が激しくなる中、海外市場への輸出も視野に入れたブランド戦略が必要です。品質と味の良さを武器に、アジア圏などへの展開が期待されます。
まとめ ― 多様化する生産と新たな農業モデルの可能性
イチゴ栽培は、高付加価値作物としての地位を維持しつつ、各地域での特色や課題に応じた進化が求められています。特に、都市部との連携、観光資源としての活用、そしてテクノロジーによる生産性の向上は、将来の持続的な発展に不可欠です。今後は、高齢化や気候変動といった課題を技術と政策で乗り越え、競争力ある作物としての地位を確立していくことが期待されます。
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