2008年〜2025年の家計調査によると、二人以上世帯の魚介類消費は地域差が大きく、富山市などでは支出増加が顕著な一方、那覇市など南九州地域では減少傾向が見られます。世代間では若年層の消費離れが進行し、価格高騰や食習慣の変化が背景にあります。今後は持続可能な漁業や簡便性重視の商品開発が鍵となります。
魚介類の家計調査結果
魚介類の多い都市
魚介類の少ない都市
これまでの魚介類の推移


詳細なデータとグラフ
魚介類の魚介類現状と今後
総務省統計局の家計調査は、消費者の暮らしの実態を知るうえで極めて重要な資料です。特に「魚介類」に関しては、日本の食文化や地域性、世代間の食習慣を反映する指標として注目されます。今回の調査(2008年1月~2025年3月)では、全国平均は1世帯あたり月額5,926円となっており、この数字の背後に多様な地域事情と社会背景が存在しています。
第2章 地域別の消費額の特徴:高額都市と低額都市の対比
高額都市の特徴
魚介類の支出が最も高かったのは富山市(8,949円)、以下奈良市(7,951円)、東京都区部(7,037円)と続きます。これらの都市では、以下のような要因が背景にあると考えられます。
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新鮮な魚介類へのアクセス(富山・長崎などは地場漁業の強さ)
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健康志向の高まりや和食文化の継承
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中高年層を中心とした家庭料理の継続
特に富山市と長崎市では30%以上の伸びを記録しており、地元産品への回帰や物価上昇を前向きに受け入れている可能性が考えられます。
低額都市の特徴
1方、那覇市(4,003円)、鹿児島市(4,417円)、松山市(4,570円)など南9州・沖縄地方を中心とした都市では消費額が低く、かつ前年比で大幅な減少を示しています。
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地元の魚介類よりも加工食品や肉類の比重が大きい
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若年層世帯の比率が高く、簡便志向が強い
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流通コストの高さによる価格の割高感
那覇市・鹿児島市などで10%以上の減少は、生活防衛的な消費行動の影響を強く受けた結果とも言えます。
第3章 世代間での魚介類消費の違い
消費動向を支える要素のひとつに「世代構成」があります。高齢者世帯では魚介類は依然として重要なたんぱく源であり、食生活に組み込まれ続けています。しかし、若年層では以下のような傾向が見られます。
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調理の手間を敬遠し、外食や惣菜中心に
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魚離れといわれるように、味覚の変化や知識不足
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SNSやメディアを通じた新しい食の嗜好(肉・海外料理)への傾斜
このように、魚介類の消費は世代間で明確な違いが表れており、長期的には魚介類市場の構造そのものが変化する可能性があります。
第4章 魚介類消費をめぐる課題と社会的背景
現在、魚介類消費にはいくつかの重要課題があります。
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価格の高騰:円安や輸入水産物の高騰、漁獲量減少
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流通網の疲弊:地方市場の縮小や卸売機能の低下
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漁業資源の持続性:乱獲・気候変動・高齢化した漁師人口
また、消費者側でも「安全性」や「原産地」への関心が高まりつつあり、産地表示やトレーサビリティの透明化が求められています。
第5章 今後の予測と対応の方向性
今後、魚介類の消費は以下のように推移すると見られます。
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都市部高所得層では引き続き高水準維持:健康志向や家庭料理の価値再認識による支持
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地方や若年層ではさらなる減少リスク:価格・手間・選択肢の不足による離脱
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ネットスーパーや通販での代替消費:冷凍・下処理済商品の拡大
そのため、今後は行政や企業による以下のような取り組みが重要となります。
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地産地消の推進と魚介類調理の教育支援
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若年層向けの時短・簡便な水産商品開発
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持続可能な漁業支援と価格安定政策
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