日本の白菜栽培の動向と課題:主要産地の特徴と今後の展望

葉茎菜類



日本の白菜栽培は1970年代から減少傾向にあり、現在の作付面積は15.6千ha。茨城県と長野県が主産地で、茨城は出荷量トップを維持。一方で気候変動や高齢化、労働力不足が課題。今後はスマート農業導入、リレー栽培の強化、ブランド化や輸出対応が求められる。

野菜栽培のデータとグラフ

白菜収穫量の最大と最新

全国 茨城 長野 北海道 埼玉 福島 群馬 兵庫
最新 2023年 2023年 2023年 2023年 2023年 2023年 2023年 2023年
最大期 1973年 1981年 1997年 1973年 1973年 1973年 1974年 1981年
最新値[kha] 15.6 3.28 2.8 0.491 0.49 0.472 0.451 0.42
最大値[kha] 45.2 5.87 3.17 2.68 1.63 2.36 2.26 1.24
前年比[%] -2.5 0.3058 -3.78 -11.05 -1.408 -4.839 -3.219 -1.176
全体比[%] 100 21.03 17.95 3.147 3.141 3.026 2.891 2.692

 

これまでの推移

白菜の収穫量
最新の割合

 

詳細なデータとグラフ

 

白菜についての推移と展望

1970年代の高度経済成長期には、漬物や鍋料理の需要増加とともに、白菜は国民的な冬野菜として栽培面積・生産量ともに拡大しました。1973年当時、白菜の作付面積は20千ha近くあったと推定されますが、2023年には15.6千haまで減少しています。これは都市化による農地の減少、高齢化、労働力不足、価格の乱高下といった複合的な要因が背景にあります。

白菜は特に冬場の消費が多く、天候に左右されやすい野菜でもあるため、年ごとの作柄の変動が大きい傾向にあります。また、作業量が多く重労働であるため、後継者問題も深刻化しています。


県別の作付面積と栽培の特徴

茨城県(3.28kha、全国比21.03%、前年比+0.31%)

白菜栽培において圧倒的な全国1位を誇る茨城県は、関東平野の広大な農地と温暖な気候、首都圏近郊という立地条件を活かし、周年出荷体制を整えています。特に漬物業者向けの需要が高く、契約栽培も多く見られます。2023年はわずかに前年比プラスとなり、安定した産地力を示しました。

長野県(2.8kha、全国比17.95%、前年比-3.78%)

冷涼な高原地帯を活かした夏~秋どりの白菜が中心で、標高差を利用して出荷時期を分散させる「リレー栽培」が特徴です。ただし2023年は前年比マイナスとなっており、気候変動の影響や生産者の高齢化が懸念されています。

北海道(0.491kha、全国比3.15%、前年比-11.05%)

短い夏を活かして栽培される北海道の白菜は、主に加工・業務用に利用されています。広大な面積を活かした機械化が進んでいますが、2023年は天候不順などにより前年比で大幅な減少となりました。

埼玉県(0.49kha、全国比3.14%、前年比-1.41%)

都市近郊型農業として流通に有利な立地を持つ埼玉県では、家庭向けの新鮮な白菜を中心に生産しています。ただし農地面積の減少や住宅開発の影響を受け、縮小傾向にあります。

福島県(0.472kha、全国比3.03%、前年比-4.84%)

福島県は中通り地方を中心に、冷涼な気候を活かした夏~秋どりの白菜が主力です。風評被害からの回復もありながら、近年は徐々に生産基盤が整いつつありますが、2023年は作付面積がやや減少しました。

群馬県(0.451kha、全国比2.89%、前年比-3.22%)

長野県と同様、高冷地での夏秋白菜栽培が中心です。東京都心部へのアクセスの良さから流通面では強みを持ちますが、労働力不足と後継者の不在が課題です。

兵庫県(0.42kha、全国比2.69%、前年比-1.18%)

関西圏の大消費地に近い兵庫県では、冬場の出荷が中心です。ブランド白菜の育成にも取り組んでいますが、全体の作付面積は減少傾向にあります。


白菜栽培の課題

高齢化と担い手不足

白菜は定植・間引き・収穫・出荷調整など、多くの人手を要する野菜です。若い農業従事者の確保が全国的な課題です。

気候変動の影響

異常気象や高温傾向が続くことで、生育障害や病害虫の被害が増加しています。適地適作の見直しや品種改良が求められています。

価格の乱高下

過剰出荷による暴落、天候不順による高騰など、価格の安定性に欠けるため、契約栽培や生産調整の強化が必要です。


今後の展望と政策的支援

スマート農業の導入

ドローンやAIによる生育診断、自動化された収穫機などが白菜生産に導入され始めており、省力化と品質安定化が期待されます。

産地間連携とリレー栽培の強化

夏どり・秋冬どりといった栽培時期を地域ごとに分け、安定的な供給体制を築くことが今後の鍵となります。

ブランド化と輸出

特定産地の白菜を「甘み」「鮮度」「栄養価」などで差別化し、ブランド価値を高める動きが出ています。また、近年は韓国や東南アジア向けの輸出にも注目が集まっています。

 

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